「倍賞美津子の女優魂に引き込まれた」護られなかった者たちへ bionさんの映画レビュー(感想・評価)
倍賞美津子の女優魂に引き込まれた
震災パートは、何度も何度も涙をぬぐった。遺体安置所で妻を確認する笘篠の表情を見ていられなかった。もし自分がその立場だったらと想像するだけで嗚咽しそうになる。
避難所でけいさんが、身寄りのないカンちゃんと利根を気遣い、いつしか3人は家族のような絆で結ばれていく。倍賞美津子の円熟なんて言葉では足りないくらいの女優魂で遠島けいを演じている。
そのけいと身を寄せ合うカンちゃんを演じる石井心咲がこれまたすごい。わざとらしい子供っぽさもなく、無口で無愛想な利根に泊まって行くことをおねだりするときの自然な演技にはびっくりする。この3人の物語をずっと見ていたかった。
生活保護制度の問題点を浮き彫りにすることがテーマであることはわかるが、福祉事務所の職員が利根に対して言い放ったセリフに違和感を感じた。役人の性として、後で不利になるような挑発的な言葉を吐くということは考えづらいし、セリフで過剰に説明しなくても分かりますよ観客は。
殺人にまで駆り立てる動機に釈然としないこともあって、後半は少し興醒めして鑑賞していたが、「死んでいい人なんかいないんだ」という利根の言葉は、深く心に刻まれた。この言葉を理念として制度を見直す必要があると思う。
コメントありがとうございます。
子役の子は上手でしたね。自分のことを「私」と呼ぶ場面までは男の子かと思ってました。
原作者の中山七里氏は執筆にあたり取材をしないことで有名だそうです。職員のステレオタイプな描写はそのせいかも知れません。
瀬々監督の再構築が素晴らしかったと思います。
bionさん
コメントへの返信有難うございます。
倍賞美津子さん、人の優しさ、温もりを、眼差しで、表情で、背中で、全身で、表現されていましたね。慎ましい生活でしたが、慈愛に満ちた彼女の顔は、泣きそうな程に美しいと感じました。
”この3人の物語をずっと見ていたかった。“に共感しました。(私のレビューに引用させてもらいました)。 映画を見ているときに、主人公や映画本来のストーリーとは違ってしまうけど、このままこの物語を見させてほしいと思うことがあります。もちろん本来のストーリーになってしまいますが。(^o^)
別作品ですがいいねありがとうございます。
福祉事務所職員の描写は、殺人の動機になる部分だからという意図があるにしてもちょっと過剰ですよね。
原作では三雲がけいさんの申請書を目の前で破って門前払いしたりしててもっとひどいんですが、おっしゃる通り役人の性を踏まえてないからちょっとリアリティが損なわれる部分だなと思いました。
イイね!ありがとうございます。😊😊そうですね、役人は不親切な代わりに、余計な挑発、必要以上のくどい説明はしないと思いますし、殺人への道筋が短絡的すぎますね。役人で内部事情わかっている設定だけに。まったく同感です。