滑走路のレビュー・感想・評価
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2020年の社会を捉えた素晴らしい作品
コロナウイルス感染拡大による経済不安の中、自殺者が急増したというニュースが報じられている。社会の貧しさは弱い人の生活を蝕み、そうした人々は声を上げることもないままにいなくなってしまう。萩原慎一郎の残した歌は、そんな声を届けられなかった人たちの声を代弁していた。
非正規雇用者の自殺、無茶な要求につぶされそうになる若手官僚、中学生のいじめ、夫との関係と将来のキャリアに不安を抱える女性。どの物語も現代社会にはあふれている。それらが別々に紡がれ、最終的には一つの物語として集約されていく。現代社会の抱える諸問題は、根っこの部分で深くつながっているのだということを説得力ある構成で描き出している。ひとつの事象の善と悪を見つめるのではなく、背後にある構造的な問題に触れようとしているのが本作の素晴らしさ。2020年に本作が公開されたのは、偶然とは思えないほどに今を捉えている作品だ。
厚労省の若手官僚を演じる浅香航大が素晴らしい。状況と感情に引き裂かれた苦悩を見事に体現していた。
歌詠みに死を選ばせた理不尽を赦しの映画に仕立てた功罪
いじめ被害、非正規雇用といった体験を短歌に詠み、初の歌集の出版を前に世を去った萩原慎一郎。その歌集を映画化する企画のコンペで、大庭功睦監督の案が採用され、桑村さや香の脚本でドラマタイズしたのが本作だ。
上司からのパワハラに苦しみながらも、資料で目にした自殺者を調べ始める厚労省の若手官僚。優柔不断な夫に違和感を募らせる切り絵作家。幼馴染を助けたためいじめの標的になった中学生男子。映画は三者のパートを並行して描き、一見群像劇のように進行するが、後半で関係性を明かす構成が鮮やか(ミステリの謎解きのよう)。逆境に苦しみつつ生きる望みを短歌に託した萩原の遺志を継ぐように、希望を伝えるヒューマンドラマに昇華させた。
赦しと癒し、ミステリ味まで添えた娯楽作に仕立てたのは、商業映画として間口を広げる良策ではある。だがいじめ、格差など世の理不尽に真正面から向き合うのを避けるようで、やるせなさも残る。
☆☆☆★★ 歌集「滑走路」は読了済み。 僅か30分あれば読めてしま...
☆☆☆★★
歌集「滑走路」は読了済み。
僅か30分あれば読めてしまいます。
ほんの少しだけの感想で。
エンディングにて画面に出る一句をきっかけに、映画オリジナルのストーリーを作り上げた様だ。
歌集自体は凡そ3っに分かれていただろうか。
・孤独な青年の叫び
・好きな異性の存在
・少しずつ前を向いて生きる
それだけに、歌集そのものを知っていたので。映画自体のそのストーリー展開の違いには、大いに戸惑ってしまったのが本音。
それでも、中学生の淡い恋愛模様には胸がキュンとしてしまいましたが💦
エンディングは、今年の実写日本映画の中で1番のベストエンディングと言えるかも知れない。
2020年11月21日 MOV IX三郷/スクリーン3
社会問題の一つ イジメ 人生が狂う
感想が浮かばない。
3人のストーリーが絡むかと思いきや、そこまで描かれない。
中学時代
25歳、官僚となった主人公
その主人公を助けた友人の彼女の12年後
友人をイジメから助けた。
毅然とした態度から何故彼がイジメられる側になるのか。
あれだけガンを飛ばし相手の3人が退散するならイジメ返される事はないだろうと思ってしまった。
翠。
イジメ対象の彼に近づくだろうか。
火の粉がかかってもいけないと思うのが普通じゃないのかと思ってしまった。
テーマがテーマだけに終始重苦しく覚悟して鑑賞すべし。
時間軸の使い方が絶妙
心に染みるストーリーだった。
3人の一見、別々の登場人物の日常を丁寧に描き、悩みは今の時代に多くの人が抱えていると思われる事。苦しみながら前に進んでいく。
それぞれのストーリーは時間軸を入れ替えて描かれていく中で徐々に重なりあって、見ている側があーそうなんだなぁと知る頃にはなんとも切ない気持ちになっていた。
最後は前を向いて歩き始めるところも救われた。
少ししか出ないが、坂井真紀の演技がこの映画に深みを添えたと思った。
普通、分析の寝椅子は背後に医者がくるものだし、あんなふうに手を合...
普通、分析の寝椅子は背後に医者がくるものだし、あんなふうに手を合わせたりしない。泣いてもいいんですよとか言わない。監督の決定的無知。
カップルの青春と恋は本当に美しくて爽やかで、俳優もいい。特に男の子。
なんで死んだのか結局わからない。お母さんも良かったのに。
浅香はうまかった。難しい役だった。
勇斗とか、夫とか、屈折しすぎてて、あまり興味なかった。あの二人と比べて。
切り絵の意味は当然、あの事件にあるだろう。
ちょい役の染谷くんはさすが。
水川もなかなか良かった。
厚労省は最低でリアリティあり。
こんなにつまらない邦画を観たのは初めてだ
原作未読
萩原朔太郎は知っているが萩原慎一郎は全く知らない
『マチネの終わりに』『ヒキタさん、ご懐妊ですよ』で助監督だった大庭功睦がこの作品の監督を務めた
2作品はそこそこ良かったのだが
桑村さや香脚本作品を観るのはこれが初めて
自殺を自死に言い換えようという言葉狩りのような流れは大嫌いだ
配慮しすぎて人間全体が弱くなる
どうしても配慮するなら俺にも少しは配慮しろ
いかにもミニシアター系
夫婦関係に悩む切り絵画家翠役に水川あさみ
虐められっ子を助けたために虐められる男子中学生役に寄川歌太
非正規雇用の自殺について取り組む厚生労働省の若手官僚役に浅香航大
群像劇は基本的に嫌いだ
時系列が行ったり来たりする作品は苦手だ
ただただ暗い3種類の話が交代交代で淡々と流れていく
笑える要素は微塵もない
それでいてとても不親切だ
お約束として完全にバラバラな話ではなく繋がりが出てくるのだが
自分が好きな映画に求めるものとは全く違う最悪の代物
どのサイトのレビューも全体的に評価は高いが残念ながらそれらのほとんどは共感できない
ドMなのかサヨクなのか僕にはよくわかない
だからこそ自分は自分のために映画comにレビューを書くのだろう
好きな役者たちの芝居ではとてもカバーできないほど退屈な作品だった
人間ならそうあるべきなはずだがどういうわけか涙は出ないし感動すらしなかった
仙台でも上映していたので映画館で観ようと思ったがあっという間に公開時期が終わってしまった
いま思うと1400円も払って観なくて良かった
『滑走路』のレンタルDVDは少なくとも地元のTSUTAYAではおすすめの作品だった
苦痛に耐えつつラストのクライマックスやオチに期待したのだが最後の最後まで自分の好みからかけ離れていた
ストレスを抱えてさらにストレスを抱え込む意味はあるのだろうか
撮影中の地震はたまたまかな
このままいっちゃえいっちゃえって
まさかね
せめて劇中でトランスアジア航空235便みたいに飛行機が墜落すれば良いのになどと不謹慎な思いまで込み上げてきた
くだらないコメディーより何度も欠伸が出る「社会派」が高く評価される世の中は病的で息苦しく甚だ悲しい
中学2年から現在まで
中学2年、友人がいじめにあい、助けるが今度は自分がターゲットに。
厚生官僚が非正規雇用者の自殺を調べる。
切り絵作家として注目され始めた主婦は、美術教師の夫に違和感を覚える。
ラストは賛否両論かな。
群像劇の見事な重なり合い。生きる苦悩と、一縷の希望。
【賛否両論チェック】
賛:群像劇の見事なリンクを通して、生きていく大変さや、その中で垣間見えるわずかな希望を感じさせてくれるよう。
否:過激なラブシーンや、暴力によるいじめのシーンがあるので、苦手な人には向かない。
本作で圧巻なのは、群像劇同士の見事な重なり合いです。あまり言うとネタバレになってしまうので、詳しくは是非実際にご覧になっていただきたいのですが、生きていくことの大変さは勿論、それでも生きていかなければならないことの大変さと、その中で見える一縷の光を感じさせるような、そんな展開になっています。
そして人間はみんな、人それぞれ決して小さくない傷を抱えながら、それでもその傷と向き合って生きているんだということも、改めて教えられるような気がします。
ラブシーンや、目を背けたくなるようないじめのシーンがあるので、軽い気持ちでは観られないような内容ではありますが、世知辛い今の世の中を必死で生きる全ての人に、ご覧になっていただきたい作品です。
鑑賞する前に萩原さんの歌集を是非一読してみてください
読んでなくてならないというわけではないですが、物語の殆どに歌集滑走路の歌を元にした風景や場面が出てきます、恐らく全く一緒というわけではないでしょうが萩原さんがどのような風景や場面を思い起こし歌よんだのか
そう考えながら映画を観るとより一層物語に入り込めます
いじめられた方は一生覚えてる、ってさっき般若さん言ってたよ
本日選んだ2作品、どちらもイジメが題材になってて
偶然でしたが、なんとも両極端な!!
こちらはそのトラウマが原因で悲しい結末を選んでしまう。
そのイジメがまた複雑に人の心が絡み合っていて、友達だった彼らの壊れてしまった心は·····
そして彼の拠り所になっていた彼女の話も。
優しい旦那さんに見えるけど、中身が無い。
才能溢れる彼女をそれも込みで愛せない旦那さん。
尊敬はしてるけど、愛ではない。のが分かったんだね。
子供に罪はない。
子供が出来たら、彼がより辛くなるから
あんな嘘付いたのかな?
あんなに心が弱い状態で父親にはなって欲しくない。
親になるにはお金より強い心が必要。
彼のお母さんの言葉が沁みてきます。
「あなたは生きて結婚して生まれてきた自分の子供を命懸けで守りなさい」
「忘れていいのよ」なんて言われるより素晴らしい叱咤。
生きる希望、目標が出来てホント救われた。
やはり母は強し!
体力では男性に勝てないけど
心の強さだけは男性に勝ちたいと思ってます。
滑走路を上滑り
現代軸と過去軸、複数の人物の視点で描かれる。ただそれぞれの話が若干ねじれの位置ぽく分かりずらいし、視聴側の共感所が散漫に。結局何を見せたいのかわからない。
良い点
・作品を作ろうとする努力
悪い点
・壊れたまま放置されていた
・謎をいくつか残したまま終了
・あまり滑走路と関係ない
萩原慎一郎 歌集 滑走路
13歳、25歳、37歳を繋ぐ3つのストーリー。
素晴らしい脚本。
中学二年役の役者さんたち、皆良かったな。ドアを挟んでのやりとり、橋の上での別れ。
ミッドナイトスワンでも良かった水川あさみさん、今回も。
坂井真紀さんだったんだ、お母さん。
50歳も信じられないけど、良い女優さんですね。
彼の自死は辛いですが残った二人それぞれが希望が見えて良かった。
全力で生きた歌人が映画を生んだ
数年前に健也さんのお兄様が書いた歌集ということで買って読んだ。それはもう心に突き刺さる言葉が並んでいて本当に名著と言えるものであった。裕福なエリートの恵まれた環境であったはずが、いじめによって追い込まれ、非正規となり短歌に全てを掛けた。
そして彼が完成させたものが今映画ともなった。
映画館で観るのは、こんなご時世で気が引けるし、そもそもネットで観ることが多く、久し振りでもあったが、出向くかいはある作品だった。
水川あさみの話は作品としては良いのだろうが、歌集読者としては少し癪にさわった。全ての人に優しい眼差しを向け短歌で表現した慎一郎さん本人が作ったとしたら、露悪的な性行為のシーンを出さないだろうし、失業した旦那を否定するように仕上げなかった気がする。
ただそれを差し引いて、官僚が苦悩する話や青年の慎一郎さんを感じさせるような真っ直ぐに生きる感じ、最後のタイトルが出るまでの流れが秀逸だ。日本映画でここまで完成されたものを初めてみた。
あと俳優の寄川歌太と浅香航大が、外見的にも慎一郎さんと健也さんのそれぞれの要素を持っていて似ているのが面白い。演出でも健也かと思わされるような機械を弄ってるシーンがあったりなど。健也さんの超絶技巧なギターもどこかで映画内で聴けるのではと少し期待していたがそれは特になかった。
主題歌は新人らしいのだが、歌詞が歌集へのリスペクトがかなりあって良かった。
天才歌人萩原慎一郎さんの短歌が散りばめられた映画
良い映画です。そのまま観ても楽しめる内容ですが、萩原慎一郎さんの歌集滑走路のメタや短歌が散りばめられていて、まず歌集を先に読んでからの方が楽しめます。萩原慎一郎さんが空を自由に飛んでいる気がしました。
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