「それでも微かな希望があるのは、この映画のある事情(詳細本文にて)?」大怪獣のあとしまつ yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
それでも微かな希望があるのは、この映画のある事情(詳細本文にて)?
今年31本目(合計304本目/今月(2022年2月度)4本目)。
ここも、もっと気軽につながるツイッター等でも絶賛大炎上中のこの映画…。
もうそのことはわかっていましたし、事前予告などから、「法律的な観点で見ることはできるかも」とは思ったので(まだ完全に捨ててはいかなったし、予告編から、架空の内閣や行政が出ていたことは把握していた)、行政書士試験合格者レベルでどこまで「何とかなるか」という観点でもっぱら見に行きました。
…が、それも無理です、はい。
「河川法」や「地方自治法」などは実際に存在し、話されている内容自体も適正ですが、途中からは架空の法律や概念がどんどん登場し、「そもそもこの世界に日本国憲法ってあるのかな?」というところになってしまいます。今、リアル日本でも「まん延~」という状況ですが、こういういわば「パニック的状態」であっても(まぁ「まん延~」は一番マシな分類ですが)法律の策定・適用って厳密にされなきゃいけないんです。
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★ 「河川法」自体はマイナーな法律なのですが、憲法の判例として「河川法は、河川の区分ごとに管理基準を定めているのだから、都道府県等が、その法を超えて、条例で「上乗せ」して管理を強化することはできない(換言すれば、条例による「上乗せ」には限界がある)という趣旨で学習する程度です。
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さて、超本質論に入ります。この映画、心折れて最後まで見ない方も相当数いるんじゃないか…と思いますが、よくよく見ると、最後に「文化庁の文化芸術振興費補助金」の対象になっていることが表示されます(その中の、映画創作活動部門、というもの)。
映画を作るのは決して安価ではないので、文化庁なりに応援を求めるということはあります。ただ応募するのは自由ですが、毎年1200(去年、2021年は1200本ほどだったとのこと)本ほどある映画を、全部が全部、文化庁なりの行政が応援して補助金を出すというのは無理なので、建前上、募集は全てから集めた上で、「内容趣旨からして補助にそぐうか」といった点は審査点として、トップ何位くらいで出しているのだろうと思われます。
ここで、映画作成から公開まで1年程度かかることを考慮して、去年(2021年)公開分の対象として申告された令和2年度を見ると、次のようになっています。
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助成対象活動名
ドライブ・マイ・カー ←説明いらないと思うのでそのまま
189 (児童虐待に関する内容)
「浜の朝日の嘘つきどもと」(仮題) ※引用は当時の資料のまま。東日本大震災や、営業の自由(憲法22)などを扱う。
Arc(仮題) ← これがよくわからないのですが、何らかの意味で「教育的枠」だったのでしょうか(見ていないのでわからないのです)
プリテンダーズ ←個人的に去年(2021年)トップにした作品。表現の自由や男女同権思想をテーマにしつつ、SNSの正しい使い方を扱う。多くの方に見てほしい映画。
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…と、多くの方が「なるほどな」という作品があります(一部はコロナ関係かボツったものもあるようです)。
…が、この映画も同じくこの枠なのですよね…。つまり換言すると、この「補助金枠」というのは、例えば監督が新人さんや2回目などでハンディがあるとか、ミニシアター中心が想定されるといった事情があるとかというもの「ではなく」、「まぁ、ダメだろうと思って出してみたら通ってしまった」のでしょうね…。
一応、日本の「現在の」行政を皮肉るような内容も出ることは出ますので、そこに着目したのかなとは思えますが、それを超えても内容が色々ムチャクチャなので…。
※ (映画内での)行政のダメダメぶりはこの映画ではよく描かれますが、それはもう既知のことで、実際、その筋(行政の腐敗を描くような映画)で補助金枠というのであれば、ドキュメンタリーレベル(去年だと、「ボストン市庁舎」等が該当しえたが、日本の行政ではなかった)しかないだろうと思います。
ただ、一方でこの作品が選ばれているということは、「理由を出して申請を出せば、むこう(文化庁)の判断基準にはそっていた」わけであり、内容を厳しくみたのではないだろうという点はわかります。また、内容を厳しくみて出す出さないという話をすると、「結果論的に」検閲と同じような行為にあたるのでそれも難しく、一定の項目に該当しているなどしている前提では「平等に扱わないのは逆に不平等」という問題から、こうなってしまったのではないか…と思います。
※ なお、令和3年(令和4年公開予定のものが大半)は、本作品「以外」は下記のものがあります(まだ公開されていない映画や、コロナ問題で延期になったりしたものもある模様)。
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死刑にいたる病
やがて海へと届く
マイスモールランド
前科者
ムーンライト・シャドウ
ぜんぶ、ボクのせい
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つまり、ものすごく皮肉に言うと、「ここまでムチャクチャでも、相手側の採点基準にあえば評価してもらえるよ、補助金も出るよ」ということなのであり、それは一方で、「楽しいつまらない、ばかばかしいといったことでお金を出す出さないと決めるのはおかしい」というごく当たり前のことであることは「よく考えれば」当たり前なので、その観点で見たとき「なるほどなぁ…」という感じです。
でも、文化庁のこの予算も限られているでしょうし(上記で引用した、今年公開予定であろう、令和3年の選定をみても、本作品含めて7本しかない)、「それでも」「表現の自由は保障される日本なんだな」というのを、「ある意味諦めて」みたくらいです。
ストーリーや評価に関しては、もう他の方も書かれている通りで、もうあれもこれもビックリな内容で、最後に「助成:文化庁~~」と出るのが「ある意味、最大の」ギャグなんじゃないか、いや、それはでも(資格保持者という観点でみれば)「言っちゃいけない」「表現の自由は最大限尊重されるべき」という点になりますから(それは否定しがたい)、どうにもこうにも難しいところです(さすがに、この映画が「助成:文化庁~」には吹いてしまいましたが、でも、行政のやることなので、間違ってはいないはず)。
特に「隣国をけなすような表現」に関しては、事実上「隣国」と一意に特定できる描写になっているものであり、これを前例として、「当該国内で」(一応、伏せておきます)、同じように災害を描いた映画などで「日本を袋叩きにするような発言」をされても、こりゃ「前例があるので仕方なし」という点、それにつきると思います(しかもあろうがなかろうがどうでも良いものが3回も出るので、政治的な意図を植え付けたいのかもわからない)。
ということで採点です。
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(減点2.0) もうこの評価は免れないと思います…。文化庁が助成しようがすまいが…。
「ストーリーが支離滅裂すぎる」「隣国に対する配慮が足りない」「突然ラブストーリー的な話になったりする」「まん延~で、飲食はOKという中で、飲食ができないような不穏当な発言をする」「謎のモザイク映像」「ラストの終わらせ方がムチャクチャ」…書いたらこれもうきりがないというか、書いたらイライラが解消されるわけないですし…。
正直、3.0を付けたことがないので(一方で、去年の「樹海村」と「DAUナターシャ」よりはあきらかに支離滅裂が認めうる)、3.0の評価をここにするかは今後次第だと思うのですが(もっとも、3.0をつけるような映画が毎週出てくるほうが嫌だし、これを3.0の基準にすると、2.5って放送事故クラスにしかならないと思う…)、とりあえず「評価なし」だけはできないので(0点扱いで平均点が出るらしいので)、このようにします。
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