「ずるいのはどっちだ」青くて痛くて脆い まるさんの映画レビュー(感想・評価)
ずるいのはどっちだ
人によるとは思うが自分の内容理解はざっくりこんな感じだった。
秋好は懐に入りやすそうな楓を利用した。
楓は風変わりな秋好に関わりたくないと思いながらもどこか拒否しきれない隙があり秋好につけ込まれた。楓にはない恥ずかしがらない積極性が秋好にはあり、そこに楓は憧れも感じてしまったのだろう。
ともにモアイを立ち上げた当初の秋好は理想だけを掲げていたのにリアルに恋人ができるとともに考え方も活動も現実的な方向にシフトしていく。
たしかに秋好は楓にそれでいいのか何度も確認していたが、素直に意見を言えば秋好の恋人に嫉妬しているようになってしまう。それを恐れてなにも言えない楓。そしてモアイはどんどん楓なしでも動いていけるように。
原因を自分の外側に求める秋好には楓を利用している自覚は全くないが、常に内省しひとり悶々と思い悩むタイプの楓は秋好に2番手扱いされることに苛立ち、秋好にそれをうまく伝えることもできない。楓は変わってしまった秋好に対して、またそれを憎む自分にも嫌悪感を抱くようになり秋好から離れる。
数年後友人をきっかけに秋好に復讐するため変わり果てたモアイを潰す計画をたて実行。
匿名でモアイの不祥事を拡散し、解散まで追い込んだものの秋好にはバレていて、気持ち悪いと罵られる。
秋好から強い言葉で拒絶された楓はショックで自分の復讐行為を恥じ、強烈に後悔する。
そして初めて、本当はどんな自分でいたかったのか、と秋好との出会いから全部を理想の自分で置き換えて想像し直してみると、別の景色が見えてきて・・・秋好との関係の修復から一歩歩みはじめようとするのだった。
吉沢亮の解釈では、楓は勝手に拒絶し勝手に恨んだ最低男らしいが、私は秋好みたいに人の心を振り回す自覚のない人間こそ罪深いように思えた。
ぼーっと観ていると大きなことは特に何もない映画だが、人物たちの心の揺れを考えながら観るとなかなか歯ごたえのある作品である。
私は青春時代をえぐられる思いになった。
視聴に少し疲れる作品。
