空白のレビュー・感想・評価
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浄化装置としての野木龍馬
『由宇子の天秤』と2本立てて観たので、たいそう疲れました。
『由宇子の~』と同じく、重たい内容だけど、脚本もよく、『由宇子の~』よりはずっとストーリーに入り込みやすかったです。それぞれの立場や心情がぶつかりあい、大きなうねりとなってドラマが進んでいき、引き込まれました。
でも、店長が自殺を図るところあたりから、観ていてなんかすごくしんどくなってきた(店長さん、もうちょっとしっかりしないと。あの親父、じゅうぶん刑罰の対象になりますよ。早く警察に相談すべきです)。
けれど、この作品、あと味がめちゃくちゃ悪いということはない。刺激は強いが、ユーモアも織り込まれていて、意外とジメジメしておらず、最後に救いもあるし。
脇役もそれぞれがいい味だしてます。なんといっても藤原季節の演じる野木龍馬の存在が大きい。彼がこの物語の浄化装置になっています。彼がいなかったら、間違いなくこの映画はもっと重くて暗い作品になっていたことでしょう。
肝心の『空白』の意味するところは何なんだろう? 僕にはわかりませんでした。
それにしても、演技もそうだけど、古田新太の顔がコワすぎます。ほんまに。
あと、のり弁のシーンもかなりコワかった。誰にでも、ああいう一面は潜んでいるのかもしれませんね。
追記
こんな2本立てを観たあとは、「もう衝撃作も問題作もいらない。楽しい笑える映画が観たい」と思ってしまいます。
映画関係者の皆さん、もっと楽しい映画をつくってください。お願いします(楽しい映画をつくるほうが、むずかしいのかもしれないけれど)。
久しぶりにいい映画を見た気がする
いつも、Netflixのおすすめに出てくるので何も情報なしのまま鑑賞。
花音という女の子。担任の先生は感じ悪いし、お母さんは別居?!お父さんは強烈。これは可哀想だなという印象。
そして、万引き?なの?え??っていうシーン。
走って逃げて、万引きしていないかもしれないじゃん。そんなに追いかけて…と思ったら、轢かれてしまう。
思わず声が出てしまった…
轢かれてしまった女の子、轢いてしまったひと、追いかけていた店員。
女の子とちゃんと向き合っていなかった、父親。
娘は万引きなんかしてない!と娘のことを全然知らないくせにそう言い張り、だんだんとモンスターになっていく。
追いかけていた店長は、父親、パートのおばちゃん、報道陣によって追い詰められていく。
どちらが…
良い悪いではない。。不幸な事故だった。娘を顧みない父親、毒親が間接的に追い込んだと見えなくもないが殺してはいないわけで。娘を失ったら狂人になるのも分からなくはない。死亡事故を切っ掛けにあらゆる人の人生が変わってしまう。轢いてしまった女性は自殺してしまうし、追い掛けたスーパーの店長は店を畳むことになってしまうし。。そこで働いていた人達もいるわけで。とりわけ加害者となった娘の母親の葬式のシーンは何も言えない。。あんな風に絶対に言えない。善意の押し売りの人はこういう人いるいると。あの人だけは変われなかったのかな。スーパー店長も励みの言葉を貰っていたけど、立ち直れるのか、本当に防ぎようのない事故であり、一寸先は闇である。
時代は自己承認欲求マックスな
時代である。そんな時代にかなりエグい角度で斬り込んできた。そう言う映画である◎
ソーシャルで繰り広げられる誰が正しい正しくない議論も
あの情報は嘘でこっちがホンモノ情報の応酬も結局、自己承認欲求マックスの挙句起こっている騒動でしかない。
全てのモノゴトはおなじであっても見る人接する人それぞれがそれぞれの見方接し方をする訳で同じと言うことはまずないのだから。自己承認欲求を追い求め始めると空っぽで苦しい思いしか得られ無いのだろう◎
そんな問いかけをエグい表現で提示してくれた怪作
見た後に空白が生まれた
序盤のショッキング映像を見せられて、観客側も同じ立場に立たせる感じやばい
そしてやっぱり、万引きで事務所連れて行った後の空白の時間が気になってザワザワする
逃げるなら事務所入る前に逃げるしね
お父さんも心の整理がついて娘を理解して(と思ってるのか)、万引きを認めた上でまだモヤモヤしてるということは、やはりそういうことなのか。
加害者がいないサスペンス
WOWOWの放送にて。
不幸な事故が起き、被害者遺族、加害者、そしてもう一人の事故当事者が存在するという、この発想が凄い。
また、登場人物の一人ひとりのキャラクターが個性的ではあるがリアリティがあって、人物設定も見事だ。
古田新太演じる主人公の漁師 添田が、強烈な唯我独尊タイプの頑固者。お近づきになりたくないタイプだ。が、こういう人、いるのではないかと思える。
離婚して娘と二人で暮らしているのだが、妻が娘を引き取らなかった理由は明確ではない(と思う)。
見習いと二人で仕掛け網漁の漁船に乗っている。弟子の方は高圧的な添田に辟易としている様子。
もう一人の主人公である青柳を松坂桃李が演じる。父親からスーパーマーケットを相続して店長となった人物。
真面目なのだが内向的な性格で、人望が厚い訳ではない。望むも望まないもなく親から引き継いだ仕事に迷いなく取り組んではいるものの、どこか主体性に欠けた青年のようだ。
この二人を不幸にも結びつけるのが添田の高校生の一人娘 花音。
古田新太の恐ろしいまでの悪役演技は、その深層心理にある寂しさや孤独感までがにじみ出ていて、個性派俳優の中に天才的演技者を見た気がする。
松坂桃李も得体の知れない複雑な青年に成りきっていて、徐々に追い詰められていく様に息が詰まりそうだ。
この二人を置いてもベストキャスティングなのは、花音を演じた伊東蒼だ。アバンタイトルから彼女の姿をカメラは追う。朗らかに駆ける他の少女たちとは明らかに異なった雰囲気の少女だと分かる。粗暴な父との二人暮らしでも、荒れることなく大人しく生きている。離婚した母(田畑智子)を慕っているが、父にも気を遣っている。内気で今にも消えそうな儚げな少女。伊東蒼自身がそういう少女だとしか思えないような、ありのままに演じているように見える。
登場人物たちはみな、闇(病み)を持っていて、自分を追い詰めている。
唯一闇が感じられないのは加害者ドライバーの女性(野村麻純)だ。どうやら母子家庭で育ったようだが、母親から愛情をもらって明るく成長したのだろう。世間から嫌われるようなこともなかったと想像する。
その彼女が、この事故で自分を追い詰め、誰よりも深い闇に落ちてしまうのだ。
添田は娘が万引きしたことを信じられず、青柳に迫る。娘の高校の教諭にも迫る。
娘が命を落とした原因を追求している反面で、それは自分を追い詰めることになるのだ。青柳がどんなに謝っても、求めているのは自分が想像する真実を青柳が認めることだ。たが、青柳が語ることが真実なのかもしれないという不安もあるはずで、青柳に迫れば迫るほど自分を追い詰めることになる。
青柳の方は、添田にしつこく迫られ、世間からも責められるに至って崩壊寸前だったはずだが、添田の妄想を受け入れる妥協はしない。
ここに、青柳の壮絶なまでの戦いがある。そして彼は誰にも助けを求めない。そういうことができない人間なのだが、それによって自らを追い詰めるのだ。パートの麻子(寺島しのぶ)が必死にあなたは悪くないと擁護するのを、逆に重圧に感じている。
遂に辛抱の糸が切れてしまい、弁当屋に電話で悪態をつく。そして気を取り直す松坂桃李の演技が秀逸で、それがきっかけのように次の行動に移るという物語展開と、その演出が上手い。
パートの麻子も、花音の担任教諭(趣里)も、自分が信じていた行いに疑問符が突きつけられる。
麻子はそのギャップに崩壊していまい、教諭は正しい道に歩を進めた様子。
この物語は、狂気に近い添田の怒りがいかにして収まるのかが、結末のポイントとなる。エスカレートする破滅的な結末もあるだろうが、それでは救いが無さすぎる。
たが、添田の改心は一筋縄ではいかない。
彼に決定打を浴びせるのが、加害者ドライバーの母親(片岡礼子)だという意表を突く展開には、涙腺が崩壊した。
この一撃を添田がどのように受け止めたのかを直接的に見せないところも上手い。
そして、娘の隠し事を知り、別れた妻や漁業の弟子(藤原季節)の言葉で徐々に自分の無理解に気づいていく。
が、青柳をハッキリ赦すのではないところもきめ細かい。
その青柳にも光は指す。それは添田との和解ではない。この極短いエピソードのアイデアが素晴らしい。
いわゆる大団円でみんなハッピーな終わりではないく、心の闇(病み)を残しつつも暗くない未来を感じさせる幕引きへと進んでいく脚本と演出は実に見事。
添田が娘の画材で絵を描きはじめるエピソードは、殺伐とした物語に息継ぎの時間を持たせたのかと思えたが、これが最後に父と娘の絆を示すアイテムとなるのだから、唸らざるを得ない。
そして、とうとう我々が添田に愛らしさすら感じるに至るのだから、古田新太も天晴れだ。
極端な設定が訴えるなにか
このような事故があったとしても「さすがにここまでにはならないだろう」という方向に寄せていることで、映画としての魅力をだしている。出演者の極端な性格付けもややイライラとさせられる部分もあるが、普通の人々の心のなかにも潜んでいるものをストレートにだしているような気にさせるギリギリのところでリアリティを担保している。秀作だと思います。
ただ敢えて一つだけ・・・娘の部屋で見つけた化粧品をあわてて捨ててしまうのは、いかがなものか。主人公が成長しようとしている流れに、水をさしているような気がするのは私だけでしょうか。
誰もが当事者になりうる物語
たぶん、
人は、誰でもちょっとづつ、嘘をついたり自分を偽ったりしている
良かれと思って言ってしまったり
怖くて本当の事が言えなかったり
人を攻撃するためだったり
正義のふりをして真実を捻じ曲げたり
嘘も言えない人は、ただただ黙り込んでしまう
私も同じです
何かが起きた時に、自分は悪くないと思いたい
そんな事、最初に思う事じゃないのに
人との繋がりに、いくらでもある「空白」
自分の心の中にもわからない部分がたくさんある
身近な人のことをもっと知りたくなりました
その為にはどうしたらいいのか
まず、私が本心で話さなければなりませんね
辛い作品でしたが、とても良かった
本当にしんどいんだけど
ここまで心抉れるかーと思わされるくらいに人間の心情を描いた映画だと思う。
また役者が全部正解と言えるくらいに凄い。
人の心の移り変わりや時間の経過。めちゃくちゃに人間臭い。
どれだけしんどいねーんと思っていた最後にほんの少しの救いが全然割に合わないんですが、ほのかな心の解放としてほっとさせられます。
古田さんの表情一つ一つがえぐいくらいに芸術です。
2本立て1本目。 女子中学生万引きに端を発す。この少女がなんとも絶...
2本立て1本目。
女子中学生万引きに端を発す。この少女がなんとも絶妙に可哀想なのだ。事故シーンは衝撃、思わず声をあげかけた。
そしてそこから始まる大人たちの人格崩壊。とにかく親父(古田新太)がクズ過ぎる。お節介おばさん(寺島しのぶ)なんかが絡んできてもう目が離せない。私ならきっと店長(松坂桃李)みたいになると思う。
解せないのはどうして最も罪が重そうなトラック運ちゃんには絡まない。そんなちょっと納得いかない部分もあったが、そこも含めて非常に面白かった。見る価値大いにあり、良い作品だった。
神様っているのかな
皆さんの星が多いのに最初の1時間観るのやめようかなって思いながら最後まで観た
星の多い意味わかりました。
悲しい… 自殺してしまった加害者の女の子の母親の素晴らしさに泣けた… きっとあれで父親も娘の死を受け止め自分の娘に対する態度も理解したのだろう
絵を始めだして弟子みたいな子が家に来てくれて
人は誰かに助けられ支えられて生きているのだなぁ
寺島しのぶ、いるいるこのタイプ、うまいな演技。
みんな完璧ではなく模索しながら生きていくのだな
事故や病気や人間関係の荒波に立ち向かって生きていくのだなと思う映画でした。
誰も悪くない、でも知らずに人を助け人を傷つけているのだなぁ
【不思議と温かい気持ちになれるヒューマンドラマ。そして、空白の意味。】
・2021年公開の日本のヒューマンドラマ映画。
・スーパーアオヤギで万引き未遂をしたと女子中学生 花音が店長 青柳にバックヤードに連れていかれるも、逃げ出す。走って逃げいている途中で花音は交通事故にあい死んでしまう。普段から横暴な態度で人と接する花音の父 充は、娘の身の潔白(万引きをしていない)を証明しようとスーパーアオヤギをはじめとした関係者を相手に執拗に辛辣に迫っていく…という大枠ストーリー。
[お勧めのポイント]
・どこか心がほぐされる×考えさせられる(実は)あたたかいヒューマンドラマ
・古田新太さんの心・行動の変化にグッとくる
・伊藤蒼さんの映画[さがす]とのギャップが圧巻
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
[物語]
・一番大事な確信を見せない(空白のある)物語、ここが考えさせれる一番のポイントになりました。映画冒頭で万引き未遂で捕まる花音ですが、こちらが鑑賞する映像だけでは「本当に万引きしたか否か」の確信が見えずに進んでいくのです。その上で、「万引きをしていないことを証明しようとする父」「万引きをされたから注意しようとしただけのはずが交通事故に合わせてしまったこと、そこから生まれた状況に苦しむ店長」がベースとなって話が進んでいきます。そして、その2人を取り巻くのが「正義を押し付けるパート 草加部」「(新しいパートナーとの間でできた)身重の元妻 翔子」「花音をはねた車を運転していた女性の母緑」「充の弟子として漁師として働く龍馬」…中心の2人だけでなく、周囲を取り巻く人々の行動や価値観が無駄なく、絶妙に混ざり合って1つの物語が構築されており、見応え抜群でした。
[演出]
・𠮷田恵輔監督と言えば、以前、映画[ヒメアノ~ル]を観させていただいて、そのえぐすぎる表現などに衝撃を覚えた記憶があります。そんな前提知識があったので、結構身構えて鑑賞したのですが、全然違いました。笑 いや、良い意味で違ったのです。びっくりするくらい「人間の心の動向」を丁寧に描かれているように思いました。
- 例えば、充の弟子の龍馬は、表面的には今風のチャラそうな若者ですが、その奥にある優しさを魅せてくれて、こちらを温かい気持ちにさせてくれたり。
- 例えば、正義を押し付けるパート 草加部は、人に頼られることで自分の本当の弱さを隠したいがための行動に見え、強制の優しさ・正義感がもたらすものは一体…ということを考えさせてくれたり。
・などなど、全ての登場人物の心の動きが無理なく無駄なくこちらに伝わってきて、いろんな角度で考えるきっかけをくれる演出になっているなぁと感じました。私自身は、とても良い意味で「𠮷田恵輔監督」というブランドを裏切られた一作になりました。
[映像]
・映画[ヒメアノ~ル]とは異なり、えぐい映像をリアルに魅せることは一切ありません。にもかからず、交通事故の凄惨さ伝わる。演技と台詞で魅せる工夫に感じました。
[音楽]
・際立って感じたことはありません。
[演技・配役]
・すべての役者さんが素晴らしかったです。鑑賞後に意識せずとも全員覚えていられるくらいに、それぞれのキャラクターの特性が伝わってきました。
・伊藤蒼さんは映画[さがす]で初見でした。その後、こちらの作品を観たら、その演技の違いに衝撃。個人的には[さがす]→[空白]の順番でよかったと。この順番で観たからこそ、この「ほぼ無口な演技」が素晴らしく感じました。
・古田さんはさすがですね。嫌味っぽい暴君さは最大限、でもどこか憎めなくなるような優しさが垣間見える。娘を亡くした辛すぎる状況でありながらそれでも成長していく充(父親)、を感じ取り、どこか嬉しさすら感じてしまいました。これぞ「共感」というやつですね。
・弟子の龍馬役の藤原季節さんも素敵。今風の若者×でもいいヤツの感じが見事で、この映画を暖かくしてくれるキーマンの役割を見事に果たされていたように思います。
・松坂桃李さんの魂の抜けた店長役も寺島しのぶさんの「押しつけの正義・親切」草加部役も、本当に皆さん、役者さんであることを忘れるくらい、登場人物そのものにどっぷり浸かって観れてしまう、素晴らしい演技だったと思います。
[全体]
・総じて、見応えのあるヒューマンドラマでした。
・タイトル「空白」をどのようにも解釈できる。キャラクターそれぞれが持っていた「空白」、万引きした瞬間が見えない「空白」、父と娘の「空白」…
・最後に、この映画を通して私個人が感じた「空白」の哲学を。ありがとうございました。
「表面ばかりを気にして生きている限り、誰しも空白(の期間や関係)を持ってしまうもの。でも、その空白は、後で何かを埋めることによって、人生をもっと本質的にもっと前向きに生きれる可能性を秘めた素敵なモノでもある。日々、目の前のことに必死になることも大切だけど、たまには自分自身の空白を探して、そこに何かを埋めてみては?もしかしたらそこには、優しさとか喜びとか幸せとか、とても大切なもので埋められるかもしれないよ。そんな風に人生を大切にしていってくださいね。」
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誰も救われないハッピーエンド
公開当時、多くの映画レビュアーさんが大絶賛していた本作。
近所の映画館では上映していなかったため、ずいぶん遅れての鑑賞です。
結論ですが、これ本当に面白かったです。ストーリーも脚本も演技も演出も映像も、全ての面において隙が無い映画でした。公開当時に観ていたなら、間違いなく2021年の個人的年間ベスト3には入ったであろう大傑作です。
重い内容だけに人に勧めづらいところはありますが、観られて良かったと思います。
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父から引き継いだ小さなスーパーを経営する青柳直人(松坂桃李)は、陳列棚から化粧品を万引きしようとする女子高生を発見する。直人は彼女の腕を掴んでバ
ックヤードに連行したが、彼女は店から逃走してしまう。彼女が直人の追跡を振り切るために道路に飛び出したところ、死角から出てきた二台の車に立て続に轢かれて亡くなってしまった。彼女の父親である添田充(古田新太)は、「うちの娘が万引きなんかするはずがない」として怒りを露にし、直人を追い詰めていく。
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実に絶妙なストーリー設定により、加害者と被害者の入れ替わりが目まぐるしく描かれます。
全員が加害者であり、全員が被害者のような見え方がします。本作の中で完全なる被害者と呼べるのは自殺した運転手の母親くらいではないでしょうか。
本作のタイトルである『空白』が何を指す言葉なのか、解釈は人それぞれ分かれるところではありますが、私は「花音が本当に万引きしたのかどうか」が、この物語の中での一番の『空白』だったと感じます。
結局映画の最後まで、花音が万引きしたのかどうかは分かりません。花音の部屋から化粧品が出てくる下りはありましたが、あれが果たして万引きしたものなのか自分で買って隠していたものなのかは分かりません。青柳が花音をバックヤードに連れていくシーンは花音が万引きしたようにもしていないようにも見える絶妙な撮影がされていますし、バックヤードに連行されたすぐ後のシーンは花音が逃げ出すシーンで、バックヤードで何が行われていたかは全く分からない構成になっています。
この『空白』のシーンがあるからこそ、この物語は加害者と被害者が渾然一体となった不思議なストーリーとなっています。花音が万引きをしていた/していないが明確になってしまえば、この物語は成立しないでしょう。
救いようのないストーリーでありながら、最後には添田も青柳も少し希望を残したラストとなっています。パンドラの箱みたい。
映画終盤、スーパーが閉店して道路工事の交通誘導員をしていた青柳の元に現れた一人の青年。この青年の一言で、私は非常に感動して泣きそうになりました。素晴らしいシーンでした。
全体的に暗くて沈んだ雰囲気の映画であるため好き嫌いは分かれるとは思いますが、私は今年観た映画の中では間違いなく五本指に入るくらい大好きな映画になりました。オススメです!!
救いがすくない
暗い。暗い描写が多かったのでラストでもう少し心温めてほしかった。お父さん(古田新太)が悪いですね。娘のほしいものややりたいことを素直に言える関係を築けなかった。そして責任転嫁しこじらせたお父さん。あーいう生き方しかできない人もいるというのはわかるけど…娘を持つ母親としては!子供は子供らしく毎日をなるべく楽しく生きていけるように、守らなければいけないと思いました。遅いんだよっ!てツッコみました。娘さんはお気の毒ですがこのタイプのおやじさんは、失わなければ一生気付けなかったと思います。サイコパスおばさんも怖すぎた…
これこそ邦画。
CGは最小限で、派手演出もなし。ストーリーはあらすじ通りでそれ以上でも以下でもない。
それでも人間の感情表現描写オンリーでこんなにも面白い。脇役それぞれが最高に輝くし主演の古田新太&松坂桃李のどうしようもない普通の人間っぽさが染みる。
事故に関わった人たちが何を考えて、変化にどう対応して行くか。
コストで海外に勝てない邦画こそこうあるべきと思わせてもらいました。
ここ最近で見た映画で一番良かった
とても見応えがありました。
不運が重なってしまって、事故に遭ったが、執拗に店長を責める父親。一人娘を亡くして一方的になってしまうのは分かるが、それにしてもこの人はずっと自分が正しいと思って生きてきたタイプなんだな、と。亭主関白な父親だと自己主張の出来ない子供になりがちなんですよね。厳格なわりには子供のことをなにも知らない。
"透明なマニキュア"もキーワードになってて面白かった。父親は娘のことを信じてたというよりは自分の中での娘を作り上げてたんだなと思った。
追い詰められた店長が弁当屋さんにクレーム入れるシーンは心が痛みました。人間極限まで追い詰められると自分がされた嫌なことを他人にやってしまうんですよね。
車で跳ねてしまった中山さんが自殺して、葬式で添田父が「俺は謝らないからな」って言葉を放った時こいつマジかよって思ったけど、その後の中山母の対応が大人でしたね。本当はあなたのせいで娘が死んだくらいには思ってるはずなのに、それでも娘に非があったことを認め頭を下げる。普通の人じゃできないですよ。今まで人のせいにして自分が正しいと思って生きてきた添田には衝撃だったんでしょうね。そこから改心していく様子も面白かったです。ここの親子の対比がうまく描かれていてすばらしい。
もしかしたら、店長はわいせつな行為をしたのかもしれない、中山さんは法定速度を守ってなかったのかもしれない(それだと罪の意識に苛まれて自殺してしまうのも辻褄が合う)と色々考察できるのも面白い。
そしてトドメを刺したトラック運転手は、取り調べの後一回も出てきてないんですよね。轢いてしまった時も「うわぁ…」みたいな態度だったしあまり自分に責任を感じていないのでしょう。事件の後も忘れてのうのうと生きてるから物語からも離脱したんでしょうね。強く思い悩む人がいる一方でこういうあっけらかんとしてる人もいるのがリアルでよかったです。
とりあえず、自分が一番正しいんだと思って生きている人に見せたい映画でした。
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