「まずワイドショーは観てはいけない」空白 tackさんの映画レビュー(感想・評価)
まずワイドショーは観てはいけない
スターサンズがまた社会派と聞いて、こりゃまた名作の予感と思い、早速見に行った。
今回は娘を失った、異常なほどに気が短く洗いおじさんがいかにその怒りをぶつけ、そして変わっていくか、が描かれていた。
冒頭のシーンがリアルで一気に心をつかまれたので、ストーリー的にもかなりの結末が待っているのでは、と思ったが、思ったほど後半伸びしろがなく終わった感じ。
勝手に期待した私が悪いが、なんかふわっと終わった感じがした。
あの添田というおじさんは本当に沸点が低く、正直見るに堪えない。
逆にスーパーアオヤギの店長は不器用で優しくて、一番かわいそうと思ってしまうが、やはり世辺りは下手。
いちばん胸が苦しいのは故意に轢いたわけではない加害者側になってしまった娘さんの母。片岡礼子さんが見事に演じていた。
しかし、あの添田というおっさんはあの片岡礼子さん演じる母のあの葬儀での一言で変わるのか、はなはだ疑問である。多分時間が経てばまた戻るのかもしれない。
絵が好きだったり、と意外な一面はあるものの、あの他人に対する常に八つ当たり気質は、私にとってはとても脅威で、ちょっと同情するには値しなかった。あのモンスターを演じた古田新太さんは凄い。
この作品、主要キャスト、みんな何かしらに行き詰って途中で他人に怒ったり怒鳴ったりのシーンがあるが、優しい人ほど怒りから覚めるのが早い、という事も描かれている。松坂桃李さん演じる店長はまさにそう。結局、優しさや怒りのバランスなのかな、と思ってしまう。しかしそれも環境や状況によって少しずつ変わるものかもしれない(一気には変わらないと添田のおっさんで示している)。
ただ、あのワイドショー。あれはやはり害悪である。もう結局この映画、ワイドショーの害悪さを語りたいのでは、と思った。これは昨今の日本における一番の社会問題でもあると思う。
コロナ禍になって如実に浮き彫りになっている。偏向報道。悪者を常に作りたがる報道。そして、あのワイプでしかめっ面をしてまっとうな人間を演じて見せるどこかの専門家だの評論家だの。
もちろん、一人一人が悪だとは思わないが、自分ならそれに加担していると思ったらあんな仕事やりたくない。
そして「私テレビなんか見ない」と言いながらネットのニュースに誰かを中傷している傍観者。結局はそのニュースの根源はワイドショーであることが多い。
もうこの映画を観たらワイドショーなんか観るのやめてほしい。百害あって一利なし、とまで言わんでも90害くらいで占められているのがワイドショー。最近は番組内容を見るだけでも吐き気がする。
後半はワイドショーへの怒りが出てしまったが、これも私の誰かを悪者にしたいという悪い部分が出たのかもしれない。もう何が正しいのかわからない。でもワイドショーは観ない方がいい。