劇場公開日 2022年2月4日

「これもまた円谷特撮の文化を受け継ぐ一本。喜劇要素は不発気味」大怪獣のあとしまつ 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5これもまた円谷特撮の文化を受け継ぐ一本。喜劇要素は不発気味

2022年12月31日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

「ゴジラ」やテレビの「ウルトラ」シリーズの特撮に携わった円谷英二の影響を受け、その文化を受け継ぐ作品群の中に、本作も加えられるだろう。

ただし、巨大な怪獣が登場する特撮物のお約束であり目玉にもなるはずの、大怪獣の闘い(相手は人類だったり、別の怪獣だったり、異星人のヒーローだったり)が一切ない。その代わりに描かれるのは、タイトルの通り、日本に出現しなぜか突然死した巨大怪獣の死骸の後処理に直面した人々の悪戦苦闘ぶりだ。これをメインに持ってくるとは盲点だったというか、コロンブスの卵的な発想と言えるのではないか。

ゴジラが空襲や原爆のメタファーだったように、本作の“大怪獣”も巨大地震や原発事故の暗喩になっている。閣僚たちの諍いや責任の押し付け合いも、日本の政治の現実をシニカルに表現しており、苦い笑いを誘う。

三木聡監督は「図鑑に載ってない虫」や「インスタント沼」など、とぼけた味わいのコメディが得意という印象。ただし今作では、政治家や公務員のキャラクターたちのシリアスな側面と、彼らの台詞や動きで表現するユーモラスな面の食い合わせが悪かったか。ジョークが上滑りしているようで、不発気味だった。

高森 郁哉