「才能の錆びつきこそが本当の恐怖」樹海村 MADAKIさんの映画レビュー(感想・評価)
才能の錆びつきこそが本当の恐怖
正直、AmazonPrimeでこれを見たとき驚いた。監督が清水崇だったからだ。個人的にJホラーの最高傑作だと思っている「輪廻」は、怖すぎて二度と見返したくないほどのクオリティだったし、あまり好きではないけれども、「関係者全員○す」でお馴染み「呪怨」シリーズも楽しませてもらった。その監督の最新作として見てみたらこれだよ。色々言いたいことだらけだが、とりあえず以下2点だけ指摘したい。
■ 隠しきれない時代遅れ感:令和の世にステレオタイプな樹海絡みの都市伝説やら、古典に属する洒落怖に題を取る時代錯誤感について、誰も何も言ってくれなかったのだろうか。「樹海ではGPSも磁石も使えない」って、ずっと前に否定されているオカルトネタのはずだけど、冒頭のYouTuberによる配信動画で「ほーら怖いだろー」とばかりにその演出をぶっこんでくる。
そもそも件の配信シーンといい、オカルトマニアのオフ会といい、Vtuberの解説動画といい、オッサンがなんとか若い人たちについていこうとしてついていけない感が満載。見てるこっちが恥ずかしくなる。ネットで少し探せば、もう少しインスピレーションを得られる話なんていくらでも転がっていると思うのだけど、令和に樹海で方位磁針が狂うネタ、コトリバコ、本当に必要でしたか?
■ 点でしか描写できない脚本のまずさ:とかく徹頭徹尾、脚本が拙劣にすぎる。ある出来事の始点(ゼロ)と終点(イチ)しか描けず、その間の0.4とか0.7を書か(け)ないので、「え、いつの間にこうなってんの?」「何か見落とした?」の連続である。いつの間にかヒロインの兄の結婚相手は怪我をして流産しているし、いつの間にかヒロインはネットのオカルト仲間と樹海探検に出かけているし(誰か止めろ)、いつの間にかコトリバコを祓おうとした寺は燃えている。怖い怖くない以前に何がどうなっているか理解に脳のリソースを持っていかれる。
輪廻を作った監督が堂々世に送り出した作品がこれかよ。すぐれた才能も錆びついて使い物にならなくなる。今年一番のホラーだ。