空白のレビュー・感想・評価
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偏見と誤解で苦しい気持ちになりました。
まず最初にパンフレットに「~古本屋で万引き~中学生~実
際の事故~20年前~」とありましたが、関係者が、この映画
の事を知ったら居た堪れないのでは、と思いました。
大切な人を亡くして時が経って忘れていって欲しいと思って
いるのではないでしょうか。
映画もマスコミなのでしょうから、表現の自由と権利を主張
されるのでしょうが、吉田氏の自分の妄想で考えられた映画
の内容には絶句しました。
吉田氏もマスコミでしょうから何を表現されても許されると
いうのでしょうか。
この映画を絶賛されている方がいますが、誤った認識を世の
中に広められて、とても苦痛に思います。私が観た回では理
由は分かりませんが途中で帰られた方もいました。
書ききれないほどの強い憤りを感じましたが、私が苦しい気
持ちになった一部をあげさせていただくと
まず最初に、この映画中に「弁護士」「裁判」という単語が
一言も出てこなかったのに強い違和感がありました。
裁判はお金が無くても法テラスに行って国選弁護人に依頼し
たり、弁護士が関わってくる話だと思います。
なので実際には、被害者と加害者が面と向かって言いあえる
なんてほぼありません。弁護士を通して、となります。実際
には手紙一通送っただけで、先方の弁護士から抗議がありま
す。
「被害者参加制度」で裁判所で加害者に強い口調で話そうと
しても、裁判官に注意されてしまいます。
その事を考えると私には、この映画が異常な映画に思えまし
た。
大切な人を亡くした遺族が加害者に何も言えないから、ずっ
とずっと心に傷があって苦しいのです。
20年前の事故と違って、道路のいたる所には監視カメラNシ
ステムもありますし、ドライブレコーダーも普及がされてる
中で、脚本や演技に違和感に思う内容もありました。
交通裁判所のシーンもないしリアリティーは一切ありません
。
また被害者宅に中傷のビラを貼っている事、スーパーの店長
を擁護するビラの配布、この様な事を実際に行ったら、どう
なるのか分からないんだな、と、思いました。
スーパーが閉店しようが人が亡くなった、人の命はいくらお
金を積んでも戻りません。命を軽視する店長を擁護する人に
強烈な憤りを感じ、この様な脚本を書いて、世の中に誤った
認識をさせようとする吉田氏の気持ちが分かりません。
私は離婚した事がないので離婚した人の気持ちは分からない
ですが、再婚してお腹が大きい母親の姿も違和感を感じまし
た。
養育権や親権を放棄した母親が、我が子を亡くす葛藤も描か
れきれていません。
大切な人を亡くした事がない吉田氏が妄想で作っているんだ
ろうな、と思いました。
私は、離婚でない一人親の父親で娘を育ててきましたが、全
員がそうでないにしても、多くのひとり親の父親は、娘の事
を大切にしていると思っています。
私はGPS付きのキッズ携帯を持たせていました。
吉田氏の父子家庭に対する認識や表現方法には強烈な差別を
感じて絶句しました。
吉田氏は父子家庭のひとり親に何か恨みがあるのでしょうか
。
またパンフレットにシングルファーザーと表現がありました
が「シングルファーザー」は差別用語です。
看護婦さんが看護師になったのと同じに思います。
シングルファーザーという表現を使わないで頂きたいです。
パンフレットには「和気あいあい」とありましたが、この様
な映画を楽しく作っていたと思うと不快に思いますし「誰か
の死と折り合いを~」とありますが、大切な人を亡くした事
がないからこその妄想で、世の中に誤解を生じさせています
。
「~大っ嫌いな人に観るように勧めて~また違った楽しみ方
~」といえる吉田氏には理解に苦しみます。
「他人を認める想像力かな~寛容になる~」とパンフレット
の文章には締められていますが、この映画を見て「認める」
とか「寛容」という文字で最後を締めていて悲しくなりまし
た。
この映画を作った全ての関係者に言いたいですが、誰一人と
して映画を作成している最中に疑問を感じなかったのでしょ
うか。
出演者も含めて自画自賛している人が多いですが、それこそ
大切な人を亡くした人の気持ち「想像力」で考えて欲しいで
す。
映画倫理機構さんもPG12としていましたが、映画の内容に
踏み込んで、いくら表現の自由を主張されても、この映画で
傷つく人がいる事を考えて適切に審査して欲しかったと思い
ます。
吉田氏に言いたいのは30年近くボクシングをしていてボクシ
ング映画を作るのは結構ですが、誤解や偏見を世の中に広め
るような映画は、自主制作と自主公開でご自身のブレーンの
中でやって欲しいです。
妄想が得意ならば異世界転生ものならいいと思います。
配給会社さんも映画における社会的影響を考慮して、今後は
映画製作をしていただきたいです。
今年は名作が多い
2021年に公開した作品って、邦画洋画共に名作が多い気がします。そして、その名作の中にまた一つ作品が入りましたね。
冒頭から、古田さんの演技力に鷲掴みされながら、万引きした娘が事故に遭ってしまうショッキングなシーンまでの冒頭は素晴らしく、掴みはばっちりです。
そこからも人の醜さがそれぞれで溢れ出てて、後半から良い意味で見てられなくなってきます。
しかし、ラスト30分ぐらいから、古田さん演じる父が徐々に変わりつつあり、そこからの展開は涙モノです。
個人的にこの作品を見てて、1番の醜さを出してたのはマスコミと同僚の2人かな。
この2人が居なければ、この物語がどうなっていたのか。。。考えさせられます。
スターサンズの新たな名作誕生です。これは見るべき。
あと、一つ注意して欲しいのが、冒頭の娘が事故に遭うシーンなのですが、かなり生々しく、尚且つ、隠さず映るので、ショッキングなシーンになっております。気をつけてくださいね。
赦せる? 赦せない?
役者が皆、素晴らしかったです。
古田新太の演じる添田充を主人公としてみれば、
こんな世の中で、人を赦し、自分自身を赦せるか?
という真摯な問いに、今は出来ないけれど、
いつか出来るようになるのではないか?
という希望を持たせたエンディングでした。
それは、映画というジャンルで、他人(添田充)の
物語を眺めているだけだから、持ち得る感興なのかも
しれません。では、観客の一人ひとり、ぼくらは
どこまで、人を赦すことが出来るのだろうか?
という自問自答が、映画を観終わった瞬間から始まります。
“空白”とは、親子でも見えない互いの心の中
だけではなく、映画の中で描かれなかった場面、
青柳直人・店長が女子中学生・花音を別室に連れ込んでから、
花音が店外へ飛び出していった間の出来事でもありました。
寺島しのぶの演じるパート・草加部さんが身を張って、
青柳店長を誘惑するも、青柳は成熟した女性には
恐怖感・嫌悪感しか抱くことが出来ません。
青柳の最初の土下座は、父親・添田充にも
土下座返しされたように、通り一遍のパフォーマンスに
過ぎなかったのかもしれませんが、2度目の土下座は
本心からの改悛の念だったようです。皮肉にも
(幸いにも)添田に真意は伝わらなかったのですが。
青柳の2度目の土下座は、花音の遺品の鞄のマスコットに
触発されており、ドストエフスキーの『罪と罰』における
ラスコーリニコフの大地へのキスと同等。もしかすると、
青柳の自殺(未遂)も、『悪霊』のスタヴローギンと
同等の罪に由来することを暗示しているのかもしれません。
でも、そんなこと、映画では描けません。せっかく、
添田が新しく生き直そうとしているのに、水を差して
しまいますもの。では、観客のぼくらは、青柳を赦して
あげられるのかしら? 監督は、静かにそう問いかけて
きているような気がします。ネットでぼろくそに中傷され、
自殺しかけるまで追い詰められ、店も潰れてしまった
……それで十分ではないか、と寛容になれますか?と。
正直、十全な感動に浸るのを阻害してしまう
もやもや感を醸し出すだけの問いかけですが、
現実って、そうですよね。綺麗に、100%赦せる
なんて、言えっこない。だからこそ、時間はかかる
かもしれないけど、前を向いて生きていこうと試みる
訳で、花音の万引を看過してあげるのならば、青柳の性癖も
……いやいや、と屈託の残る罪な映画でありました。
世の中は答えの無いことばかり
万引きをした少女を追ったら
その子が車に跳ねられて
亡くなってしまう
そこから織りなす
決着のつかないお話
そうそう無い話だけど
よくありそうなお話でもある
そしてそこに絡む人の心情も
なんとなく汲み取れる
独りよがりで
自分以外に自分の感情を決着できない添田は
ずっと孤独なレールを進み続ける
レールだから曲がり角もないし
後退することもない
ただただ進むだけ
変わることはない
こんな人、こんな感情で他人と相対する人って
身近にたくさん存在する
善意の押し付けをしまくる
パートのオバさんも
まさにそう
物語には救いはない
原因はどうあれ
中学生が亡くなるというのは
そこで時が止まるだけに
そういうものだ
大きな展開もないし
大きな感動もない
それでも心の真ん中に
ドーンっと座る何かが
観る者の心を鷲掴みする
撮り方も上手
演者も上手
音楽もわとらしくない
つまらないコメディも入れない
平凡な話を、しっかりとした質まで仕上げた
吉田監督はすごい監督だ
こういう映画が普通にシネコンで観れたことは
奇跡に近いと思う
面白かった!
全てが、「あ、こんな人居そう」て思える感じが最高でした。
脚本は元より、演者さんの質が素晴らしい!
筆頭は古田新太さんですね。
粗野で自分の理屈で無理を通そうとする人物がドライバーの自殺とそれに伴う母親の態度から自分を顧みるまでの変遷を非常に滑らかに演じられている。
娘にとても愛情を抱いている様に見えないけど、死なれちゃうとそのやり切れなさに執着してしまう、その執着の仕方も間違ってはいるんだろうけど「そうなるよな、納得いく訳ないもんな」と思えるあたりがもう、なんていうか、胸が詰まるというか…
「娘は万引きなんかしない!そもそも化粧なんて興味ないんだから!」と言っていたけど「本当に娘のことを知っていたのか?」と問われ揺らいでしまうとことか、もう遅いんだけど理解しようと絵を描くシーンとか泣いちゃったね。
松坂桃李さんの当初良心の呵責を感じながらも「俺は悪いことはしてない」と思いつつ焼香に来たけど、遺族や報道等で追い詰められていくまでの人間の弱さとかも上手く表現できていた様に思う。
ボランティアの人が「正しいこと」と励ますんだけど、それによって余計苦しんじゃう、けど自分のことを思って言ってくれてるのは理解出来るから強く拒否できない弱さとかも「分かるわ〜…」てなる。
学校の先生が最後に絵を持ってきたシーンとかも「関わり合いになりたくないな、怒鳴られたりするんだろな…」と思ってたところから頭下げられて戸惑う感じとかリアルすぎるし。
結局は最後まで万引きしたのかどうかハッキリと証明出来ないから、皆んなモヤモヤ苦しみながらのエンディングでカタルシスなんか無いんだけど…あの終わり方しか無いよな〜て感じ。
「あんなに逃げるんだから万引きしたんだろ」とも思えるし「あの父親なら事実はどうあれ万引きの疑い持たれたりマニキュアに興味持ったことに対して怒りそうだから逃げただけかも。それぐらい萎縮してるよね。」とも思えるし…
途中までツラくて身悶えしたが、前向きに終わってホッとした
中学生の娘が万引で捕まりそうになって、逃げている最中に車にひかれて死んでしまう。冒頭から、やたらクマの深い娘と、陰鬱そうに働くスーパーの店長と、赤ら顔でキレまくっている威圧感満載の親父が、不穏な空気をムンムンに醸し出してくる。
早く事故後の話に行って欲しいと思いながら観ていたが、事故シーンの映像もショッキングで、その後の登場人物が怒りや悲しみで心の空白が広がっていく過程に心情をひきづられ、苦しかった。不安な感情でいっぱいになり、うなってしまうほどツラかった。
映画って、観る人の心の空白を埋めてくれるもんじゃないの?、なんて思ってた。
しかし、ラスト近く、父親演ずる古田新太の、誰かを責めることの呪縛から晴れて泣くシーンで、心がフワーッと軽くなった。古田新太カッコいいなあ、と思わず思ってしまった。
観ていた私の緊張も解けて、いい映画を観たなあと、心の空白も満たされたのでした。
娘があんな死に方をしたら私もあぁなるだろう
やり場のない怒り、苦しみ。
怒りの矛先を探す父親。
壊れていく店長。
受けてもらえない謝罪をすべてを抱え込んで死を選ぶしかなかった若い女性。
救いのないストーリー、観ていて辛い場面が続くので、
古田新太が、船に乗せてくれないならホストになるしかないという藤原季節に、それはまずいなと少し笑って手を差し出すシーンや、怒って帰ろうとする田畑智子に、俺が悪かったと謝るシーン。
交通警備員になった松坂桃李に、奥野瑛太がまた焼き鳥弁当作ってくださいと言うシーン。
そしてもちろん娘の絵に、じんと来る。
善意であっても、たとえそれが正しいのであっても言葉は人を傷つけてしまう。
そして言葉によって人は救われる。
(一番人を傷つけているのは、言葉を生業とするマスコミである)
登場人物みんながどんな性格か、出てきて直ぐ分かるように描かれていて、出演者みんなが適役好演。
主役の二人はもちろん、脇役を演じた方たちもそれぞれキャリアの代表作になるだろう。
印象のない女の子を印象なく演じて強く印象に残った。
鮎子ちゃんは上手い。いい女優さんになるだろうな。
父親って娘のこと何も知らないんだよ。
中盤までは凄く良かったが
古田新太はあの容姿と風貌、んでクセのあり過ぎな演技ゆえに脇役、悪役が多い。それが主演て、こいつは只事では無い映画だとは薄々感じてた。
予備情報持たず予告編での判断、娘が死んでその真相を探る...可哀想かつ良い父親として描かれ、俗に言うお涙頂戴の映画なのか?いや、見事にそこは強烈に裏切ってくれた。被害者の親でありながらまさに悪役、とことん古田新太らしい役だったw
周りの人間や設定、展開はごくありがちで、時に気持ち悪い程にリアルに描かれ、それを徐々に古田の行動がぶち壊し狂わせていく。恐るべき害虫役だ。しかしだ、終盤にむかい徐々に人間らしくなってく。映画的にはその方が落とし所なんだろうけど、いやいや最後までぶち壊し突っ切って欲しかった。これじゃあ、ありきたりだ。古田一人だけが最後まで浮き、周りが徐々に平和になって行くストーリーにして欲しかったな。泣くなよ、古田よ。
この監督の最高傑作は、ヒメアノ〜ルだと思う。あれを超える作品を観たい。
本作の途中、古田が良い人間になる寸前までは、まさにヒメアノ〜ルっぽい空気を感じたんだが、残念だ。
前半はただただ不愉快で、なんでこんな嫌な映画を見なきゃいけないん...
前半はただただ不愉快で、なんでこんな嫌な映画を見なきゃいけないんだろうと思ったけど、ラスト近くで昇華があって救われた。特に救いのないのが寺島しのぶによるフォロー。世の中ってこんなものかと呪うくらいの気持ち。古田も、娘へのパワハラが本当に頭にきてた。なんであんなに不機嫌なのか、人物像がちゃんと描かれていない。だから、後半の変化もよくわからない。いきなり絵を書き出すとか全くわからない。
松坂くんは、本当にこういう役が好きなんだなあというか、樹木希林みたいなもんで、人のズルさとか描くのが好きだ。
松坂くんだってトラウマを抱えているのに、事故現場の再現のシーンはあまりに暴力的で、古田の芝居がうまいとは思えない。
それでも、説明的ではない形で、一つの事件を巡る人々のありようを描いてるのが素晴らしい。自殺した娘さんのお母さんのシーンはとても良かった。
雲の絵も、
何を強いて、歪めたのか
古田新太って すごい!
古田新太 この人 凄いですよね?
モンスター化していく彼を見て 私も同じ立場だったら 全く同じ事をしてるかも?
だんだん 共感してきました。
何とも イライラさせられる位 気弱い青年を、どこまでも演じる松坂桃李
彼って もう ただのイケメン俳優 卒業ですね。
古田新太と ほぼ互角でした。
見た後は ズッシリ重い物を背負って 映画館から 出てきました。
怒りエネルギーの量
折り合い
気持ちの片付け
予告編から想像していた内容よりも救いのあるエンディング内容で良かったです。
印象に残ったシーンはいくつもありましたが、特にこぼれた食べ物を片付けるシーンは印象的でした。
青柳が弁当をぶちまけたあと、ちゃんとちり取りに片付けするところや、草加部さんがこぼれたカレーを泣きながら片付けするシーンは、どちらも収拾がつかなくてとっちらかった気持ちを自分なりに整理しているように見えました。
添田も娘の部屋を片付ける中で自らと向き合うことができはじめているようにみえました。マニキュアは捨てちゃたけど(笑)
どんなに辛くても、何とか少しずつ気持ち整理をして、折り合いをつけながら生きて行くしか無いんだと思わされました。
そして、そんな辛い中にも小さな喜びがあることも示してくれていたと思います。
誰かのせいにしたい人、できない人
もう、胸糞悪くて、胸締め付けられて見ていられない映画でした。
出てくる人がみんな不幸の連鎖に絡まってるんですよね。
添田父と花音も、青柳店長や日下部さんとそのボランティアの後輩も、過失事故を起こした女性とその母親も…。
誰かのせいにしたい人と、誰のせいにも出来ない人が渦巻く様は生々しく憂鬱な気持ちになってしまいます。
みんなもう少し、心に(衝撃を和らげる)バッファのような装置があればよかったのに。
添田父はもっと人ときちんと向き合ってれば、心にバッファを作れたんでしょう。
(あと個人的に)
「やきとり弁当、美味かったよ。ありがとう」
そんな小さな感謝で人にバッファを与えられるなら、常に周りの人に感謝の気持ちを伝えていこうと思った。
悪意モンスター(添田父)
善意モンスター(日下部さん)
民意モンスター(マスコミ)
もう、堪らなかったな…。
人物描写のリアリティ
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万引きで逃げた少女が道に飛び出したところトラックで死亡。それを目の前で見ていたスーパーの店長と娘が万引きしたと絶対に信じない父親とその周辺の人達を描く話。
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この映画とにかく人を描くのがうますぎる。登場人物達の行動は一見理解できないようで、もし自分がその立場だったらその行動をとるだろうなというリアリティ。私はこの映画の中にいくつもの自分を見つけてブスブス刺さった。
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自分がスーパーの店長の立場だったら、とにかく大人しくして謝って事が収まることを静かに待つだろうし、でもそれを傍から見てたら何で黙ってるだけなのって思うだろうし。そして父親の自分が1度こうだと言い切ったことを後から取り消す事が出来ないあの感じも分かる。
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1番共感出来たのは土下座は最大の防御という点。いくつかの作品で土下座をすることはプライドをへし折る最大の屈辱と描かれがちだけど、実際土下座で許してもらえるならいくらでもするよね。現実は土下座なんかしたって何もならないのにね。
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そして他人を変えられる/助けられる力なんて自分が思っている以上にないということ。自分のダメなところなんて自分が1番分かってるし、案外人は誰の助けも借りずに勝手に自分の問題と折り合いをつけて勝手に成長していくもの。
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今作でも、古田新太さん演じる充は自分に向けられたことではない言葉を自分のことだと勘違いするように、心のどこかで自分の行動の欺瞞を理解しているし、緑が娘を思って言った言葉から何かを受け取り娘と向き合っていく。
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松坂桃李さん演じる直人も、そこまで気遣ったわけでもなさそうだけれど暖かいある人の言葉に救われる。案外、その人のことを思って言った言葉ではなく、誰かが何気なく言った言葉に人は影響を受けるものなのよね。
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最後に、もちろんこの映画も登場人物たちの印象がコロコロ変わる『スリービルボード』方式。全然理解出来ないと思っていた人物も、次の場面ではめちゃくちゃ真っ当なことを言っていたりする。そしてその言葉は観客にもブスブス刺さる言葉。
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あんた、花音しかいなかったって言うけど、あの子の何知ってんの?好きな漫画は?好きな音楽は?
これでもかこれでもかと、被害者父・添田(古田)のモンスターぶりが暴走する。添田の元嫁(田畑)が嫌気がさして、「八つ当たりするのはもう止めたら?許せないのは自分自身のくせに。」と怒る。そうなのだろう。本当は、怒りは自分自身に向けているのだ。そこでふと振り返った。"善意の強要"をする草加部(寺島)は、たしかに青柳(松坂)の助けになってあげようと懸命なのだが、もしかしたらその行動も青柳のためなんじゃなくて、自己救済の行為なんじゃないかと。野木(藤原)が添田に懐くのも、そうなんじゃないだろうか。例えば海で死んだ父親に今更手助けをするような気持ちかもしれない。
この映画、怒りと贖罪の洪水に耐える2時間かと覚悟していた。しかし、あふれていたのは、“後悔"と"気付き"ばかりだった。その感情は"愛情"だ。それを最後の最後にも見せつけてくる。吉田監督は、「ヒメアノ~ル」では歪んだ愛、「愛しのアイリーン」では見返りを求めぬ母の偏愛、そしてこの映画でも、後悔したからこそ気付いた愛を表現してくれた。牙を収めてしょげかえった役者古田新太の姿が、哀れで、惨めで、悲しくて、そして、どこか立派だった。
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