「向き合うとは?」空白 ユウコさんの映画レビュー(感想・評価)
向き合うとは?
どの役の人も凄いです。いるいるこんな人という感じがすごい。リアル。
そして、みんなそれぞれ自分なりの正義がある。それが暴走気味の添田、それとクサカベさん。
とんでもない事故が起こり、当事者達は皆それぞれとてつもないショックを受けるが、それを受け止める間もなくマスコミが食いついてきて切り取られ編集され、それによってまた加害側も被害側も踊らされ傷つけあってしまう。
事故さえなければ気にもとめずに自分のやり方を押し通していた人たちが、いやでも向き合わざるを得なくなる。周囲に高圧的に振る舞うことで思うように操っていたと勘違いしていた添田(古田新太)は、娘との関係のまずさにやっと気づく。
なんに対しても無気力に逃げてきた青柳(松坂桃李)は、逃げることを許されない状況に放り込まれて、やっと葛藤を覚える。
担任教師(趣里)は怒鳴り込んできた親の言葉で、自身の指導が高圧的で一方的だったのでは?と悩み始めるが、それを偽善だと指摘される。
皆それぞれ、そのやり方で今までの人生に問題なかったはずなのに。
そして、事故を起こしてしまった若い女性(野村麻純が好演!)が謝罪を受け入れてもらえないことを苦に自殺してしまうが、その母は恨み言を言わず「心の弱い娘が責任から逃げて申し訳ない」と詫びる。この向き合い方が凄すぎる。そこからかたくなに自分自身にしがみついてきた添田に変化が表れるのだ。
登場は序盤だけだが、ちょっと足りない子なのかな?と思わせる伊東蒼の間の演技もすごい。そこにリアリティが感じられるだけに、たくさんのことを押し殺していた実は内面の豊かな女の子だったんだろうと提示されるラストは辛い。
さて、問題点が二つ。
事故直後の母親(田畑智子)もう今にも生まれそうなお腹なのに、納骨まで生まれてないのはおかしくないか?
言うなれば自己チューな生き方をしてきた添田や青柳が、それを見直したあとに小さいながらもご褒美を貰っているわけだが、正義を振りかざし押しつけてたクサカベさん(寺島しのぶ)は、職を失い生き甲斐のボランティアでも暴発してしまい、そのまま放置って、なんの罰ですかね。こういう女嫌うひと、多いの知ってますけど、なんだかなあ。残念ですわ