「呪いも都市伝説怪談も母姉妹悲話も、樹の海の中に」樹海村 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
呪いも都市伝説怪談も母姉妹悲話も、樹の海の中に
『犬鳴村』に続く、清水崇監督による“実録!恐怖の村”シリーズ第2弾。
今回、足を踏み入れてしまったのは…
曰く付きも曰く付き…。
日本で最も有名な自殺の名所…。
富士の樹海…!
…アレ? 富士の樹海に村なんてあったっけ??
それはともかく、題材的には前作『犬鳴村』よりそそられる。近年のJホラーの中でも面白そう。
やはり、富士の樹海には何かある…。
13年前に母親を亡くし、祖母と暮らす鳴と響の姉妹。快活な姉・鳴に対し、妹の響は根暗で昔から変わった性格。鳴はそんな妹を疎ましく思っていた。
姉妹の友人の引っ越しの手伝いで、家の下から不気味な箱を発見。
それは、“その箱が置かれた家は家系が死に絶える”と言われる呪われた箱“コトリバコ”。
あまりの恐ろしさから富士の樹海奥深くに封印された筈だったのだったが…。
再び解かれし呪いのパワー!
触れただけで呪いが襲い掛かる。
箱を引き取ると言った男性がいきなりトラックに跳ねられる。
医師やYouTuber仲間や馴染み薄い周りにも。
呪いにより、友人が一人一人、祖母までも変死怪死。
初めて箱を見た時から戦いていた響。箱を焼却しようとするが、それが原因で友人の自宅寺を焼失させてしまい、精神異常で入院させられてしまう。
止まらぬ負の連鎖…。
たった独りになってしまった鳴。
そんな時ヒントになったのが、戯言と思っていた響の言葉。
“その昔、女の人が子供の命を救う為に箱を捨てに樹海に入って行った”
そして思い出す。
13年前、自分がしてしまった過ちを。13年前、封印を解いてしまったのは…。
そしてその時、我が身を犠牲にして自分たち姉妹を救ってくれたのは…。
清水ホラーの定番。本作では、山田杏奈と山口まゆの美少女2人のWヒロインで、熱演。
回想シーン他で登場する姉妹の母親役の安達祐実も印象的。
開幕の國村隼、山下リオを拉致って食べるのかなって思ったら、某映画とは全然違ったね。
にしても、落下してきた塚地と衝突して死ぬのはヤだなぁ…。
映画やTVなどで取り上げられる樹海のイメージと、実際の樹海は全然違うのは知れ渡ってきている。
“自殺の名所”と言うのは映画やTVなどでそう描いたから。
ピクニック・コースとしても人気で、そうそう道に迷う事も無いという。
ここでしか見られない動植物も沢山。
そして勿論、草木が生い茂り、日本でも有数と言ってもいい“魔境”。恐怖の雰囲気すら盛り上げてくれる。
これまた清水ホラーの定番。入りはバッチグー。
呪いの箱や富士の樹海など不穏なムード充分。
富士の樹海に村?…と思ったが、
“自殺をしようと樹海に入って死にきれなかった人々が集まって出来た村がある”という都市伝説がベース。
昔の人々にとって、樹海は神の森。その森へ生きた人間を捧げる。
生け贄…だが、都合のいい口減らし。
そこに、姉妹と母親の悲しいドラマ。
おっ、今回の清水ホラーはいいぞ!
…だけど、嗚呼、惜しい!
ラスト30分…。
いつもみたいなグダグダ支離滅裂展開ではないけれど、村にチープなメイクした亡者たち現れて、急に正統派だったホラーがB級テイストのホラー&ダーク・ファンタジーに。
それに、今回は“恐怖の村”というより“恐怖の箱”って気が…?
一応最後は姉妹愛も描いているけど、何だか、嗚呼惜しい!
やっぱり最後はいつもの清水ホラー。
もう呪いの箱の封印は解いてならぬ。
でもそれ以上に、悲しい母姉妹の話は静かに眠らせて上げよう。
この全てを呑み込むような樹の海の中に。
今回もまた賛否の声激しいが(いや、圧倒的に否の声か)、個人的には『犬鳴村』より良かった。
そしてまた、次の“恐怖の村”に足を踏み入れてみたくなってしまうのだ。