「またしても共感性はない」護られなかった者たちへ Masuzohさんの映画レビュー(感想・評価)
またしても共感性はない
生活保護
日本国憲法第25条や生活保護法の理念に基き
生活に困窮する国民に対して資力調査を行い
その困窮の程度によって要保護者に必要な扶助を行い
最低限度の生活を保障するとともに自立を促すことを目的とする
今作は東日本大震災を経験した東北の海沿いの街を背景に
生活保護のあり方を巡って起こった人々の絆と悲劇を描いた
社会派作品を発表している中村七里原作の映画化
前作「ドクター・デスの遺産」では安楽死問題を
テーマにしていました
…いやしていたんですがそのドクターデスも
ものすごくテーマを大雑把にまとめて
ものすごいエゴな結論を出そうとして出来ておらず
映画自体のお粗末な完成度も手伝って
この人の原作のは観に行くのやめようと思って
いたんですが
気が付いたのはスタッフロールで名前を見た
時でした
でどうだっかたというと
コレもまあ酷かった…
東日本大震災の避難所で知り合った
老婆の「けい」と家族を亡くした少女の幹子「かんちゃん」
そして水産加工場で働いていた元々孤独な「利根泰久」
3人は惹かれ合うように暮らしていましたが
互いに養子に行ったり出稼ぎし始めた5年後
一番励ましてくれたけいが蓄えが尽きて
セルフネグレクト状態になっていたところで
かんちゃんと泰久は生活保護の申請を薦めます
けいは誰の世話にもなりたくないと最初は拒否します
が二人に言われて申請をしますが
生活保護には扶養照会というものがあり血縁者を
探られるのを嫌がって申請を取り下げたけいは
結局孤独死状態で見つかり泰久は激高して
役所に詰め寄ると原理原則や死ぬときは最後は
独りだとかとんでもない事を返してきます
泰久は怒りで役所に火炎瓶を投げつけ逮捕されて
しまい数年服役する事になります
そんな震災から9年後(けいの死からは5年後くらい?
このへんがこの映画ヘタクソすぎてわからない)
東日本大震災で妻子を亡くした宮城県警の刑事
笘篠誠一郎はほぼ無人のアパートの2階で
生活支援課の公務員・三雲が拘束されたまま
餓死した事件を蓮田と追うことになり
「恨まれるようなことはなかった」と妻が言う
三雲の職場から可能性を探ると生保の申請に来る
市民と相対する立場を知るために生活保護の調査員
円山「幹子」の仕事に同行することにします
モブのように登場してきますがかんちゃんです
幹子は生活保護が本当に困っている人に支給
されるべきであることを強く訴えます
「声を上げないと伝わらない」とも言います
調べるうちに三雲は生保支給の是非をめぐって
断られた人からはそれなりに恨まれている事が
わかりましたがそんな中今度は同じような職員
城之内が同じように監禁死されているのが見つかり
三雲も城之内も前述のけいの生保申請に関わった
役所の人間であることを突き止めそこで放火事件を行った
利根泰久にも突き当り容疑者に特定します
その生保申請に関わった職員はもう一人
上崎と言う今は国会議員の男が狙われると思い
警備を強化すると案の定利根が現れそこで拘束
利根は犯行を自供しこれで解決かと思いきや
その後上崎が行方不明になり利根を同行し
けいの家まで行くとそこで上崎を拘束して
殺そうとしていたのは幹子でした
泰久は事件を知ってからやめるように
説得しようとしたり
罪を自分がかぶろうとしていたのでした
屋外ステージで会うシーンで突然
ダンスする人が出てくるとこは
屈指の謎シーンです
どうも原作ではかんちゃんは男だったそうで
アミューズのごり押しで清原果耶になった
関係で女性になってしまったようですが
女手で気絶した成人男性をアパートの2階に運んで
グルグル拘束するとかムチャクチャな話に
なっております
生活保護で全員は救えないのは自分も
仕事してるからわかっているが
けいを殺したこいつらは許せないという
動機だったようです
…ならなんでこんな数年後経ってから急に
やり始めたのでしょう?
ぶっちゃけ復讐を成し遂げるのに
公務員になる必要もあったでしょうか?
また幹子は逮捕前にSNSに辞職の意と
生活保護の需給に声を上げろみたいな事を
書き残します
これだと生活保護を断ってくる公務員は
殺せみたいなメッセージになってしまいます
健康のためなら死んでもいいみたいな
この映画は結局
震災のどうしようもなさと貧困のどうしようもなさ
を何故かくっつけてミステリーをさせたいのか
社会問題をやりたいのか中途半端でそれぞれ
別でやった方がいいようなものにしかなっていません
ドクター・デスと同じです
そしてそのどうしようもなさを役所の人にぶつけて
殺してしまうという逆恨みを救われない
人々が声を上げるよう訴えるという
とんでもなく共感性の低い代物になっています
そもそも幹子は震災時に11歳でその9年後に
生活保護課の職員になってますが一体いくつで
公務員試験受かったのかは知りませんが
この子の産まれる前は生活保護受給なんて
恥だという通念が強く高齢者はとりわけそういう
先入観から敬遠しがちになっています
現状は認知症やの要介護認定も重なって
生活支援は多様化せざるを得ずより合議的に
色々な人が関わって困難事例は対応するように
変わってきていると聞きます
扶養照会もそもそもそこで支援できるなら
別居したりしてないわけで法改正で
拒否できるようになっています
制度は報告と実績によって見直しを受け
年次変わっていっています
それをこうした映画の極端な表現で
特定の公務員のイメージを悪くする映画の
存在意義については非常に疑問です
あと本当の不正受給は同一地区の同一世帯が
全員受給とか外国人永住者とかぶ…
いやなんでもないもっと闇が深いものです
社会派言うならそこ切り込んでみろよって思います
回想録の順番やエピソードの重ね合わせも
大してうまくなく突然説明セリフが入ったり
役者は豪華なのに残念な完成度でした
ポスターに社会派って書いちゃう映画は地雷だね