「王道直球の人生応援歌」レディ・トゥ・レディ しずるさんの映画レビュー(感想・評価)
王道直球の人生応援歌
『女性同士のダンスカップル』のお話と聞くと、昨今注目のLGBTテーマかと思いがちだが、一味違った。
ジェンダーレス的表現もあるけれど、要は、同性、異性、恋人、友人、家族、職場…。関係性はどうあれ、お互い理解し、尊重し、支え合えない相手と、理想的なパートナーシップは築けないという事。
そして、常識、規則、当たり前、と、外部から課される評価基準とは別の所に、自分らしく生きる手がかりがあるという事。
王道のストーリー、ステレオタイプな人物設定、ベタベタのギャグ、説明的な脚本。ソフティケートできそうな余地は多くありそうに思えど、逆にそこが、小賢しさを感じさせずに心地いい気も。
ともかく、伝えたい事はドスンと直球で伝わってくるし、何より、観客を楽しませたい、元気出して欲しい、という気概に満ちている。
ツンデレのライバルなんて、ありがち…と思いつつ、でも好き!とほくそ笑み、『ダンスの細道』に爆笑させられ。
頑張れ、上手くいけ、と拳を握って二人を応援しながら、いつの間にか自分が応援されている。
「自分達の為に踊っている」「楽しいから踊ってるだけ」「黙ってるのは止めたの」「空気は読むものじゃない、吸うもの」など名言も多く、スクリーンに向かって、「ホンマ、それな!」とウンウン頷いてしまった。
小煩い世間の権化たるプロデューサーを、コテンパンにやっつけるでも、排除するでもなく、「踊ってみればいいのにぃ」と、やんわり巻き込んで翻弄するような決着の仕方も良い。
娘との和解を初め、エピソードの幾つかは、映画の尺では致し方ない面もあるが、例えば連続ドラマであれば、もう少し丁寧に見せて欲しい所。
と、散々あれこれ言っておいて何だが、こういうド直球な作品は、四の五の言わず、真っ正面から素直に受け止めて、有り難く、息苦しい現実のガス抜きにさせて頂きたい。
元気出たよ!