空白のレビュー・感想・評価
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不寛容という副題が良いね
明確に「空白」という言葉がセリフにあるわけでもないのに、この映画にこのタイトルをつけるだけで安心できる座組だと言っていいと思う。
この物語に空白らしい空白はない。常に考えさせられる。
交通事故のシーンがリアル。
実際問題、頑固な性格かどうかを抜きにしても、自分がこうだと思ったらこうとか、自分なりの善意を相手に受け取ってほしいとか、想いが乗っかれば乗っかるほど想いの空白の部分は少なくなっていく。どの登場人物もそこでがんじがらめになって苦しくなるんだよな…
松坂桃李は何重人格なんだと思うくらいの振り幅を見せていて良かった。古田新太のゴジラ的な立ち位置。後半向き合おうとするけども向き合えられなくて捨ててしまうもの、向き合った結果やっと理解したような気になれるもの、時に大胆に時に繊細に演じ分けていた。決定的に彼には謝らないのが良いよね。モヤモヤしちゃってとか言っちゃって。
直接的な加害者でない人物に恨みを持つという視点も話として新しい。都合のいいときにだけいるマスコミはこういう話のとき健在なんだけど、その先も少し見せていたのも新しい。
あの時不自然な空のカットあったよな…でも今思えば自然だわ。後半グッと話の強度がますのもこの監督らしい。
2014年の笹井芳樹先生の自殺を思い出しました
吉田作品最高傑作
向き合えば理解し合える
希望の光が全く見えない2時間弱
万引きをした女の子が逃げたので追っかけてたら、その子が交通事故で死亡。自分の行動を反省し続ける店長。
娘と2人暮らしだったのに、突然1人になってしまった親父。彼らを囲む人々とネットやマスコミの傍観者達。
まさに、明日は我が身。もし自分だったらどう行動するだろう?シーン毎に違う人目線になって考えさせられた。
もし、自分のせいで誰かが死んでしまったら、この店長の様に思考停止しちゃいそう。もし、そんな人が身近にいたら、力になってあげたいよね。もし、自分が運転してて誰かを殺しちゃったら、自殺しちゃうかも。もし、娘が誰かのせいで亡くなったら、そいつを許せるだろうか。
一歩が踏み出せない店長の松坂桃李とクソ親父の古田新太、この2人ハマってる〜。元気なおばさんの寺島しのぶもよかった。
何より大好きな田畑智子の演技が久しぶりに観られて幸せ〜。
ただ、なぜ彼女が走って逃げたのか知りたかったのと、もう少し希望の光が見たかったなぁ。
寺島しのぶとボランティアしている女優さん
寺島しのぶとボランティアをしていて、カレーをぶちまけてしまう女優さん、どこかで見たかと思うけれどキャストに名前が見あたらない。すごい魅力的なので、どなたかコメントで教えていただけると幸いです。
前提として、全てレベルが高いのだけれど、もっとマジックがかかっていても良いんじゃないかと思った。古田演じる攻撃的で対話を拒む態度の遺族、生真面目だがいつも後ろ向きな態度の松坂、正しいが独善的で松坂を狙う寺島。その他、田畑演じる元嫁の演技も全て素晴らしい。けれど、この役者陣ならこの役を余裕でやれるだろうなと思ってしまうのは、厳しすぎる感想でしょうか。全て素晴らしいのに、抜け感があれば、星5だったかもしれない。由宇子の天秤でも思ったが、マスメディア批判を描くこと自体に食傷気味かもしれない。マスメディアがねじ曲げてしまうことは分かったとして、そこにどのように対抗すれば良いのか?リテラシー向上のために教育するとかでは余りに対抗として非力ではないか。ねじ曲がっているのを分かっていながら楽しんでいる確信犯だっているはずだ。マスメディア批判をするなら、さらに突き詰めた論理展開が観たい。
正しいとか正しくないとか、悪いとか悪くないとか、そういう全ての価値...
便利な時代だからこそ
「被害者」が「加害者」を脅かす二元論ではない。
古田新太演じるかなり気性の荒い父親。
その一人娘が松坂桃李演じるスーパーの店長が営む店で万引きを疑われ、その後の逃走劇の果てに、娘は自動車事故に巻き込まれ、悲惨な死を迎える。
店長は責任を感じ、不器用ながら自分なりの誠意を娘の父親に伝えるも、もはやモンスターと化した父親にはなかなか聞き入れてもらえず、かえって向き合うことを恐れるようになり、ひとり苦悶し続ける。
マスコミはこの件を不用意に煽り焚き付け、学校側は言い訳先行で大事にしたくないという思惑もあり、父親の訴えを煙にまこうとする。
そんなリアルでお決まりの描写で、観てる方は居た堪れない場面が続く。
ただ、物語にはきちんと起承転結があり、モンスターと化した父親にも徐々に変化が生まれる。ラストは大切なものを失った者同士和解の兆しものぞかせた。
そして、父親と店長それぞれにちょっとした救いもあったりで、そんなに悪い気分で終わる映画ではなかった。
この映画を観て人間はつくづく愚かで不器用だなと再認識した。
どうせわかってくれないと、相手と正対することに虚しさと諦めを覚え、殻に閉じこもる若者たち。
娘を突然失ったことで普段より一層冷静でいられなくなり攻撃的になり、そして、失って初めて娘と向き合うこととなる不器用な父親。
本当は見返りを求めているのに、
善意を強要し、距離感を誤り、周囲を困惑させ
、苦しめていることに気づかないある意味モンスターなお節介な人。
そんな自分が正しいと疑わないモンスターに振り回され、声をあげることを躊躇う臆病な大多数の人々。
当事者でもないのにあれやこれやと高みの見物で批判したり、遠くから面白がりストレスをぶつけるかのようにちょっかいを出す野次馬ども。
私もそんな分からずやで腐った面をもつ烏合の衆のひとりだ。
だからこそ、本作に出てくる緩衝材たる脇役たちの姿には称えるべきところがある。
本当に困っている時に寄り添える真っ新な思いやりをみせる者もいたり、
同僚にずるいと言われたり、被害者に邪険にされながらも自分がやってきたこと、やってしまったことを悔い、自分ができることを全うしようとする者たちもいたり、
自分が苦しい立場にいるにもかかわらずそれでもなお誠意ある態度を貫こうと踏ん張る者もいたり、
立ち直って欲しいと願うからこそあえて叱咤や激励の言葉をかける者もいたり。
そんな人たちの示す言動や態度は
「不健康」になり下がった現代人のわずかばかりに残っている健やかさだ。
ここぞという時にそれができる人たちは苦しんでいる者にとっての救いとなり、自省のきっかけを与える。
人はそういう僅かな健やかな人たちに支えられて生かされている。
生きるに値する人の世の肯定。
凄まじい、古田新太の気迫
それぞれの空白
"相反する"様々な"視点"を客観的に味わい尽くせる作品
期待の遥か上の上。
"相反する"様々な"視点"を客観的に味わい尽くせる作品
今年映画館で鑑賞した作品で1番の衝撃でした。(2021年暫定1位)
まず初見連続で2回。日を改め、人物視点を変えて計4回鑑賞。
まず、ティーザー、本ver.チラシからも漂うメッセージ性とセンスの良さ。(チラシやポスターで作品から何を伝えたいのかがハッキリとしている。問題提起の方法が優れている。)に期待しつつ。。
冒頭からあっという間に引き込まれました。
映像だけで伝えてくる潔さ。人物像と環境。光を綺麗に撮られていました。音数少ない透明感のある音楽も秀逸。
背中越しのグリーンという色からはどうか穏やかに、ことが落ち着いてほしい、受動的な青柳と様子をイメージしつつ
タイトルバック。空白
ああ、なんてタイミング!痺れます。(吉田恵輔監督の作品ごとのタイトルバックのタイミングを楽しみにしている)
さあ、ここからはじまる、想像もつかない場所、ことへと、見たくないような見たいような後ろから背中を押される手を引かれる感じ。最高です。
あっという間の鑑賞時間。体感では30分。
衝撃の後の埋まらない『空 白』は見る側に"問い"として与えてくれた気がしました。
他人事とは思えない、いわゆる問題作、こういう作品を待っていました。この企画を受け、形にしてくれたスターサンズさん、吉田監督、今までもこれからも本当に目が離せません。毎度毎度心揺さぶられ、引きずります。
ただそこにいる、生きている演じていないのでは?と思うほどの普通でとても自然な人々、マスコミの過剰な情報操作、誹謗中傷.現代ならではの不寛容さ、、
吉田監督の演出と引き出し方、人物の描き方がもう半端ではないのです。
そして脚本が本当に秀逸で面白い。(愛しのアイリーン撮影中に描かれたそうです)それぞれの普通のキャラクターが身近にいそうだし、実際にいるし、自分の中にもそれぞれを感じるように描かれている。
"それぞれがそれぞれの正義"で"間違った"ことはおそらくない。それ故に身近にいる一番の恐怖は正義の押し売り、暴力的とさえ感じる。周りが見えなくなるほど自信に満ち溢れ、正義観と言う名の鎧を纏って、、。それを否定したらこちらが悪であるかのような?必死過ぎて正直鬱陶しいし、きついし、本人はそれに全く気づいていない。それにより、知らずに意図せず誰かを傷付けて追い込んでいるかも。そして、その状況にも気づかないことが怖い。
また、それぞれの行動を客観的に当事者が見るシーンがいくつかあり、時間と共に冷静になっていく。見る側見られる側の逆転と言いますか、展開が面白いし
(近いと見えなくて引くとよく見えるまたは、人のふり見て我がふり直せと言わんばかりに) 憎い演出です!(拍手)
フード描写も素晴らしい。(フード理論)
お弁当のつながりも、食卓の様子も、スタミナ◯◯とか特製◯◯弁当とか、それぞれの心境が良く表現されてると思いました。(悲しくても辛くてもお腹は空くし、精をつけるためとか、最後の食事くらいは、とか、、)食べ物や食事を通した人物描写が多くあります。焼鳥弁当、天ぷら、カレー、即席味噌汁、刺身
何か大切なものを失ってその『空 白」を埋めていく作業がその人にとって少しずつ光になって身になっていくのではないかと感じた。それぞれが不幸で予想外な展開が起こってしまうが、起きたことはほとんどが辛いし取り返せないとして、
「どう折り合いをつけていくのか」無くすことで気づけたこと、それを埋めようとすることが何よりもこれからの救いなのかもしれない。
そうと考えると、「空 白」がない草加部さんは救いがないかもしれない。とも言えてしまう。
一生懸命作ったカレー(人生)を溢され(拒絶され)、泣きながら拾い集める(慰める)シーンは絶妙で素晴らしい。彼女のその後が気になりました。"救い"を見つけて欲しい
知ることや興味を持つこと、ごめんなさい、ありがとうと素直に言えること、伝える大切さにハッとさせられます。距離をとる時代だからこそ改めて身に沁みる。
見終わりは、とてもとてもあたたかです。優しさもあり、落涙。
父の見ていた景色はきっと娘も見ていた景色で、
ただそれだけ、それだけが、生きるすべ
俳優さんみなさん本当に素晴らしいのであえていうまででもありませんが、
特に、藤原季節さんの父のように慕う存在へ向ける視線と親しみの言葉、伊藤蒼さんのなんとも言えない寂しそうで空っぽな目の表情が忘れられません。片岡礼子さん、奥野瑛太さん
さまざまな感情が味わえる、みんなで語り合いたくなる作品でした。傑作。面白い!
実際は、衝撃が強くて未だ頭の中がぐちゃぐちゃで整理がつかないでいる部分もありますが、、噛み締めて、余韻に浸りつつ
普段起こりえる些細なことでも、いつの間にこんなになってしまったのだろうなんて思う事、事が独り歩きして想像もつかない事態になりえる。恐怖
現代の沢山の人の心に届いて欲しいと願います。
傷口に塩を塗り込まれる感覚
久々に内容で釘付けに
最初から最後まで濃密な内容で、これほどまでに内容で引き込まれたのは久々。
絵そのものは特段優れているとは感じなかったけれど、感情を表現することに注力しているようなその映像がより一層作品の内容へと誘い、心がふるえて揺れ続けました。
非常につらく痛々しい内容ではあるけれど、それだけにとどまらず、ユーモアも切なさも感動も存分に味わうことが出来ました。
主要な役柄の方々はじめ、出演された全ての役者の方々の見事なパフォーマンスがあってこその作品かなーとも思いました。
決していい話でもほめられた話でもありません。人間の恥部が満載で、嫌な気持ちになるかもしれません。でも、だからこそ誰しもが持っているような弱々しさを共有できるかも─
とにかく素晴らしい作品でした。
古田新太の役作りが凄い
『望み』でも描かれているけど報道(ワイドショー)マスコミの屑っぷりが自虐を込めて⁈良く描かれています。
ホント怖い。TVで流されたら信じちゃうもんね。
古田新太が上手い!としか言えない。
頑固な漁師であんなオッさん絶対居る。ってなる。
子育てには向かないけど自分の子供は可愛いんだ。を見事に魅せている。
それを受ける殿(松坂桃李)がちょっと情け無い一辺倒なのがなぁ…
従業員達の生活を背負っているって気概が皆無なのが悲しい。
少なくとも親父から店を受け継いだ志しが全く見れなかったのが残念。
事故等で目の前で人が亡くなってしまう状況に出会した事は幸い無いけど(吹っ飛ばされて記憶が無くなった事はあるw)最悪の当事者にならない事を祈るばかりです。
そんな事を思う作品。
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