「異常者」青くて痛くて脆い U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
異常者
内容は説教くさくて嫌いだけど、作品の作りとしては良かったので☆4内容をちゃんと受け止められるなら☆5とかだろうか。
反面教師とか警鐘とか教訓として受け止められるならこの作品の意義は大いにある。
現代っぽい話ではあり、タイムリーというか時代を反映してた。「異常者」とのタイトルにしてみたけど、彼のような人間が今後増えていくのだろうと思う。
現代病と言ってもいい。
だが、その処方箋はおそらくない。
俺も含め、この病に冒されてはいないとは断言できない。彼程症状が顕著に現われてこないだけなのかもしれない。彼自身、自分が異常者などと露程も思ってないだろう。締め括りに使われる「ちゃんと傷つけ」って言葉さえ、身勝手な思考だとも考えないだろう。
それがキッカケにはなり得るのだろうけど。
彼は常に受け身が多かったように思う。
その意見を受け入れた自分を無視するかのようだ。
他人に委ねたり依存するのは責任回避ではない。自分の意思を他人に委ねたという責任が発生する。
「自分は間違ってない」と思いたいが故の防衛本能だろうか…終盤のマウントし具合は不様だった。
その行為自体は昔からあるものではあるけれど、その内容だったり、単語が辛辣だ。
自分を優位に見せる為の選択は、理論的は会話ではなく、相手をいかに傷つけられるかに終始する。
相手の間違いを諭すでもなく、誤解を解こうとするわけでもない。直向きに刺し続ける。
…そこまでして守りたいものって何だろう?
そして、その行為を背負いきれず後悔する。
他人を否定し自分の足場が固まって、今度は許してほしいと相手に懇願する。
それがラストの台詞なのだ。
「お前いい加減にしろ」と胸糞悪くなる。
吉沢氏を観たくて行ったのだけれど、そんな胸糞悪くなる主人公に徹し、好演してた。
杉咲さんもそうだけど、なんか日本人の芝居が次世代に差し掛かってきてるのかとも思う。
なんか…形がなくなってきたかのように思う。
今の若者にこそ見てもらいたい作品にも思うので、同世代にしっかりとアピールできる人材がいた事に感謝したい。
初めは復讐劇かと思って見てたのだけど、どおにもそおではなくて…だけど彼自身は明確な敵意を剥き出しにしてる。中盤に差し掛かかり、その敵意に見合うだけの原因がないと感じてからは、一体何を見せられてるのだろうと、暫く居心地が悪い。
途中どちらかが嘘をついてはいてサスペンス風にもなるのだがあんま盛り上がらない。
物語の核はそこではなく、彼の内情だからだ。
厄介なのは、その敵意が燻って熟成し、こねくり回された挙句に発露するとこだ。そして、彼に不利な事が起こらない限り発動しないとこだ。一体、お前ら何をその身に住まわせてんだと、怒鳴りちらしたくなる。
でも、多分ならこおいう人間は増え続ける。その土壌がこの国にはあると思ってる。
個を大切にするのは結構な事だけど、優先順位と度合いは誰かが説かないとと思う。
家庭の在り方とか、教育の在り方とか…人格形成の過程における不自由さは結構大事なんではなかろうか…行き過ぎた自己肯定論の弊害にも感じる。
1番怖いのは
「彼は別に悪くないじゃん、しょうがなくない?」と言っちゃう人間が相当数いるんじゃないかと思えちゃう事だ。
サイコ野郎が主人公のホラー映画に等しいと思われる。現代が反映されてるようにも思うので尚更恐ろしい。