「伝染する苦悩と頭を下げる意味」空白 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
伝染する苦悩と頭を下げる意味
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はじまりは万引き未遂事件だった。
娘を亡くした父親の狂気と破壊、そして再生の物語。
ひとつの女子中学生の死によって、皆が傷つき、苦しみ、憎み、そして寄り添う。
彼らの心の空白は埋まるのか。それとも…
辛く苦しい中に少しでも希望を見出せる、とても自分好みな傑作でした。
前半はとにかく辛い。
一度轢かれたあと反対車線のトラックに轢かれるという、やけにリアルな事故シーンがトラウマレベル。
その後に、頭が潰れたとか内臓飛び出たとか、言葉で聞くだけでも辛い。
加熱する偏向報道、ネットの憶測。
本当にマスゴミ過ぎてもう。
なんというか、すごくリアル。
〇〇をよく知る〇〇の知人ってよくあるけど、信じちゃいけないね。
誰も悪くないし、誰もが罪を抱える。
進めば進むほど自分の首を絞めるように苦しくなって…
そして、後半。
謝罪と感謝。
次第に世間の関心は薄れていき、当事者の心も落ち着いてくる。
キャンバスに筆を当てる音、夕凪の海辺、優しさに包まれるラスト。
何度も何度も泣いてしまった。
レクイエムのような音楽にエンドロールの文字が滲んでいた。
信じたくない、許せない、疑念は晴れない。
でも、俺はあんたに謝ってない。
今は謝れないが、少し時間をくれ。
誰しもどこかしら共感できるところがあると思う。
ああいう父親やああいう雰囲気の家族も相当数いると思う。
少女の死亡事故という非現実的なことが起きた時、“普通”の人たちはどうなってしまうのか。
現れる本性と最後に包み込む優しさ。
きっとまだこの世界は美しく優しい。
あの日、心は繋がっていなくとも、同じ空を見ていた。
あのイルカ雲の空を。
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