「空に白」空白 nakadakanさんの映画レビュー(感想・評価)
空に白
女子中学生の事故死に関わる登場人物たちが、それぞれにとにかくやるせないです。
シニカルなブラックユーモアのテイストも少々交えながら、ワイドショーやSNSの無神経なハイエナぶりにも触れつつ、各々の行動や表情を丁寧に追いかけてゆき、モヤモヤしながら色々な立場で考えさせられます。
テレビでもSNSでもリアルでも、外野からの勝手な正義感の押し付けが恐ろしいというのは、はっきり伝わりましたが。
やるせないながらも、怒り一色だった父親が、加害者の母親との会話を切っ掛けに、周囲や自分にきちんと向き合おうと変化してゆく様子には胸を打たれます。
父親とスーパー店長それぞれ、努力や思いがわずかながらも報われるような、ささやかながらも救いや希望を感じさせるラストは、目頭が熱くなってしまいました。
個人的には、自己主張が苦手で自己肯定感が低い店長が、自分を肯定出来るような最後に、本当にグッときました。
これは、女子中学生の人物像とも重なる気がします。
役者陣の演技も素晴らしく、古田新太の粗暴さは安定の迫力で、変化してゆく佇まいも良いです。
松坂桃李も、覇気のなさの奥に様々な感情を覗かせる、絶妙な演技です。
やはり弁当のくだりは、色々な意味でインパクトのあるシーンでした。
怒りや苛立ちや絶望に、善良さや滑稽さに、最後は希望も感じさせるという。
タイトルの「空白」というのは、事件などでよく言われる空白の〇分間みたいな感じで、事故の前に実際に何があったのか分からない部分のことかなと思いました。
また、実際に何を考えているのか分からない他者の心のことかなとも。
実際のことは本人しか分からないですし、分からないなりにその空白にどう向き合うのか。
勝手な思い込みで見るのではなく、対話をしたり理解しようと努力したり、そういう姿勢が大切なのかと。
あと、ラストの青い「空」に「白」い雲で、希望も示しているのかなという気もします。