「他人の不幸は蜜の味」空白 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
他人の不幸は蜜の味
下衆な世の中だなぁと思う。
「捨てたもんじゃない」と言われてた世間は、こちらから切り離したいと思える事で溢れ返ってる。
マスコミの描き方に悪意さえ感じるも、実際やってる事はほぼ作中のままなのだろうなぁと思え、強烈な風刺を撒き散らす描写に笑いまで込み上げる始末。
事実よりも視聴率。
抜粋された時点で作為が介入し、その作為が悪意と同義なら、報道の公平性などある訳もなく、そのシステムにこそ放送倫理委員会は鉄槌を下すべきだろう。
血とかエロを取り締まるより、よほど日本の為になると思うがな。
そのマスコミに怒鳴り散らす父親の大喜利コラージュのシーンとか観てるだけで悍ましい。
イジメる側と同じ心理なのだろうか?「マヂになんなよ、冗談じゃん?」いやいや、マヂにもなるだろうが?人が死んでるんだぜ?誇大な空想とかではなく、リアルに起きそうな世の中に戦慄さえ覚える。
百歩譲って、それをやるのはいいよ。そういうモノに快楽を見出す生き物だよ、人間って。だけど、金に換算できてしまうシステムがあるから手に負えない。
他人の不幸は実際に「蜜」をもたらしてしまうのだ。
物語は誰にでも起きそうな話だった。
ストレスが豪雨のように降り注ぐ世の中。濡れた服が乾く暇もなく、寧ろ決壊し濁流の如き勢いに溺れそうな世の中だ。
登場する全ての人物がその豪雨の中にいる。客観視して見えてくるのは人から人へ伝播するって事だろうか。発信と受信を繰り返す。
受けたストレスを、言葉を変えて他人で発散する。
マスコミやSNSは、その標的を提供してるに過ぎないのであろう。たまにネットリテラシーが議題に上がる事もあるけれど、誹謗中傷の元ネタを全国にばら撒いてる機関が、どのツラ下げて語ってんだって事だよね。
「人の振り見て我が振り直せ」
昔の人はよく言ったもんだよ…。
マスゴミの連中は真摯に受け止めてほしいよね。無責任に垂れ流すんじゃなくてさ。
煽るだけ煽って、後は知らんぷりだもんな。
…マスゴミがばら撒く餌に毎回食いつく国民も、いい加減気づかないもんかね?馬鹿にされてるって。何の意義もないって。スポンサーのご機嫌取りに使われてるだけだって。
なんか今回のレビューはやたらに脱線するな。
対マスコミの話じゃないんだけどな…。
俺の日頃のストレスなのだろうなぁ。
映画の話をしよう。
とにかく今作はそんな浅ましい人間達が多く登場する。主人公2人も決して褒められた人間像ではない。
父親に至っては自分勝手も甚だしい。
俺も父親だから気持ちは分からなくもないけど、アレは言い訳でしかない。「俺はちゃんと娘を愛してた」そう言いたいが為に見える。
そう言いたい気持ちも分かるけど。
店長にしたって、アレではやましい事があると言ってるみたいなもんだ。実際のとこは分からないだけに。
…ああ、なんだろ?
映画の感想を書いてるのに、他人を批判してるように思えてきた。
それほど、等身大の人物達が生きていたという事なのだろう。「学校」って組織も随分と中身が変わったなあと思う。あの校長はだいぶやり手な校長なんだろうなぁ。きっちりクレーマーな父親を退けたもんな。
明確な怒りの矛先を与えただけではあるけれど。
…そういうツボを突いた演出もホント上手いっすわ。
題名にある「空白」
ずっと、何を指すのかなぁと考えながら見てはいたのだけれど、自殺した娘の母親が、無責任な娘を許してやってほしいと懇願する。
たぶん、それを聞いてる父親にはストレスの豪雨は降ってなかったのだろうと思う。そんな空白地帯の「空白」
それとも喪失感からくる「空白」なのだろうか。
怒りや攻撃、自衛や鎧。それらは全てその「空白」を埋めようとする行為だからなのだろうか。
それとも、そんな他人事に目の色変えて反応し、自分の人生に「空白」が増えていく様だろうか。
あまり観ていて楽しい作品ではないけれど、きっと見た方がいいと思う。ただ…後味はホントによろしくない。
寺島さんが担う「正しい事」の定義とか。
俳優陣は、陰惨な気持ちに苛まれながら仕事してたんだろうなぁ…皆様、良い仕事でした。
1つ疑問が残るとするなら、店長だ。
彼以外は、父親も含め1人ではなかった。父親なんかは酷いもんで、敵としてる店長にぶら下がる事で自我を保ててるように見えた。
店長だけだ。
進んで独りになろうとしていたのは。
なぜ監督は彼に依代を用意しなかったのだろう?