空白のレビュー・感想・評価
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人間という極めて不完全な生き物。
古田新太はとりたたてモンスターというわけではない、ごく普通の思い込みの激しい自己中親父で、人並に家族を愛している。家族とどう折り合ったらいいのかわからないだけなのだ。
松坂桃李はとりたたて善人でも悪人でもない、ごく普通にどこにでもいる、中身の無さげな凡人で、とりわけ家族思いでも、従業員思いでもない。誰とも関わることなくひとりで居たい人。所謂周りとどう折り合ったらいいのかわからない小心者なのだ。
わからないもの同士が各々、現実とどう折り合ったらいいのか模索し続ける様はとても重苦しく呼吸が荒くなる。
だれが被害者で誰が加害者なのか渾沌としてわからなくなってきて・・・
100%の悪人はいないし、100%の善人もいない。
本作は人間という極めて不完全な存在を露呈させた佳作である。
救いとは
番宣見ててもさほどピンと来ず、皆様の高評価にそこまでなの?と疑心暗鬼でみたらあらまあなんてことでしょう。僕もこの評価になりました。
地味ぃで、終始皆不幸で、でもちょっとほのぼの。
どこまでも現実的な(ドキュメンタリー的)物語。
重たい恨み怒りがぶつかり合うかと思いきや、複雑な感情が混じり合い、どこに肩入れするでもないそれぞれのリアル。
この猟奇的なお父ちゃんの言ってる事は無茶苦茶でも、なぜか感情としては自然で違和感を感じなかった。
バランスがとにかく素晴らしい。
人の心の救いとは、気持ちの折り合いとは、何とも意外な、まったく予想しない方向からふと、感じるものなのだ、という所に僕の心は持っていかれ、気づいたら終盤、二度涙を零しておりました。
良作です。
ラストの救われ方が良かった
予告編が気になって結果初日に観ることに。終始にこやかなキャラってのもあるけど、終始怒ってるってキャラも大変だな古田新太、と思いつつ、どストレートにあの顔をこの役に配置するのは新鮮といえば新鮮。
蒲郡とあるが、どこにでもある地方都市の些細なことから始まる大きな損失とそこから波及される様々な人間模様。半ば妄想的でよくわからないストーカーふたり引き連れた松坂桃李はどっちつかずのいい受け手となり、追い詰められる、、のは予告編で想像していたが終わり方に救いがあってよかった。焼き鳥弁当とあの雲か。それはいいラストだった。
しかし切り取られる舞台装置の雑多な感じとかどっちに転ぶかわからないあぶないキャラクターはこの監督独特のものですね。
誰の非でもなく、全員の責任でもある
スーパーの店長である松坂桃李が、万引きをした少女を追走することで起きる事故によりあまりの人生が大きく狂いはじめる。
万引きをした少女の自業自得か。万引きに対するスーパーのいきすぎた対応が起こした過失か。そもそも万引きを防げなかった親の監督不足なのか。全員が自責と他者への責任転嫁の間で大きく心が揺れていく姿を、松坂桃李と古田新太のずば抜けた演技力でしっかりと視聴者に伝えてくる。
終盤のシーンで古田がボソッと呟く「皆んな、どうやって折り合いつけてんのかぁ」と言う言葉の持つ重み。
被害者遺族のどこにぶつけたらいいか分からない怒り・悲しみ・後悔が溢れる作品。
誰もに
起こりうる問題ですよね、それも加害者にも被害者にもなりうる。怖い事ですね。関わった人間の誰もが振り回される傷つき、疲弊し、死に至る。良い事は何もありませんね。マスコミも怖いです。
感情移入
難しい作品でした。
一人一人の感情に同感でき、誰が悪いとかではないため中盤はずっと考えさせられました。
被害者中学生の担任の先生が『 ずるいですよ』と言われるシーンはとても響きました。勝手に自分で被害者の気持ちを理解しているように考えてしまう。上手い作品です。そこでこんなふうに突っ込む作品はなかなかありません。
自分的には少し松坂桃李くんが一方的に可哀想すぎる気もしました。
自分は高校生でもっと上の年の方向けの作品でしが、見に来てよかったなと思えます。
イルカの絵はもう、うん最高です。
ずーっと無駄のない、緊迫した作品で、それぞれの心情がそれぞれのキャ...
不寛容という副題が良いね
明確に「空白」という言葉がセリフにあるわけでもないのに、この映画にこのタイトルをつけるだけで安心できる座組だと言っていいと思う。
この物語に空白らしい空白はない。常に考えさせられる。
交通事故のシーンがリアル。
実際問題、頑固な性格かどうかを抜きにしても、自分がこうだと思ったらこうとか、自分なりの善意を相手に受け取ってほしいとか、想いが乗っかれば乗っかるほど想いの空白の部分は少なくなっていく。どの登場人物もそこでがんじがらめになって苦しくなるんだよな…
松坂桃李は何重人格なんだと思うくらいの振り幅を見せていて良かった。古田新太のゴジラ的な立ち位置。後半向き合おうとするけども向き合えられなくて捨ててしまうもの、向き合った結果やっと理解したような気になれるもの、時に大胆に時に繊細に演じ分けていた。決定的に彼には謝らないのが良いよね。モヤモヤしちゃってとか言っちゃって。
直接的な加害者でない人物に恨みを持つという視点も話として新しい。都合のいいときにだけいるマスコミはこういう話のとき健在なんだけど、その先も少し見せていたのも新しい。
あの時不自然な空のカットあったよな…でも今思えば自然だわ。後半グッと話の強度がますのもこの監督らしい。
2014年の笹井芳樹先生の自殺を思い出しました
吉田作品最高傑作
向き合えば理解し合える
希望の光が全く見えない2時間弱
万引きをした女の子が逃げたので追っかけてたら、その子が交通事故で死亡。自分の行動を反省し続ける店長。
娘と2人暮らしだったのに、突然1人になってしまった親父。彼らを囲む人々とネットやマスコミの傍観者達。
まさに、明日は我が身。もし自分だったらどう行動するだろう?シーン毎に違う人目線になって考えさせられた。
もし、自分のせいで誰かが死んでしまったら、この店長の様に思考停止しちゃいそう。もし、そんな人が身近にいたら、力になってあげたいよね。もし、自分が運転してて誰かを殺しちゃったら、自殺しちゃうかも。もし、娘が誰かのせいで亡くなったら、そいつを許せるだろうか。
一歩が踏み出せない店長の松坂桃李とクソ親父の古田新太、この2人ハマってる〜。元気なおばさんの寺島しのぶもよかった。
何より大好きな田畑智子の演技が久しぶりに観られて幸せ〜。
ただ、なぜ彼女が走って逃げたのか知りたかったのと、もう少し希望の光が見たかったなぁ。
寺島しのぶとボランティアしている女優さん
寺島しのぶとボランティアをしていて、カレーをぶちまけてしまう女優さん、どこかで見たかと思うけれどキャストに名前が見あたらない。すごい魅力的なので、どなたかコメントで教えていただけると幸いです。
前提として、全てレベルが高いのだけれど、もっとマジックがかかっていても良いんじゃないかと思った。古田演じる攻撃的で対話を拒む態度の遺族、生真面目だがいつも後ろ向きな態度の松坂、正しいが独善的で松坂を狙う寺島。その他、田畑演じる元嫁の演技も全て素晴らしい。けれど、この役者陣ならこの役を余裕でやれるだろうなと思ってしまうのは、厳しすぎる感想でしょうか。全て素晴らしいのに、抜け感があれば、星5だったかもしれない。由宇子の天秤でも思ったが、マスメディア批判を描くこと自体に食傷気味かもしれない。マスメディアがねじ曲げてしまうことは分かったとして、そこにどのように対抗すれば良いのか?リテラシー向上のために教育するとかでは余りに対抗として非力ではないか。ねじ曲がっているのを分かっていながら楽しんでいる確信犯だっているはずだ。マスメディア批判をするなら、さらに突き詰めた論理展開が観たい。
正しいとか正しくないとか、悪いとか悪くないとか、そういう全ての価値...
便利な時代だからこそ
「被害者」が「加害者」を脅かす二元論ではない。
古田新太演じるかなり気性の荒い父親。
その一人娘が松坂桃李演じるスーパーの店長が営む店で万引きを疑われ、その後の逃走劇の果てに、娘は自動車事故に巻き込まれ、悲惨な死を迎える。
店長は責任を感じ、不器用ながら自分なりの誠意を娘の父親に伝えるも、もはやモンスターと化した父親にはなかなか聞き入れてもらえず、かえって向き合うことを恐れるようになり、ひとり苦悶し続ける。
マスコミはこの件を不用意に煽り焚き付け、学校側は言い訳先行で大事にしたくないという思惑もあり、父親の訴えを煙にまこうとする。
そんなリアルでお決まりの描写で、観てる方は居た堪れない場面が続く。
ただ、物語にはきちんと起承転結があり、モンスターと化した父親にも徐々に変化が生まれる。ラストは大切なものを失った者同士和解の兆しものぞかせた。
そして、父親と店長それぞれにちょっとした救いもあったりで、そんなに悪い気分で終わる映画ではなかった。
この映画を観て人間はつくづく愚かで不器用だなと再認識した。
どうせわかってくれないと、相手と正対することに虚しさと諦めを覚え、殻に閉じこもる若者たち。
娘を突然失ったことで普段より一層冷静でいられなくなり攻撃的になり、そして、失って初めて娘と向き合うこととなる不器用な父親。
本当は見返りを求めているのに、
善意を強要し、距離感を誤り、周囲を困惑させ
、苦しめていることに気づかないある意味モンスターなお節介な人。
そんな自分が正しいと疑わないモンスターに振り回され、声をあげることを躊躇う臆病な大多数の人々。
当事者でもないのにあれやこれやと高みの見物で批判したり、遠くから面白がりストレスをぶつけるかのようにちょっかいを出す野次馬ども。
私もそんな分からずやで腐った面をもつ烏合の衆のひとりだ。
だからこそ、本作に出てくる緩衝材たる脇役たちの姿には称えるべきところがある。
本当に困っている時に寄り添える真っ新な思いやりをみせる者もいたり、
同僚にずるいと言われたり、被害者に邪険にされながらも自分がやってきたこと、やってしまったことを悔い、自分ができることを全うしようとする者たちもいたり、
自分が苦しい立場にいるにもかかわらずそれでもなお誠意ある態度を貫こうと踏ん張る者もいたり、
立ち直って欲しいと願うからこそあえて叱咤や激励の言葉をかける者もいたり。
そんな人たちの示す言動や態度は
「不健康」になり下がった現代人のわずかばかりに残っている健やかさだ。
ここぞという時にそれができる人たちは苦しんでいる者にとっての救いとなり、自省のきっかけを与える。
人はそういう僅かな健やかな人たちに支えられて生かされている。
生きるに値する人の世の肯定。
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