「どのみち救われない」望み はるたろうさんの映画レビュー(感想・評価)
どのみち救われない
空が赤く燃えている。家族の心情と夕日の赤がシンクロして胸が痛い。
父、母、妹、息子の友人、マスメディア、世間。それぞれの「望み」が交錯しながらラストに向かって加速して行く。
父親がリアル。息子を信じながらも今後の生活や家族の行く末を考えなくてはならない。父親ってきっとそうなんだろうなと。
一方母親が腹をくくって息子を待つその姿に母の確固たる情愛を感じた。恐ろしいほどに。
ただ、そんな母親の一言に一気に胸がざわついた。
「まだ望みはある」
この「望み」って何だろう。母親として決して吐露できない心の内を表したような言葉。強烈に印象的だった。
俳優陣もいつもとはイメージの違う役柄で、セリフにもリアリティがあって皆さん素晴らしかったです。
実社会でも誹謗中傷なんて言葉を毎日のように耳にする昨今。そのあり方を今一度考えさせられるような作品でもありました。一方的に相手を責めることに正義など到底存在しません。
そして事件はいくつもの「望み」の中、ひとつの終わりを迎える。それがどんな結末であってもハッピーエンドにはならない。
それでも空が静かに凪ぎてゆく。
展開が早くてどんどん引き込まれました。見応えあり!
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