「想像と違った。かなりよかった」青くて痛くて脆い ワさんの映画レビュー(感想・評価)
想像と違った。かなりよかった
失礼だが観るまでは、吉沢亮さん主演ということで、勝手に「若手俳優をかき集めただけのよくある恋愛映画だろ」と思っていた。
全く違った。恋愛映画ですらなかった。しかも吉沢亮さんの演技が想像以上にうまかった。
理解できる人にとってはかなり心を掴まれる、理解できない人にとっては信じられないほどつまらない映画だと思う。
気持ち悪い、と言いたい秋好の気持ちも分かるが、気持ち悪くなってしまった楓の気持ちも痛いほど分かる。嫌味ではなく、この映画を観て「つまらない」「主人公に共感できない」と思った人は、幸せな人だと思う。私もそうなのだが、他人に妬み嫉みの感情を抱きやすい人はかなり主人公の楓に共感できると思う。
自分しか頼るものがなかったはずの秋好が、どんどん遠くへ行ってしまう。自分が居なくても、支えてくれる人間に囲まれている人になってしまう。しかしそれは、楓以外の人間が見ると、「秋好は成長している」というわけで、良いことである。その、秋好の成長に対する楓と楓以外の人間の感じ方のギャップが難しいところだ。
楓は、その「モアイをぶっ壊したい」という思いが嫉妬からくるものであることに気がつけず、よくわからない虚しさの理由を「秋好が俺を利用したから」ということにして、あくまでも自分は被害者であるフリをした。そして、何もかも壊してしまった後、自分が子供だったのだと気づく。分かる。悲しい。全部自分が招いたことなのが、また悲しい。
秋好が楓に「気持ち悪い」と言ったところは、自分も楓と同じ表情で「ガーン」となってしまった…
ラスト、目の前に楓が現れた後の秋好の反応を映さなかったのが、また想像力を掻き立ててよかった…
残念な点を挙げるとすれば、もう少し秋好と楓がキャッキャしているシーンが多くてもよかったと思う。この2人がずっと一緒にいた、2人だけでいた、という印象が、少しだけ足りない気がした。