「東京のがいいんだよ。」中村屋酒店の兄弟 はるたろうさんの映画レビュー(感想・評価)
東京のがいいんだよ。
挑戦的なショートムービーです。たった45分なのに開始数分間は音声のみのラジオドラマ形式になっていて、暗いスクリーンに向かって想像を膨らませながらめちゃめちゃ集中しました。ここはスピンオフとなってますが、どちらかと言うとプロローグの方がしっくりくるかなと思います。
田舎の酒屋を継いだ兄の弘文と東京から突然帰省した弟の和馬。大切な人から忘れ去られた優しすぎる弘文。一方で要領がよく好きに生きる和馬。弘文の内に秘めた憎しみにも似た嫉妬心を和馬の無神経さが静かに逆撫でしてゆく。ものすごくリアルな兄弟の描写だと思った。
どちらの気持ちも理解できるし、どちらの気持ちも理解できない。そしてどこか不自然な和馬の違和感の正体が明かされた時。最後まで弘文は「お兄ちゃん」でした。表情1つ1つ。言葉1つ1つ。丁寧に演じた長尾琢磨と藤原季節が素晴らしかった。
45分とは到底思えないほど重厚で、深くて、何気なくて、温かくて、無情な物語でした。白磯大知監督が96年生まれと知って驚いています。天才ですか。今後も期待しています。
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