「青春とは、タイトルのようだ」青くて痛くて脆い R41さんの映画レビュー(感想・評価)
青春とは、タイトルのようだ
君膵が好きで、TV録画を何度も見た。本も読んだ。
ただ、構成は映画の方が圧倒的によかった。
だからこの作品の本も読んだ。
しかし小説は全く頭に入ってこなかった。
読み終えられないのだ。
半分でストップして、また初めから読み直すことを3回繰り返した。
どうしても主人公の心情と行動や、他の登場人物のイメージがうまくつかめなかった。
そしてとうとう映画を見た。
確かに内容は濃いものだった。
誰にでもある若気の至りというのか、どうしても自己中心的に物事を考えてしまうこと。
自分でしておいて、それでもまだ根に持っていて、どうしても許せない思いを、ついに行動にしてしまう。
楓が自分の頭の中で考えていることはすべて、彼の世界であり、彼の世界に侵入してくる矛盾は、彼の考えとは違ったもので、彼はそれを拒否したい。
しかしながら彼の生きる信条は、人を傷つけたくないから、自分も傷つきたくないから、だから人に不用意に近づかないこと。
最初楓は、心の中では寿乃の言動を「痛い」と否定しながらも、勝手に彼の居場所に入ってきた彼女を押しやることができないまま、いつしか彼女のペースに乗せられていた。
おそらくそれは楓が変わるきっかけとなり、実際に試行錯誤しながらの活動は面白いものだった。
ただ、
楓はいつも背中にナイフを隠している。
言い訳や自己正当性となる考えを絶えず作り出そうとしている。
物語が楓の思考によって進むことで、読み進めるための原動力である「もう寿乃はこのせかいにはいない」という言葉の秘密を追いかけ始める。
さて、
寿乃が死んだのは、最初は脇坂が関わっているものだと思っていた。
しかしそれは、楓の心の中の寿乃を、楓自身が抹殺したことだった。
寿乃に対する全否定の気持ち
これの事実がその後を読み進めるための原動力となる。
秘密結社モアイ
遊ぶための口実
背中にナイフを隠し持ったまましていた遊び
小説を半分読み進めてもまだ現在の寿乃が登場しないことで、私は読むのを断念していたことに気づいた。
映画を見れば楓の心情はわかりやすいが、小説の半分までではよくわからなかった。
この物語は、
確かに楓の成長を描いているが、彼がどれだけダメなのかはなかなかわからないのだ。
寿乃の考え
戦争をなくしたい 暴力では何も解決しない 世界を今より良くしたい なりたい自分になろう
この純粋な発言は、現代では「痛い」とされる。
それは確かに正しいことのようだが、主張する場所やタイミングを推し量れないで発言してしまうことが「痛い」とされるのだろう。
一緒にいたくない。
これが楓の本心だった。
一緒にいれば僕まで「痛い」と思われていまう。
モアイのチラシ配り
それはほぼ寿乃ひとりでしていた。
結局そのチラシを受取ってしまった楓と二人で活動を始めた。
それに共感した大学院生の脇坂が、もっと大きな組織を目指す必要があると言ったことで、モアイは大きくなった。
その過程で付き合い始めた寿乃と脇坂
これが楓の心を大きく揺り動かした。
それを知ったことで、以来一切活動に参加しなくなったのだろう。
やがて2年が過ぎ、巨大化したモアイは就活サークルと認識されるようになっていった。
それは楓が思い描いたものではなかった。
しかしそもそも、楓は何かを思い描いていたわけではなかったのだろう。
あまりにも別物になってしまったモアイを、傍から見ている学生にはとても奇妙で怪しいと思われていた。
楓は友人トウスケのモアイを否定する言葉に乗っかり、モアイを潰してしまおうと持ち掛けた。
これがこの物語の主軸となる。
映画では楓の心理が良く描かれている。
私は、楓にとっては寿乃との出会いが物語の初めだが、楓の信条なるものがナレーションされるだけなので、彼が背中に隠し持ったナイフ(比喩だが)を彼の思考として描かれていることがピンとこなかったのは、彼に共感していなかったんだと気づいた。
ここがこの作品の難しさだった。
さて、
とうとうモアイを解散まで追い込んだ楓
その説明会の場所で3年ぶりに寿乃と対面した。
寿乃が電話して話したいことがあるというのをずっと無視してきた楓
話は、一方的に楓の主張から始まる。
寿乃は、楓が彼女を好きだったことに気づく。
「気持ち悪い」
動揺する楓だったが、「お前なんか受け入れなきゃよかった お前は誰でもよかったんだ お前なんかいないほうがよかった」とぶちまける。
しかし、
寿乃が楓に話したかったこととは、いったい何だったのだろう?
彼女は隠れるようにして姿も見せなくなった楓に対し、一度は賛同してくれた寿乃の「この世界をよくしたい」という思いを作るためにもう一度参加しようと呼びかけたかったのではないだろうか?
しかし、彼女はすでに解散を決意していたはず。
そうであればそれは、「もう一度楓が参加してくれることが私の願いだった」となったのかもしれない。
同時にネットに書き込んだ張本人が楓あったこと。
そのショック
彼女言いたかったことは「なぜこんなことしたの?」に変わっていたのだ。
彼の激しい感情の吐露
完全なる決別を感じた寿乃は、説明会の会場で淡々と解散について話した。
この物語の結論は、
そんな楓が、もしあの時傷つくことを恐れなかったらということを思い描く。
傷つくことへの恐れ。
彼の背中に隠したナイフの正体
これを捨て去ること
だから、寿乃に謝罪したい。
無視されてもいい 拒絶されてもいい
その時はもう一度、端然と傷つけ
つまり、
避けても避けても、出来事は起きる。
逃げてもまた同じことが起きる。
「それ」は嫌だと思うが、「それ」が嫌である以上、また現れる。
「それ」が嫌でなくなれば、「それ」は単なるそれで終わる。
この普遍的なことをこの物語に乗せている。
少々まどろっこしかったものの、よく理解できてよかった。
作品も面白かった。
杉咲花さんがこの役に飛びついたのもよく理解できた。
コメントそして他作品に共感ありがとうございます。「つぐない」も「
「青くて痛くて脆い」面白いというか、すごい捻くれてましたね。
振られた彼女を「死んだことにして」心の中から「抹殺してしまう」
削除、ですよね。
原作はそんなに読み進まないような、作品なのですか?
考えてみれば、杉咲花のブレイク前の映画ですね。
視力が落ちたんですか?
それは、困りましたね。
私はiPadで配信は観てます。
結構、飽きて休み休み観たりしてますが、
Rさん集中力が凄いから一気見ですよね。
多分その一気見がスタイルなのだと思いますが、目薬をさして
ぼやけてきたら、休んで下さいね。
お大事に。