「下北沢あたりの小劇場でお馴染みの劇団のお芝居として観たら楽しく笑えたのかも知れない。」大怪獣のあとしまつ jsさんの映画レビュー(感想・評価)
下北沢あたりの小劇場でお馴染みの劇団のお芝居として観たら楽しく笑えたのかも知れない。
さて、駆除した怪獣の死体処理にまつわるコメディというとそれなりのリアリティの元に描かれる政治的なドタバタ劇と想像される訳ですがどうやらちょっと違う。特務隊とか国防軍とか現実からずらした架空の名称になっているのは怪獣映画ではよくあることだが、この映画におけるリアリティのレベルが見えてくるのにかなりの時間を要する。どこに連れて行かれるのか分からないミステリートレイン状態で映画は進むがそれがどうにも乗り心地がよくない。
どうやらこの作品は怪獣の死体をめぐるシチュエーションコメディであり、それ以上のことは特に求めていないように思われる。腐敗ガスの拡散や予定通りに進まないダム爆破など危機的状況が何度か登場するが、それは笑いを生み出すシチュエーションを作り出すためのものであって、実は具体的に何がどうなっているのかはあまりよく分からない。
ミステリートレインは展開のポイントで必ず外す方向に進み、おそらく目的地というものは存在しない。そういう意味では納得のラストである。そしてそこから生み出される笑いであるが、今笑えることやってますよ面白いでしょ!というサインありありの演出であり好みがとても分かれるだろうが私は興醒めに感じた。で、小劇場演劇的あるいはテレビのバラエティ番組的なシナリオと演出をカバーしようとしてか撮影と編集が過剰に頑張っており、内容との乖離がこの上ない。手持ちカメラでガンガン振り回して短いカット尺で重ねるとか意図が見えすぎて興醒めですね。やめてくれーという気分になりました。
松竹がよくやるような大物俳優主演のコメディと銘打ってくれればなるほどとなったのかも知れないけど、宣伝の方向性はそうではなかった。それも意図的なものでしょう。
研究対象としてはとても面白い、有意義な作品でした。こんなに長文を書いてしまいましたしね。