劇場公開日 2021年9月23日

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「【「空白」の意味】」空白 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0【「空白」の意味】

2021年9月25日
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取り返しのつかないところまで行きつかないとダメな人って結構いるなと常々思っているのだけれど、改めて映画作品として見ると、悲哀というか、悲しい気持ちになる。

この映画の救いは、花音を最初に車でひいてしまった女性の母親と、添田の船で働く野木、花音の母親の存在なのだが、それでも、このハッピーエンドになろうはずもないストーリーを考えると、辛くなってしまう。

この映画タイトルの意味はなんだろうか。

映画のストーリーの中で言えば、スーパーの事務所での短時間に、青柳と花音に何があったのか。

どんな会話があったのか。

あれだけ、必死で追いかけなくてはならない理由が隠されているのかだ。

映画を見る限りは、青柳が花音の腕を強く引いたから道路の反対側に飛び出して逃げようとしたように見えた。

これは、青柳が添田にしていた説明とは食い違うのではないのか。

また、この作品に登場する人物達の間にある隙間、つまり、相手を理解しようとしないことによって生まれる縮まることのない距離感も、埋める合わせることの出来ない空白みたいなものかもしれない。

自分の善意だけ押しつけ、周りから人が去ってしまう虚無感も空白なのかもしれない。

教師や学校と花音、

教師達、

添田と元妻、

そして、

添田と花音にも決して埋められない空白のようなものはある。

だが、本当の空白は、自分自身と向き合わないことによって生まれる、人間らしい感情の不在なのではないのか。

元妻の幸せを羨ましく感じたと正直に認める気持ち。

花音は万引きしていたに違いないが、それは何故かと考えようとする気持ち。

加害者の自殺と残された母親の悲しみに向き合おうとする気持ち。

野木を認めたい気持ちなど…。

実は、こうしたことが本当は大切なのではないのか、空白を埋め合わせることは出来なくても、空白のヒントにはなるのではないのか。

添田と花音のイルカの雲が救いになれば良い。

この映画のストーリーは、ある意味、あれこれ考えずに、エンパシーを抱くことなくやり過ごせるのが一番良いと考えている僕達の世界のようでもある。

ワンコ
ちいかぶさんのコメント
2024年6月22日

このレビュー、本当に素晴らしい。
もやもやしていた気持ちが一気にすっきりしました。

ちいかぶ
あささんのコメント
2021年9月29日

映画のタイトルの意味、分からなかったんです。でもワンコさんのレビューを読んで納得しました!

あさ
NOBUさんのコメント
2021年9月26日

今晩は
 ジム・ジャームッシュの件です。
 イロイロ、ありがとうございました。
 昨日、レトロスペクティブのフライヤーを手に入れました。
 10月は(も)有難い事に忙しいので、緊急事態宣言が解除されたとしてもどれだけ、名古屋のど真ん中にあるセンチュリーシネマに行けるか分かりませんが、僕はポスターが欲しいです。
 1.「ストレンジャー・ザン・パラダイス」
 2.「ナイト・オン・ザ・プラネット」ですね。
 「パターソン」は、ゴルシフテ・ファラハニが好きなので強引に(ではなく
って穏便に・・)頂きました・・・。では。

NOBU