アイヌモシリのレビュー・感想・評価
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この映画に関わったすべての人に感謝
今のアイヌの人たちを真正面からリアルに描いた作品。ドキュメンタリーのような臨場感を持ちつつ、劇映画としてしっかりと成立している。
アイヌの人たちをテーマに作品化するには、相当難しい面もあったと思うが、アイヌの人たち自身が出演して、これだけの作品が生まれたことに素直に感動する。
イオマンテの復活について議論するシーン、主人公の父親の法要で般若心経を唱えるシーン、イオマンテの儀式での祈りの言葉がカタカナ書きされているところなど、地元のアイヌの人たちと一緒にリアルなシーンを作り上げたことがよく分かる。
とにかく主人公のカントの目力が凄い。酔っ払って「イランカラプテ」を歌うデボさんの姿も微笑ましい。「おらおらで」に続き、三浦透子もいい味。
この映画に関わったすべての人に感謝したい。多くの人に観てほしい。世界に通用する作品だと思う。
なんか不思議な作人だった。全く無名のキャストながら最後まで魅入られ...
なんか不思議な作人だった。全く無名のキャストながら最後まで魅入られたから、良く出来ているんだなと思う。
アイヌの事を少しでも知れて良かった。
観測者と被観測者
アイヌ人というアイデンティティと、そう見られることについての違和感と葛藤を感じられるような作品だった。特に、子供の目線でどのように考えがなされているかに焦点を当てたように私には思えた。子供からすればただ生まれた先の家が「アイヌ」だっただけであり、それを継承するも何も…と言った場面もちょくちょく見られた。個人的には、観光客の在り方から、自分たちの向き合い方について考えさせられた。日本はよく単一民族であると信じられており、そのために観測者と言った色が「日本人」一般に強くなると感じる。相手の文化を考えた上での非干渉というのも必要である。現代日本においてアイヌの人々がアイデンティティを完璧な形で保持することは現実的には難しいかもしれないが、残すことに拘らなくても良いのかもしれないと、子供たちを見て感じた。これも観測者の視点から語られているのかもしれないが。
予想を超えて面白かった
マイノリティと言われる文化の今までのあり方やそれを継承すること、マジョリティである本土生まれの和人と付き合うということ、見ている最中いろいろ頭を巡る。
少年初主演らしいが素晴らしい。そして若い世代は皆頭がちっちゃい。
静かだが確か だ
リリーさんが出なけりゃドキュメンタリーかと思うほどだ 物語は静かだが 心に響くものは確かだ 少し距離感が近い北海道出身と言うのもあるのかも知れない ただ 何処が舞台でも この感情の揺れはあった映画だと思う
近代化のなかで日本人が失ってしまった「神」との関わり方をみる
同化政策の過程で失われつつあるアイヌの誇りと文化のいまの姿を、ひとりの少年の視点で描くドキュメンタリーのような作品。多くの演者は本人役で出ているのでドキュメンタリーのように感じるのはとても自然かもしれない。そもそも、ドキュメンタリー映画でも人はカメラの前で立つ時点ですでに「演技」をしているのだから、その境目はあってないようなものかも。
自然や生きものに対して神的かつ霊的なものを感じることに、日本人が本来持っていたがどこかで失ってしまったもの、記憶の彼方にある何かしらの懐かしさを感じる。
古来より日本本土においても、神が鳥や動物に降臨して特殊な能力を発揮すると伝えられてきた。また、食事は生きものの命を摂取するという意味でも、犠牲になる命への感謝や神々への感謝ということを意識していたと思う。
日本人は近代工業化の過程で、西洋諸国から中身(キリスト教的精神文化)を抜け落し外身(技術や法や制度)だけを引き継いだため、私たち日本人の今の社会はすべてが平均的で空っぽで無機質なものになってしまったような気がしてならない。
根なし草の現代人からみると、地域に根を持つアイデンティティを持つ人々は幸せだ。しかし世界を見渡すと、中国自治区やミャンマー、中央アジアなど世界中で少数民族の「抹殺」の手がひろがっている。彼らの文化や誇りが若い人たちにきちんと受け継がれていくことを願うばかりだ。
宮崎駿、手塚治虫、が描こうとした世界観だ!
私たちが作品を超えて大好きで、リスペクトする2人に通じる〈日本人のルーツにある特別なもの〉を見せてくれる作品です。「もののけ姫」「火の鳥」の中に息づく、日本人だからこそ感じ取れる不思議を扱った作品です。
映画として、その脚本、カメラ、映像、構成、編集、カット割り、音編集、⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎の素晴らしい映画です。
久々に出会えた映画!って言う感想です!
「ナッシュビル」(米/アルトマン監督)の選挙カーのように、要所要所で宣伝カーが、ストーリーを進めて行きます。(うますぎる)
漫画、劇画の技が、活かされてるのかなぁー?
素晴らしい演技(自然です)の役者さんたちに、拍手👏しかないです。
人種差別やマイノリティを社会テーマにした映画ではない、もっと別のものを、見る人〈きっと、日本人や森に住む人たちの心ならば、わかる〉に、見せてくれます。
ありがちな「アイヌ」映画ではないです。
でも、「アイヌ」の映画です(うまく表現できない)
尻込みしないで、
とりあえず、
見ましょう!!!
これぞ映画!に、出逢えます。
洞穴の向こうに、死んだ人の住んでいる国があるんだってよ。
阿寒湖近くのアイヌの村。アイヌの伝統儀式イオマンテの実施の是非に揺れている。突き詰めれば、生きていく術として観光をとるのか、アイヌのアイデンティティをとるのか、の話し合いだ。現実としてマイノリティであるアイヌは、独自で生きていくことは無理で、他文化(つまり、明治の初頭から大量流入してきた本土の文化伝統)を受け入れざるを得ないのが現状だ。だから、アイヌでありながら、葬式では般若心経を唱えるし、みんなが話す言語は日本語なのだ。
じゃあ、彼らは日本人なのか?彼ら自身は自分を日本人だと思っているのか?というジレンマが生まれる。たとえば、遠くから来た観光客には「日本語お上手ですね」と言われれば、そつのない笑顔で「勉強したんで」と返してしまう。それって、まるで端からあなたたちは日本人ではないと否定されているようなものじゃないか。だから彼らが、自分たちの存在に迷うように見えるのは当然のことだと思えた。
個人的見解として、純血のアイヌと、純血の琉球民族は純度の濃い縄文人だと思っている。そして現在の日本人は、先住民である縄文人と渡来人である弥生人が数千年かけて交わってきた混血であると思っている。だから、たいてい誰にでも縄文人の血はわずかであろうが流れている。つまりアイヌは他人ではないのだ(逆を言えば朝鮮人も他人ではないのだけど)。それを、あたかも、古来別々の民族のような視線で彼らを見ることを、僕は嫌う。血の濃さが違うとしても隣人なのだ。
だからこそ言いたいのは、アイヌの伝統をとやかく外野が言うべきではない、ということ。(またついでに立場をかえれば、捕鯨についてもだけど)。野蛮であるという物差しばかりで、イオマンテの儀式の崇高さに気付かない現代人。彼らが長い年月をかけて守ってきたアニミズムの精神を理解しようとさえしない。その延長には自然の中に根付いた神話があり、「洞穴の伝説」もまたその一つなのだ。幹人は、自然と伝統を知ることで、畏れることを知った。死んだ熊と同じ澄んだ目を通して。その心を持つことで父に「再会」できた。そして、見守る母の傍らで、疲れ果てて眠りについた。
少なくとも、安らいだその姿を見て、彼がひとつ大人に近づいたように見えたのは、僕の贔屓目だけではないはずだ。
少年のいつわざる気持ちに寄り添う気持ちとアイヌ文化を尊重し、その存...
少年のいつわざる気持ちに寄り添う気持ちとアイヌ文化を尊重し、その存続を望む気持ちの葛藤がメインテーマで、私の心も同じでした。親子とコミュニティの映画でもありました。
実際の親子が主演なので、ドキュメンタリー映画といってよいでしょう。
エンドロールでは、母親がアイヌの習慣や儀式のアドバイザーも兼ねていました。民芸品店での場面、お客さんから「日本語上手ですね~」と言われたり、儀式での詞はカタカナで書いて覚えたりと、民族文化伝承と実際の生活の両立にずいぶん苦労している現実が描かれていました。
私はかれこれ45年前、中学生の頃に白老を訪れ、アイヌの人を実際に見ました。同年代の女の子のエキゾチックな美しさにショックを受けました。初恋だったかもしれません。また、そのちょっと前に国語の教師がプリント教材でアイヌに対する日本国の法律を批評した新聞社説を紹介して、感想文を書かされた記憶があります。確か、私の感想文が読まれ、ちょっと褒めてもらったかなぁ?記憶は相当あやしいですが。明治に制定された「北海道旧土人保護法」に対する批判的な社説だったと思います。時代に合わない法律が昭和になっても改正されていなかった。廃止されたのは平成になってからです。遅い。遅すぎる。
この映画はいい映画ですが、年月の経過、時代の変遷が民族伝統の継承をこんなにも困難にしていることがとてもショックでした。もう映画をつくるのも最後のチャンスなのかもと思ってしまいました。
少年がご飯のあと、手を合わせて、ごちそう様でしたと言う場面が冒頭と最後にあり、大事なメッセージです。大切な命を戴いて生きていることに気付いて、感謝しなければいけません。お互いの伝統文化を尊重し、理解することなく、行きすぎた行動を取る動物愛護団体の存在に萎縮したり、ユネスコ世界遺産認定のために野生動物と人間の貴重な共生関係を崩すのは残念なことだと思います。カムイ信仰を理解して尊重する気持ちがまずは大事ですね。
受け継ぐとは?
前情報無しで鑑賞。
某tv局の某ノンフィクション番組かと
思うくらいの、リアリティの高さでした。
意図あってのキャスティングだとおもいますが、
それがかなり良く、シンプルなストーリーと演出も
あいまって、作品にリアリズムと厚みをもたらせて
います。
故に、主人公の少年の想い、行動、葛藤が伝わるし
変わりゆくものを受け入れつつ、
形を変えつつ、けど変わらない、そして受け継がれて
いく尊いものを描き出していく、秀作です!
主人公の少年役の方。
素晴らしい。
オープニングカットで気持ち全部持っていかれました。
思っていたのと違った...
四季を表現した映像も素晴らしくて、アイヌを捉えた目線や表現や演出がすごく自然に見えて、平坦でそれほど楽しいものではないと思いつつ観賞しながらも相当見入った。
感情はそれほど動かされなかったけれど(悲しくなったり感動させられたりはしましたが─)、それよりも脳みそをめちゃくちゃ刺激させられたように思う。
良い悪いで簡単に済まされない色んな事柄が詰まった作品だった。
アイヌの信仰か、アイヌが信仰か
阿寒湖周辺のアイヌを売りにした観光地で、中学生の自我が目覚め始めた男の子が、イオマンテを通じアイデンティティの在り方を求め考える話。
今はどうなんでしょう…自分らの世代では当該地域出身の人の話を聞く限り、自身が持つ劣等感から差別や偏見、子供ならイジメにも展開してしまう様な存在だったアイヌの人達。
その伝統や文化を謳っている作品で、そこに批判的感情はないけれど、主人公の機微は正にそういうところに対する反感と迷いで、大人達にモヤモヤ。
今時の何にも判らない人達でも無い様な「日本語上手いですね」の表現の卑屈さに違和感を覚え、何も教えずの子熊の件は、だから共感を得られないし離れる人が出て来るんだろう!という苛立ちを感じる。
文化や信仰を否定する気は更々ないんだけど、批判もされるよねと思ってしまう。
そして、話は進行して行き、そこでオカルトですか…。
必要だったり、意味や意義があれば残るし、そうでなければ廃れるし、それで良いと思うのだけれど。
自分はドライ過ぎですか?
それを子供に説明出来なければ、それはもう良いのでは?と思ってしまう。
結局、納得したのか、納得しないけど受け入れたのか、洗脳されたのか、はたまた抱えたままなのか、ボカされてしまってすっきりせず。
アイヌ文化を伝えたいのだろうし、映画としてはわかるけれど、自分的には響かず。
寧ろ逆効果寄り。
文化や信仰と、それを取り巻く昨今の情勢を考えるという意味では意義があったかな。
彼が彼になる
アイヌモシリというタイトルに惹かれて観ました。
出演者たちがとにかくナチュラル。そして脚本も素晴らしく、映画を観ているうちに、私もその世界の中に引き込まれていきました。
少年の葛藤、少年の悲しみ、少年が自分という存在を改めて意識する姿を通し、現代を生きる先住民の人々の感覚が、手に取るように感じられる素晴らしい作品でした。
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