「お話はつまらない。コメディと思えば観られなくもない」大怪獣のあとしまつ 福島健太さんの映画レビュー(感想・評価)
お話はつまらない。コメディと思えば観られなくもない
最初に気になるのは、結局人間は怪獣のあとしまつをしようとするだけでしていないことです。
この映画の主題は「ウルトラマンなどのヒーローに倒された怪獣のその後にフォーカスする」ってことでしょう?
結末が未知のヒーローによって怪獣が地球の外へ運び去られるのでは、ウルトラマンが怪獣を倒してすぐに死がいを持ち去るのと変わらないじゃないか。
そもそも、そんなことなら初代ウルトラマンの時代に科学特捜隊が怪獣(シーボーズ)をロケットで宇宙に帰すという試みをして、ウルトラマンの協力のもと成功させています。
八つ裂き光輪でバラバラ死体になった怪獣の死がいのうち、(死がいの全部ではないものの)頭部をウルトラマンが持ち去ることも複数回過去にありました。
版権の都合もあるだろうし、映画の劇中で直接的にウルトラマンを登場させることはできないとしても、光に飲み込まれて未知の力を手に入れた主人公なんていうのはビートルで飛んでいるところをウルトラマンの光の球と衝突したハヤタ隊員がウルトラマンの命を分け与えられて変身能力を手に入れるのと同じでしょう?
そして、結局最後はスマホだか変身アイテムだか知れない何かを掲げて、デウスなんとかって呪文を唱えるとウルトラマン的な何かに変身できるとか、そのまま光とともに怪獣は宇宙へ運び去られるとか、単純にウルトラマンが怪獣を倒した後死がいを放置して、後から変身して持ち去っただけじゃない。
結局のところ、人間はバタバタしただけで結局何もできなかったし、人間的には後始末していませんよね?
怪獣が倒された後、「結局何もできません」が制作者の言いたいことですか?
次に気になるのは、怪獣の死がいは2年間放置されていたんですか?
その間何も問題を起こさなかったのに、映画の場面の時間軸になって状況が急展開したのですか?
だってそうでしょう?
怪獣は突然現れた未知の光に包まれた後、光が消え去った後には死んでいた。
そして主人公の人は突然現れた光が消え去った後に姿を消して2年間消息を経っていた。
つまり、怪獣が死んだときに主人公も消えて、主人公が戻ってくるまでの2年間怪獣の死がいは残っていたのでしょう?
その2年間、2回の夏の高温多湿にさらされて怪獣は腐らなかったの?
死がいに危険性がないとわかった途端に死がいを欲しがった外国は、2年間なんら危害を及ぼさなかった怪獣の死がいをそれまで欲しがらなかった?
わずかな時間で人間を全身キノコまみれにする驚異の成長速度を持つ菌糸は2年間キノコを発生させなかった?
主人公が消息を絶った空白の2年間は、怪獣の影響も外国の影響も全部都合良く空白にしてしまったようです。
それでいて、避難区域に指定されて住む家を追われた食堂の従業員はお店の仕事に慣れた感じで、「私、2年くらい働いてます」というようにも見えます。
2年間があまりに謎というか、2年間の設定が全然作り込まれていない気がします。
それから、これはどうでもいいのだけど、主人公が変身するときに唱えた言葉は、首相のデスクのメモに書かれていたはずだけど、なぜ?
ウルトラマンは、実際に接触してウルトラマンのことを知っているハヤタ隊員が「ウルトラマン」と読んだことで正しい名前が人間に伝わりました。
でも、全く関係のない場所で同じ言葉が発生するのは謎だと思うのです。
なぜ?
お話としては「わけわからん」が率直な感想で、最初から変身して宇宙へ持っていってくれればいいじゃないかと思いますが、環境大臣が転落して腐肉に埋もれたり、ゲロのようなウンチのようなニオイを少しでもイメージを良くしようと銀杏のニオイにしたり、オタオタするばかりの首相とか、内閣の人々を見て笑うコメディと思えば観られなくはないです。
面白い映画だとは思いませんでしたし、他人には勧めません。