「らしくてっぽい映画【最後のオチまでネタバレあり】」大怪獣のあとしまつ よっちゃんイカさんの映画レビュー(感想・評価)
らしくてっぽい映画【最後のオチまでネタバレあり】
公開初日にクソ映画がトレンド入りするなどある意味伝説級のこの映画。
予告編を見た段階では面白そうな映画だなと監督の名前も見ずに思っていた。
大怪獣のあとしまつを描いた作品として思い浮かぶのはなんといっても「空想科学読本」だろう。
子供の頃ゲラゲラ笑いながら読んだことを覚えてる。
だからこそ今回の映画は空想科学読本の実写化のようでとても楽しみだった。(この映画は空想科学読本の柳田先生とは一切関係ないと一応言っときます)
だからこそ公開初日にTwitterでクソ映画との評判を見た時は驚いたし逆に楽しみになった。
まず最初に言うと役者さんの演技で下手くそな人はいなかった。
山田さんもハガレンの時も思ったが作品に恵まれないだけで演技力は着実に上がっていって暗殺教室とは完全に別の人。
他の皆さんもさすがのベテラン勢が集められていたので演技は本当に完璧だった。
悪いのは全て製作陣、それも上の方の人間である。
細かく追っていく前にまず思うのは方向性がぶれぶれな所。
いや、ギャグ映画を目指していたのだろうことはなんとなくわかる。
わかるのだがそこにシンゴジラのパロディ的なことを入れようとしたせいでシンゴジラ路線で行きたいのか現実離れしたぶっ飛んだギャグ映画路線で行きたいのかわからない。
そもそも宣伝も本格特撮映画でその中にエッセンスとして時折シリアスな笑いが入る映画というような印象を受けて逆効果。
これで実はギャグ映画だったんですとネタ明かしされても観客は不満轟々だろう。
そもそもシンゴジラがあれだけ売れたのは余計な人間関係を描かず目の前の困難に実際の政府はどう立ち向かうのかというようなシミュレーション映画が受けたわけであり、この映画はシンゴジラっぽい雰囲気を出しつつ余計な人間関係、変に叙情的なセリフ、リアリティのない描写、なんの科学的根拠もない作戦立案etc・・・
この映画を「シンゴジラやパシリムが捨てた部分を集めて作った出来損ないのキメラ」と評した人がいたそうだが誠に的をいていて秀逸な表現であろう。
冒頭主人公たちのクラス会から始まるのだが黒板に書かれてる文字を見てまず目を疑う。
「出征」と書かれているのだ。
いつから日本って徴兵制になったの??
しかも大怪獣が出たのは最近のことでそれに対応するために国防軍が作られたわけではないらしい。
って事は怪獣とか何もない状態で軍を復活させたの?
まだそれはいいとして、軍が復活=徴兵制ってどういう事?
と色々この2文字だけで頭の中がぐるぐるとかき乱され考えさせられる。
結論からしたら怪獣退治をするために徴兵制で若者たちを駆り出したそうである。
え、政府酷くない??
まあそれは物語の中の世界だから良い。
いちいちこんなことに突っ込んでたら本当に身がもたない。
さてここら辺からアラタが大怪獣のあとしまつに駆り出されて物語が動き出すがここからちょっとしんどくなってくる。
言ってることの意味がわからないのだ。
なんか専門用語っぽい事を言ってるがそれがつまりどういう事なのかがわからない。
シンゴジラは専門用語を多用してかなり難解だが不思議と言ってる台詞のなんとなくの意味はわかるようにできていた、というか専門用語を聞くだけで謎にワクワクした。
そういう気分を作れなかったのも痛い。
そして場面は総理大臣の部屋に移り閣議の席へと移動する。
そして総理大臣が開口一番こういう「そんならしい服着ちゃって」。
ここで僕は「おっ」と思う。
こういう笑いは良いのではないか。
しかし、その後大臣たちが口々になんか言って(解読不能)総理が「うるさい!」と一喝して終わる。
???
せっかく良かったのにその後の描写が余計な気がする。
こういう余計なことが本当に多い。
会議での大臣の会話も責任のなすりつけあい(怪獣は何ゴミか?)のところは面白そうだなと思うもののすぐ大臣たちが口々になんか言うオチになってしまう。
面白くなりそうっ!ってところで一番美味しい部分をお預けされてしまうような感覚。
本当にガックリ。
っていうか怪獣の写真くらい特務隊が写真撮って送っとけよ!!
あと、大臣の中で1人よくわからない例えボケをする人がいるのだが全てのボケが滑ってた。
そのよくわからない例えが出てくるたびにせっかく盛り上がってたものがガクッと下がってしまうので本当に勿体無い。
さらにそのギャグ大丈夫かというのが入っててヒヤヒヤしたというか外国でこれ流せないだろう。少なくとも例の国では絶対放映されないだろうな。
さらにいうと、この映画にはリアリティが無い。
例を挙げると科学と戦闘のプロフェッショナルであるはずの特務隊が怪獣の死体に防護服もなく近づき膿を突っついて謎の液体を浴びるのだ。
いや、未知の生物なんでしょ!?!?!?!?
環境大臣がパフォーマンスのために怪獣の上に上がるのがことの重大さをいまいち理解できない首脳部というのを表現するギャグなのはわかるけど特務隊がそんなヘマやっちゃったらダメじゃない!?
挙句の果てにはその液体をシャワーで洗って「くっさ」で済ますという暴挙。
いやいや未知のウイルスあるかもしれんから。
普通に考えたら隔離されて検査でしょ。
他にも終盤案の定というかなんというか未知のウイルスで謎のキノコが生えてくる現象が確認(ここの下ネタも酷かった)され、ユキノが環境大臣の首にキノコを見つけるのだが、そのキノコをちぎって知らぬふりでおしまい。
いやいやいや。
ちゃんと報告して入院させようよ。
じゃないと死ぬかもしれないんだよ???
こういうところのリアリティはギャグ映画路線に行くにしろ、シンゴジラ路線に行くにしろ必要な事だと思いますよ。
他にもユキノが立案したダム爆破怪獣洗い流し作戦を実行する際、環境大臣がダム爆破の許可をとりに国交大臣のところに行くものの断られた後、実はあのダムは環境省管轄のものでしたっていうのも「いや、最初から把握しとけよ!!」と思った。(もしかしたら本当にそういうギャグだったのか??????)
そしてリアリティ以前の脚本の欠陥も。
まず最初に実行される冷凍保存作戦。
これが立案され国防軍が指揮を取りますと言って作戦概要を説明したらいきなり作戦実行中のトラブル発生のシーンまで飛ぶのだ。
いやいやこういうのは最初始めた時は順調だったけど途中新たなトラブルが発生して〜っていうのが普通の映画だと思うのだが。
主人公側が立案した作戦じゃないからって扱いが酷すぎやしませんか。
さらに濱田岳さん演じる雨音の立ち位置が最後まで観客によくわからないのも消化不良。
ミステリアスなキャラとして確立されてるわけではなく、かと言って全て観客に納得させるほどの描写も無く。
実は細部の設定が練られてないのでは?と思ったり。
そう思う理由は他にある。
特務隊の研究員らしき人が他の人物に情報を流してるシーンがあるのだがその描写自体はまあ良い。
問題はその行為が行われてる部屋だ。
モルモットが入ってるカゴがいっぱいあってそれが怪しく照らされてるのだが何に使う部屋なのかが全くわからないのだ。
“らしい”だけでその中身がスッカスカなのが丸わかり。
意味ありげにモルモットが映されてたけど絶対あれいらないよね。
あれがなかったらまだなんかそういう部屋で納得できたけどあのカットが入ったことによって余計な情報が足されて余計にこんがらがったよね。
そして、賛否両論溢れるラストのオチ。
オチの光の巨人が怪獣を宇宙に連れていくのは「空想科学読本」自体でもあったネタなので個人的には納得できた。
さらに、他の方のレビューから察するに唐突にその設定が出てきたのかな?と思ってたら意外と伏線が張られていてそこは好印象。
ただ、どうせならウルト○マンもどきの造形も見たかった。
まあ人間は大怪獣を前にすると後始末することすらできない無力な存在なんだぞとわからせたかったんですかね。
そういう意味ではシンゴジラよりもリアルなのかもしれませんな。
最後の続編宣言はネタですよね??
ね????(圧)
庵野監督、「シン・大怪獣のあとしまつ」作ってくれないかな。
最低限全体の科学監修をどなたかにお願いした方が良いのでは。
【どうでもいいこと】
僕が見に行った日に山崎貴監督が大作怪獣映画を東宝で撮ることが発表されたけどこの映画に対する当てつけみたいなタイミングになっててむちゃくちゃ笑ってしまった。