劇場公開日 2021年10月1日

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「倍賞美津子さんの圧倒的な存在感」護られなかった者たちへ 八べえさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5倍賞美津子さんの圧倒的な存在感

2021年10月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

佐藤健の演技も良かった。素行の悪い青年、その目つき、目のやり場、頭がちょこんと出た前屈みの姿勢。泥水の中に顔を突っ込まれて叫ぶ。いやあ、いい役者さんだなあと感じた。
そして、なんといっても倍賞美津子さんの圧倒的な存在感があった。演技というより、その人から伝わってくる人間性がこの登場人物になっているようなそんな存在感があった。
佐藤くんは役者としていいなあと感じたのに対し、賠償さんはその人だったような印象があった。その存在感が圧倒的だった。
「魂が震える」と映画のキャッチコピーにあったけれど、そんなあざとい感じの迫り方ではなかったような気がした。もう少し考えさせられる。難しい映画ではないのだけれど、消化するのは簡単な映画ではなかったような気がする。
それは、震災の映画と見るべきなのか、日本の抱える貧困の問題と見るべきなのか、家族の映画なのか。
ただ、そのどれかの映画と言ってしまうとちょっと薄っぺらな感じがした。
僕は被災地に行ったことがない。その当時も今も。だから、そこは感じる、想像するしかないのだけれど、震災が人の心にやっぱり黒い影を落としている。その難しさがやっぱりあるように感じた。

八べえ