「声を上げよう。もっと大きく、もっと図太く」護られなかった者たちへ アヤックスさんの映画レビュー(感想・評価)
声を上げよう。もっと大きく、もっと図太く
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ヘヴンズストーリー以降、「罪と罰」「復讐の
応酬」をテーマとしてきた瀬々監督は、本作ではこのテーマを継続しつつも、過去作が復讐の虚しさを描いて終わっていたのに対し、少し異なる、
より建設的な結論を出して来たように思う。
この国の福祉制度に大切な人を殺されてしまったカンちゃんは、福祉事務所の職員となって少しでも福祉制度を変えようとするが、所詮は社会の歯車でしかなく、圧倒的な力の前にその目標を果たせなくなってしまうと、かつてけいさんを死に追いやった当時の福祉事務所職員を連続殺害するという最悪の復讐をすることになってしまったのだが、最後にはSNSに「声を上げよう。もっと大きく、もっと図太く」と書き込んでこの話は終わる(その後の利根の釈放シーンも、「福祉」の基本である自助共助を描いた象徴的なシーンとして同じくらい重要だが)。
多くの凶悪犯罪の被害者遺族が辿り着いたように、監督自身も加害者に極刑を望むか、この手で殺すのかどうかという話から、社会に強く発信してゆこうという方向性に転換しつつあるのだな、と思った。
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