まともじゃないのは君も一緒 : 特集
成田凌VS清原果耶 相性最悪の普通じゃないラブコメ
コミュ力ゼロ男に、恋愛経験ゼロ女が恋愛指南?
芝居が上手い俳優はたくさんいますが、“心をくすぐる芝居をする”俳優は少ない。しかも、若手となるとその数はグッと減る……。
成田凌と清原果耶は、それぞれの世代(20代中盤、10代後半)でトップクラスの“心をくすぐる芝居を披露する俳優”と言えるでしょう。3月19日から公開される「まともじゃないのは君も一緒」は、そんな成田&清原が初共演を果たしたラブコメディです。
“コミュニケーション能力ゼロ”の偏屈な男性(成田)が、恋愛の知識は豊富だけど“恋愛経験はゼロ”な女性(清原)のアドバイスを受け、恋の第一歩を踏み出してみる。……それって、うまくいくの? この先どうなっちゃうの!?
そして成田&清原の相性は最高……ではなく、なんと“相性最悪”(もちろん“演じる役”の話ですよ)。互いの芝居がバチバチとぶつかり合い、化学反応を起こし、まったく普通じゃないラブコメを生み出しました。
この特集では、本作の物語、芝居の見どころ、スタッフたちの思い入れの強さなどを紹介していきます。
成田凌…コミュ力ゼロ男 清原果耶…恋愛経験ゼロ女
2人の“演技モンスター”による“相性最悪ラブコメ”
【物語】“数学一筋”予備校講師、恋、始めます “恋愛したことない”教え子のアドバイスを受けて…
本作のおもしろポイントのひとつは、“コミュ力ゼロの男性”が“恋愛経験ゼロの女性”の言うことを真面目に聞き、恋愛を始める――そんな「結末はどうなる」が強烈に気になる物語です。
外見は良いけれど、数学一筋の予備校講師・大野(成田)。彼は“普通の結婚”を夢見るも、そもそも普通がなんだかわからないから困っていました。
そんな大野に、自分は恋愛上級者だと思っているけど、実は“恋愛経験ゼロ”の教え子・香住(清原)はちょっとしたアドバイスを授けます。「もうちょっと普通に会話できたらモテるよ」。彼女の冗談に近い助言を、大野はすっかり信じきって行動に移すことに。
香住はそんな大野を見て、ある計画を思いつきます。この男を利用して、自分の憧れである会社社長・宮本功(小泉孝太郎)に近づくこと。そして、宮本とその婚約者・戸川美奈子(泉里香)の関係を破壊することでした――。
「絶対にうまくいくはずがない」という予想に反し、少しずつ成長し、普通の会話ができるようになっていく大野の姿に、香住は不思議な感情を抱きます。ある時、香住はマイペースに計画を進める大野と衝突し、「もうやめよう」と言い出す。すると大野は、「今変わらないと、一生変われない。僕には君が必要なんだ!」と、香住に素直な気持ちを伝えます。
初めて誰かに必要とされた香住は、その言葉に驚き、何か心に響くものもあって……。初めての感情に「これって何!?」と悩み始めてしまいます。2人の心がかすかに揺らぎ始めた時、事態は思わぬ方向へと動き出す。計画の果て、2人が見つけた“普通”の答えとは――?
幸福の味がする98分間が、あなたを待っています。
【演技がうますぎる】成田凌&清原果耶の掛け合いはもはや“スポーツ”
最大の見どころは、なんと言っても成田&清原です。若手トップクラスと呼び声高い2人の、もう「コワいくらい上手い」としか表現できないレベルの演技が見られます。
映画「君の名は。」「窮鼠はチーズの夢を見る」や、NHK連続テレビ小説「おちょやん」などで知られる成田は、本作では数学一筋の大野役。外見は良いのでモテますが、女性から「好きです」と告白されても、「定量的に言ってもらえるかな?」と返して引かれたり。笑いのツボもかなり奇妙だし、自分では「普通」と思っているけど、はたから見ると火を見るより明らかな変人です。
さらに、2021年度のNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」主演が決まっている清原は、大野に“普通”について様々なアドバイスをする香住役に。「自分は普通」と思い込んで疑わない一方で、憧れの会社社長・宮本の講演会には欠かさず参加し、彼を喫煙所で見かけたら脇目もふらず突撃して話しかけるなど、実は心根の一番深いところで“普通じゃない”女の子だったりします。
そんな2人が、「授業を始めます」と席につき向き合った瞬間、とてつもない勢いで互いに言葉のナイフを投げつけ始めます。この会話劇が非常にスリリングで、みるみる映画の世界に引き込まれていきます。
普通、セリフのやり取りというと、キャッチボールのような和やかな様子を想像すると思います。ですが本作の成田&清原は、むしろピッチャーとバッターの関係に近い。
ピッチャー清原が、アウトローいっぱいにカミソリのようにキレッキレの変化球を投げ込む。対するバッター成田は、意表をつかれ体制を崩すも、巧みにカットし次の球を待つ……みたいな。それはもはや、芝居を通り越してスポーツの領域です。
もっというと、剣道や柔道やボクシングを見ている感覚にも近く、見ていて手に汗握る瞬間がいくつもやってきます。ゾックゾクするほど怪物的なクオリティの会話劇。心ゆくまで、ご堪能あれ!
【というわけで】成田凌&清原果耶の演技とらえた特別映像をご覧ください
“普通”ってなに? 自分や、あの子は“普通”なの?
強火の映画好きが“本気で面白い映画”を追求しました
【観たらどんな気分に?】気軽に入れて、鑑賞後は心にしっとり残る いつかまた、もう一度観たくなる――
ここでは、短めにレビューを掲載します。注目してほしいのは、大野と香住の心境の変化。2人の計画は“失敗”と“大失敗”を重ねつつもなんとか進みますが、そのなかで彼らは普通であることを追い求め、考え、悩みながら、同時に「居心地の良い場所がどこなのか」にも気がつき始めます。
そもそも普通って、なんで良いんだっけ? 努力して手に入れるものなの? 本当に欲しかったのは、この感情なんだっけ? 2人が「周囲の人と同じでいること」と「ありのままで生きること」の境界に葛藤する姿は、自分自身の悩みにシンクロするように思えます。そして、気がつけば大野と香住への強い共感が芽生えていく……。
大野が香住に「もっと怒れよ」と叫ぶシーンで、観客の感情は一気に弾けます。その場面、2人の芝居は私たちの胸の奥をチクリと刺し、じんわりと温かい“大切な感情”を残してくれるんです。
入り口はお手軽。しかし鑑賞中は、冬の日の朝に毛布に包まれているような心地良さを感じて、エンドロールが終わるころには、もう一度この映画が見たくなっている――。まともじゃない2人の恋模様を見届けに、映画館へ足を運んでみてください。
【監督・脚本コンビ】“超映画好き”前田弘二×高田亮 勝負かけたオリジナル作品
スタッフ陣の熱意もすごい。監督・脚本は吉高由里子主演「婚前特急」の前田弘二&高田亮、ガッチガチの映画好きです。彼らが「とことん面白い映画」を目指してフルパワーで練りに練ったのが、この「まともじゃないのは君も一緒」なんです。
前田監督は約8年間、東京・新宿の映画館「テアトル新宿」でアルバイトするかたわら、自主映画の製作を続け、「婚前特急」「わたしのハワイの歩きかた」「夫婦フーフー日記」など良作を手がけてきました。
そして脚本の高田は、レンタルビデオ店でバイトしていたある日、客として来た脚本家・工藤裕弘と知り合い、なんとそのまま弟子入り。「婚前特急」をはじめ、「そこのみにて光輝く」「きみはいい子」などの脚本を担当し、今に至ります。
筋金入りの映画好きである2人が、「普通じゃない2人の、まったく噛み合わない会話劇」というコンセプトで、原作がない完全オリジナル作品「まともじゃないのは君も一緒」を創出。自身のありったけを込めて勝負をかける――本作、意外とアツいんです。
【実は音楽も素敵】手掛けたのは、あいみょん、柴咲コウらの音楽P・関口シンゴ
最後に、音楽も強く、そして心地よく印象に残ることをお伝えしておきます。
大野と香住の、ときにおかしく、ときに切なく、そしてときに愛おしい恋模様を支えた音楽の数々。手がけたのは、あいみょん、アイナ・ジ・エンド、藤原さくら、柴咲コウらの楽曲を創出する音楽プロデューサー・関口シンゴ、今最も注目される才能の1人です。
そして主題歌は、最注目のポップクリエイター、THE CHARM PARKが担当しています。ぜひ、スクリーンやスピーカーから流れる音楽にも耳を澄ましてみてください。目で見て感じる以上に、完璧に親密な時間を過ごすことができると思います。