空白のレビュー・感想・評価
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ふたつの「空白」
ひとつは、もちろん、青柳店長と花音の二人だけがいたスーパーアオヤギの事務所の出来事です。そこで、いったい何が…女子中学生の花音が血相を変えて走って逃げ出し、青柳店長が、これまた必死の形相で追いかけなければならない何があったのか。その空白です。
スーパーの万引犯は事務所に連れて行かれて、話を聞かれたり、店側が呼んだ警察官が到着するまで待たされることは、そう特別なことではないと思われるのですが、事務所に入る店長と花音を見て、店員の草加部は、ちょっと不審そうな表情も浮かべます。
一方で、後に草加部が別の万引犯を捕まえたときは、事務所に連れて行っていますから、こういう場合、スーパーアオヤギでも、やはり事務所に連れて行くものなのだと思います。
すると、草加部が不審そうに思ったのは、花音が事務所に連れて行かれたことではなく、店長が連れて行ったこと…店長と花音とが二人で事務所に入ったことに不審を抱いたことになると思われます。
なぜ?…それが、ひとつ目の(物理的な・時間的な)空白なのだろうと思います。
もう一つは、価値観の違う者同士の間に生まれる避けがたい(心理的な)空白だろうと思います。
(充が「他の人は、どうやって折り合いをつけているのか」と、)呟いた、その空白。
自分の価値観に固執する充と花音との間にあった(心理的な)空白も小さくはなかったろうと推認されますが、同じように、イルカの形をした雲に感動を覚えたところ(同じ感性を持っていたところ)は、さすがに血は争えず、その空白をいささかでも埋める、せめてもの救いだったと思います。
(追記)
充を演じた古田新太さんは、もともとは舞台の方から映画に入ってきた方と聞きます。彼の迫真の演技があってこその本作であったことには、多言を要しないと思います。
空白の靄
映像を見る限り明らかに万引きはしていなかった。
ただ防犯カメラも付けていないし、仮に悪戯をしていたとしても証拠はない、まさに「空白」の時間であったと思う。
死んでしまってからの「空白」の時間もあるが、最後に父親(古田さん)も言っていたが、どちらかというと前者の「空白」の方が常に靄がとれなかった。。。
おそらく、店長は悪いことをしてしまったと反省はしているものの、真実を言えず自殺に逃げたいと思ったのであろう。。
世の中であり得る事件だと思う。
この一つの事件だけで社会情勢や人間関係まで表現した深い内容の映画に作り上げていることに感嘆した。
最後の父親の変わりようを見て、私自身も人ともっと正面から向き合っていくべきだと心に留めた。
古田新太と松坂桃李
鑑賞前後で全く気持ちが変わる
圧巻でした。
最初は、半ば呆れるような、救いのないような気持ちで鑑賞しておりましたが、片岡礼子さんの静かな気迫溢れるシーンから徐々に変化が生まれ、そこからはあれよあれよと感情と物語が穏やかにおさまっていき、最後は綺麗に着地しました。
鑑賞直後でうまく言葉にできませんが、劇中のセリフを借りるならば「モヤがとれない」気持ちは少しあって、その消化には「少し時間が欲しい」とは思いますが、それでも何故か後味が悪くない、という不思議な感覚を味わっております。
あれだけ広げた風呂敷がこうも綺麗に収まるとは。
ありがとう焼き鳥弁当。
そしてこの俳優陣の中で静かに輝き続ける藤原季節さん。恥ずかしながら本作で初見だったのですが、今後要チェックさせていただきます!
しかし最後までスタッフルームでのやり取りは、視聴者の我々にも語られなかった。青柳店長と花音ちゃんの2人のみぞ知る真実がありそうな、なさそうな…?
浄化装置としての野木龍馬
『由宇子の天秤』と2本立てて観たので、たいそう疲れました。
『由宇子の~』と同じく、重たい内容だけど、脚本もよく、『由宇子の~』よりはずっとストーリーに入り込みやすかったです。それぞれの立場や心情がぶつかりあい、大きなうねりとなってドラマが進んでいき、引き込まれました。
でも、店長が自殺を図るところあたりから、観ていてなんかすごくしんどくなってきた(店長さん、もうちょっとしっかりしないと。あの親父、じゅうぶん刑罰の対象になりますよ。早く警察に相談すべきです)。
けれど、この作品、あと味がめちゃくちゃ悪いということはない。刺激は強いが、ユーモアも織り込まれていて、意外とジメジメしておらず、最後に救いもあるし。
脇役もそれぞれがいい味だしてます。なんといっても藤原季節の演じる野木龍馬の存在が大きい。彼がこの物語の浄化装置になっています。彼がいなかったら、間違いなくこの映画はもっと重くて暗い作品になっていたことでしょう。
肝心の『空白』の意味するところは何なんだろう? 僕にはわかりませんでした。
それにしても、演技もそうだけど、古田新太の顔がコワすぎます。ほんまに。
あと、のり弁のシーンもかなりコワかった。誰にでも、ああいう一面は潜んでいるのかもしれませんね。
追記
こんな2本立てを観たあとは、「もう衝撃作も問題作もいらない。楽しい笑える映画が観たい」と思ってしまいます。
映画関係者の皆さん、もっと楽しい映画をつくってください。お願いします(楽しい映画をつくるほうが、むずかしいのかもしれないけれど)。
久しぶりにいい映画を見た気がする
いつも、Netflixのおすすめに出てくるので何も情報なしのまま鑑賞。
花音という女の子。担任の先生は感じ悪いし、お母さんは別居?!お父さんは強烈。これは可哀想だなという印象。
そして、万引き?なの?え??っていうシーン。
走って逃げて、万引きしていないかもしれないじゃん。そんなに追いかけて…と思ったら、轢かれてしまう。
思わず声が出てしまった…
轢かれてしまった女の子、轢いてしまったひと、追いかけていた店員。
女の子とちゃんと向き合っていなかった、父親。
娘は万引きなんかしてない!と娘のことを全然知らないくせにそう言い張り、だんだんとモンスターになっていく。
追いかけていた店長は、父親、パートのおばちゃん、報道陣によって追い詰められていく。
どちらが…
良い悪いではない。。不幸な事故だった。娘を顧みない父親、毒親が間接的に追い込んだと見えなくもないが殺してはいないわけで。娘を失ったら狂人になるのも分からなくはない。死亡事故を切っ掛けにあらゆる人の人生が変わってしまう。轢いてしまった女性は自殺してしまうし、追い掛けたスーパーの店長は店を畳むことになってしまうし。。そこで働いていた人達もいるわけで。とりわけ加害者となった娘の母親の葬式のシーンは何も言えない。。あんな風に絶対に言えない。善意の押し売りの人はこういう人いるいると。あの人だけは変われなかったのかな。スーパー店長も励みの言葉を貰っていたけど、立ち直れるのか、本当に防ぎようのない事故であり、一寸先は闇である。
時代は自己承認欲求マックスな
見た後に空白が生まれた
序盤のショッキング映像を見せられて、観客側も同じ立場に立たせる感じやばい
そしてやっぱり、万引きで事務所連れて行った後の空白の時間が気になってザワザワする
逃げるなら事務所入る前に逃げるしね
お父さんも心の整理がついて娘を理解して(と思ってるのか)、万引きを認めた上でまだモヤモヤしてるということは、やはりそういうことなのか。
加害者がいないサスペンス
WOWOWの放送にて。
不幸な事故が起き、被害者遺族、加害者、そしてもう一人の事故当事者が存在するという、この発想が凄い。
また、登場人物の一人ひとりのキャラクターが個性的ではあるがリアリティがあって、人物設定も見事だ。
古田新太演じる主人公の漁師 添田が、強烈な唯我独尊タイプの頑固者。お近づきになりたくないタイプだ。が、こういう人、いるのではないかと思える。
離婚して娘と二人で暮らしているのだが、妻が娘を引き取らなかった理由は明確ではない(と思う)。
見習いと二人で仕掛け網漁の漁船に乗っている。弟子の方は高圧的な添田に辟易としている様子。
もう一人の主人公である青柳を松坂桃李が演じる。父親からスーパーマーケットを相続して店長となった人物。
真面目なのだが内向的な性格で、人望が厚い訳ではない。望むも望まないもなく親から引き継いだ仕事に迷いなく取り組んではいるものの、どこか主体性に欠けた青年のようだ。
この二人を不幸にも結びつけるのが添田の高校生の一人娘 花音。
古田新太の恐ろしいまでの悪役演技は、その深層心理にある寂しさや孤独感までがにじみ出ていて、個性派俳優の中に天才的演技者を見た気がする。
松坂桃李も得体の知れない複雑な青年に成りきっていて、徐々に追い詰められていく様に息が詰まりそうだ。
この二人を置いてもベストキャスティングなのは、花音を演じた伊東蒼だ。アバンタイトルから彼女の姿をカメラは追う。朗らかに駆ける他の少女たちとは明らかに異なった雰囲気の少女だと分かる。粗暴な父との二人暮らしでも、荒れることなく大人しく生きている。離婚した母(田畑智子)を慕っているが、父にも気を遣っている。内気で今にも消えそうな儚げな少女。伊東蒼自身がそういう少女だとしか思えないような、ありのままに演じているように見える。
登場人物たちはみな、闇(病み)を持っていて、自分を追い詰めている。
唯一闇が感じられないのは加害者ドライバーの女性(野村麻純)だ。どうやら母子家庭で育ったようだが、母親から愛情をもらって明るく成長したのだろう。世間から嫌われるようなこともなかったと想像する。
その彼女が、この事故で自分を追い詰め、誰よりも深い闇に落ちてしまうのだ。
添田は娘が万引きしたことを信じられず、青柳に迫る。娘の高校の教諭にも迫る。
娘が命を落とした原因を追求している反面で、それは自分を追い詰めることになるのだ。青柳がどんなに謝っても、求めているのは自分が想像する真実を青柳が認めることだ。たが、青柳が語ることが真実なのかもしれないという不安もあるはずで、青柳に迫れば迫るほど自分を追い詰めることになる。
青柳の方は、添田にしつこく迫られ、世間からも責められるに至って崩壊寸前だったはずだが、添田の妄想を受け入れる妥協はしない。
ここに、青柳の壮絶なまでの戦いがある。そして彼は誰にも助けを求めない。そういうことができない人間なのだが、それによって自らを追い詰めるのだ。パートの麻子(寺島しのぶ)が必死にあなたは悪くないと擁護するのを、逆に重圧に感じている。
遂に辛抱の糸が切れてしまい、弁当屋に電話で悪態をつく。そして気を取り直す松坂桃李の演技が秀逸で、それがきっかけのように次の行動に移るという物語展開と、その演出が上手い。
パートの麻子も、花音の担任教諭(趣里)も、自分が信じていた行いに疑問符が突きつけられる。
麻子はそのギャップに崩壊していまい、教諭は正しい道に歩を進めた様子。
この物語は、狂気に近い添田の怒りがいかにして収まるのかが、結末のポイントとなる。エスカレートする破滅的な結末もあるだろうが、それでは救いが無さすぎる。
たが、添田の改心は一筋縄ではいかない。
彼に決定打を浴びせるのが、加害者ドライバーの母親(片岡礼子)だという意表を突く展開には、涙腺が崩壊した。
この一撃を添田がどのように受け止めたのかを直接的に見せないところも上手い。
そして、娘の隠し事を知り、別れた妻や漁業の弟子(藤原季節)の言葉で徐々に自分の無理解に気づいていく。
が、青柳をハッキリ赦すのではないところもきめ細かい。
その青柳にも光は指す。それは添田との和解ではない。この極短いエピソードのアイデアが素晴らしい。
いわゆる大団円でみんなハッピーな終わりではないく、心の闇(病み)を残しつつも暗くない未来を感じさせる幕引きへと進んでいく脚本と演出は実に見事。
添田が娘の画材で絵を描きはじめるエピソードは、殺伐とした物語に息継ぎの時間を持たせたのかと思えたが、これが最後に父と娘の絆を示すアイテムとなるのだから、唸らざるを得ない。
そして、とうとう我々が添田に愛らしさすら感じるに至るのだから、古田新太も天晴れだ。
極端な設定が訴えるなにか
このような事故があったとしても「さすがにここまでにはならないだろう」という方向に寄せていることで、映画としての魅力をだしている。出演者の極端な性格付けもややイライラとさせられる部分もあるが、普通の人々の心のなかにも潜んでいるものをストレートにだしているような気にさせるギリギリのところでリアリティを担保している。秀作だと思います。
ただ敢えて一つだけ・・・娘の部屋で見つけた化粧品をあわてて捨ててしまうのは、いかがなものか。主人公が成長しようとしている流れに、水をさしているような気がするのは私だけでしょうか。
誰もが当事者になりうる物語
本当にしんどいんだけど
2本立て1本目。 女子中学生万引きに端を発す。この少女がなんとも絶...
神様っているのかな
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