マルモイ ことばあつめのレビュー・感想・評価
全5件を表示
【”言葉は民族の精神”大日本帝国支配下の朝鮮で、母国語の辞書作りに命を懸ける人たちの姿を描いた逸品。ユ・ヘジン演じる文盲の男と朝鮮語学会の代表との交流と別れが沁みる作品でもある。】
■大日本帝国支配下の朝鮮、京城が舞台。
前科持ちでお調子者のパンス(ユ・ヘジン)はある日、息子の授業料を払うために朝鮮語学会の代表リュ・ジョンファン(ユン・ゲサン)のバッグを盗む。
ジョンファンは大日本帝国陸軍により使用を禁止されて行く朝鮮語の辞書を作ろうと“方言も含めた朝鮮語”を集め、自国の精神、文化のために辞書を作ろうとする男だった。
ジョンファンと接するうちに文盲のパンスは字を覚え、読み書きが出来る事の喜びと、母国語の魅力に気づかされていく。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・序盤は、ユ・ヘジンならではのコミカルな展開が面白い。
・だが、中盤、後半も大日本帝国陸軍による、朝鮮文化統制、朝鮮民族への日本語教育の徹底、日本の名前への改名に至るシーンや、朝鮮語学会メンバーに対する拷問などは、観ていてキツイ。
・だが、ユ・ヘジン演じるパンスが、字を覚え、読み書きが出来る事の喜びに目覚め、朝鮮語学会の代表リュ・ジョンファンに協力していくシーンは沁みる。
方言を集めるために、パンスの悪友達を集め、夫々の出身地域の方言を収集していくシーンや、映画館に朝鮮語学会に賛同する人たちを集め、集会を開くシーン。
■日本が、終戦が近づくにつれ朝鮮民族への弾圧を強めて行くシーン。矛先は朝鮮語学会にも向けられる中、パンスとリュ・ヘジンは必死に辞書を作るための言葉を守ろうとするが、大日本帝国軍人たちに襲われて行く。
<パンスが銃弾に斃れた後、終戦になり朝鮮語辞典は無事に創刊されるのだが、そこに挟まっていたパンスが子供達に残した手紙のシーンも、沁みた作品である。
戦争になると、文化統制が行われるのは歴史の必然ではあるが、それに屈せずに成果を成し遂げた方々には尊崇の念を改めて抱いた作品である。>
■学生時代に、朝鮮ではなく中国を一カ月半放浪していた事があるが、その際に金が無かったので汽車の硬座(二等車)に乗って旅をつづけた際に、中国の年配の方々から笑いながら”バカヤロー”と言われた事を思い出す。あとは、腕を組んでいると日本の軍人を思い出すらしく、笑いながら”怖いよ”とも言われたなあ。
今作を観ている時と同様に、居心地が悪かった事を思い出してしまったよ。
複雑な思い…
日本人として見ていて非常に心苦しい。韓国併合、創氏改名など、朝鮮語文化を廃し、学校でも日本語教育が進む中、朝鮮語の辞書を作ろうと、日本の警察に弾圧されながらも、命懸けで奮闘する朝鮮語学会の人々の話。文字は民族の精神、言葉は民族の命。どの国でもそうだろう。反日映画と言われれば、そうかもしれないが、この歴史に向き合わなければならない。同時に改めて自国語の大切さに気付かされた。シリアス一辺倒では描かれず、ユ・ヘジン演じるお調子者のパンスが和ませる。ユン・ゲサン演じるリュ代表との次第に打ち解けていく様が音楽と共に良かった。比較的、極端に下手なイントネーションの日本語が出演陣になかったのも、徹底した役作りだった。
<日本統治下の朝鮮を知る映画ベスト10>の1作として日本人必見!
日本語の辞書編纂作業をドラマ化した『舟を編む』は、韓国で上映しても韓国人は感動できないでしょうが、この朝鮮語の辞典を占領下で編纂していく『マルモイ』は日本人が観ても感動する映画です。
でも、このコメント欄で多くの人が指摘していますが「日本人役の発音」が日本人ではないことが、「言葉の重要性を説いている映画」だけに気になりました。
日本人のセリフに「日本語の字幕」を入れたのは、韓国の制作陣の判断なのでしょうか? それとも、日本の配給側の判断なのでしょうか?
「日本語の字幕」にするよりは「日本人による吹替」のほうが、「日本人には変な反発心を生じさせない効果」が有ると思います。
映画作りのコツを教えて貰っているような判りやすい作品でした。「最初はコメディタッチで最後は悲劇でも感動的に描く」ことに成功しています。
「冒頭で追いかけっこをした」主役の2人が、後半は「捕獲に来た日本兵から共に逃げる」シーンは卓越した「対比」でした。
言葉に焦点を当ててるのが面白い
日本統治下の話。この時代を描いた映画はわりとよくありますが、この映画は言葉集めに焦点を当てているのが特徴的だと思います。
劇中に出てくる、同じ「殴る」でも言葉が二つあって、その言葉がなければどっちも「殴る」に収斂され、その行為の差異は無視されてしまいます。言葉があるから「殴る」でも別々の行為として認識できるわけで、言葉がなければ無いのと同じです。言葉を禁止するというのはその言語で生活している文化全体をなきものにする恐ろしいものだと思います。
そういう言葉の面から統治下の映画を作るというのは新しいと感じました。
また、こういう特定の言語の使用を禁じるのは、沖縄の方言札の例もあるように国家間の話だけではなく、地方に対してだって抑圧はありますが、劇中で方言の収集にも力を入れていて、単純に朝鮮と日本の対立構造にするだけではなく、地方の違いも尊重するという、言葉の問題に大変真摯に向き合ってる作品だと思いました。
複雑な気持ちになった
・言葉をはく奪したのが日本人っていう事実が観ていて複雑な気持ちになった。言葉やら名前やらを支配していくっていうのが凄いなと思った。
・映画館で深夜の辞書づくりのシーンで一つの動作にも各地で微妙に違っててそれを統合していく様子が面白かったのと楽しそうだった。
・キム・パンスが終始明るい人物でとても良かった。リュが仲間の詩人を助けたパンスを誤解して謝罪しに家に来た際、もう許さないよ!って怒ってるのかと思ったら、ニヤニヤして思い知ったかと楽しんでいるようなシーンが面白かった。
・各地のなまりを集めようとするシーンで街に各地の人間が集まっていてそこから作るとこが面白かった。その一人にゆだねられるっていうのが精度に難がありそうだったけど。
・ラストにリュが完成した辞書を持ってパンスの子供を訪ねた際に、パンスの思いの所で泣けた。
全5件を表示