「姿の見えない相手の本心は彼女には透けて見える。」透明人間 レプリカントさんの映画レビュー(感想・評価)
姿の見えない相手の本心は彼女には透けて見える。
正体不明の相手に主人公が追い詰められてゆきながらも、徐々に相手の正体を暴いてゆくというのはサスペンスの王道。そんなサスペンスの王道とまさに文字通り正体不明の透明人間という古典的題材を組み合わせた本作。
透明人間といえばバーホーベンのインビジブルが記憶に新しいが、かの作品は最新CG技術を駆使し、見えないはずの透明人間をあらゆる手法で視覚化した点で見ごたえのあるエンタメ作品に仕上がっていた。特に透明になる過程を描いた点は斬新だったが、皮肉にもバーホーベンがハリウッドを去るきっかけとなった作品でもある。
本作はそれとは対照的に透明人間を古典的な手法で描いており、見えない相手に主人公がじわじわと精神的に追い詰められてゆく様を、まさに見えない存在としての透明人間を活用して王道のサスペンスに仕上げている。
果たして姿が見えないのか、あるいは本当は存在してないのか、起こっている現象はすべて主人公の妄想によるものなのか。中盤辺りまで観ている観客にもわからないように作られていて、サイコサスペンスとして見事なつくりになっている。このやり方なら最後の落ちで全部主人公の妄想だったというパターンもなくはないだろうが、後半はやはりハリウッド映画らしくエンタメ的な盛り上りとなる。
このてのハリウッド製サスペンスは中盤までは悪役は極めて狡猾に主人公を心理的に追い詰めてゆきながら、後半途端に力業に転ずるというのもいつものパターンといえる。
それにしてもただでさえ質の悪いDV 男に最新テクノロジーが加われば、それはまさに最恐のストーカーとなり、被害者としてはたまったものではない。なおかつ精神的支配下においた身内まで利用するほどの徹底ぶり。
そんな最恐ストーカーにじわじわ追い詰められてゆく主人公を主演のモスが見事に演じていた。