劇場公開日 2020年7月10日

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「「ガス燈」とセットで」透明人間 ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0「ガス燈」とセットで

2020年7月24日
iPhoneアプリから投稿

面白かった。
透明人間のアイデアや場面ごとの演出などは素晴らしいと思う。ただ、どこか食い足りなさが残る

まずヒロインが男から逃げ出すところから始まるので、2人の生活の内実はヒロインの言動から想像するしかない
また男がなぜここまでヒロインに固執するのかも、愛または執着心という動機づけしかなさそうなので、観客が想像で埋めるしかない
「女優霊」を観た時、いつの間にか画面の変な隙間を恐れるよう調教されていたことに気づいたが、本作にはそこまでのタメがなかったのが残念だった。まあ心霊じゃない、実在の人間なんだから仕方ないんですけど

参考作品として1944年版の「ガス燈」を観たところ、モラハラ男に洗脳されていくヒロインの心の動きが丁寧に描かれていて、あたかも「透明人間」の前日譚のようだった
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本作では男がなぜそこまでヒロインに固執するかの動機づけは明確に示されず、単なる愛または執着心として男の異常性を示す要素のひとつとして受け止めるしかない
ただヒロインの容姿や女性的魅力をあげつらうような無神経な言動こそが、彼女を追い詰めた無理解な世間と地続きのものであるのは間違いないと思う
高齢の女性が性的な被害を訴えても、そんなことはあり得ないと否認するような反応は現実にあるし、他人を雑なレッテルで断罪しても許されると考えるような無自覚な特権意識こそが、こういうモラハラを世にのさばらせている

ipxqi