「2回目は泣けて泣けて仕方なかった」望み 星月夜さんの映画レビュー(感想・評価)
2回目は泣けて泣けて仕方なかった
鑑賞後3日たちます。
…悲しいのか、切ないのか、それでいてどこか気高さを感じるような、ひと言では語れない複雑な想いが胸の中をかけ巡っています。
父親が設計した、きらきら輝く真っ白な住まいは築き上げた幸せの象徴。
とても誇らしげで、とても大切にしている父親の姿が印象に残ります。
そこに住むステキな夫婦と兄妹、誰もが羨むような家族が巻き込まれた事件が平和だった家族を絶望のどん底に突き落とすサスペンスドラマ。
そして、それは特別なことではなくて身近に起こり得ることなのかもしれない、と考えさせられたのです。
ちょっと出かける、と言って出て行ったきり息子が帰らない。
友達と遊んでる?それにしては連絡がつかない。いや、返信が来たから大丈夫。
石田ゆり子さんの母親としての狂気にも似た感情の演技が刺さりました。
…そして私は母親と同化したように息子が帰って来るのを待ちました。
やがて明らかになっていく同級生の殺害事件。
マスコミが押し寄せて…記者に、近隣住民に、心ない野次馬に、自慢の自宅が汚されていく様を見せられました。
家庭の幸せのなんと脆いことか…
ウチの息子に限って犯罪なんて犯さない。
あんないい子が。あんなに愛して育ててきた。
でも実は、本心や本当の姿を親は知らないのかもしれません。
友達や他人には話せる悩みでも、家族には言えない…そういう気持ちを抱えている子どもほど、真面目で自立してる。
母親は、息子が犯人でも生きていて欲しいと望み…
父親は、息子が殺害されても無実でいて欲しいと望んだ。
…投げかけられる究極の選択。
両親の壮絶な葛藤と苦悩が描かれていました。
何故なら、どちらが結果だとしても苦しく辛いことだから。
祖母・市毛良枝さんの言葉が喝を入れてきます。…どちらに転んでも覚悟だけはしときなさい!
その通り、覚悟なのですね。
息子が犯人だとしたら、親として全ての罪を償う覚悟。
息子が被害者だとしたら、死を受け入れるという覚悟。
自分の息子が選んだ道に対して、責任を取る覚悟が必要だと、親の何たるかを教えられた気がしました。
父親・堤真一さん、母親・石田ゆり子さん、妹・清原果耶さんという演技派の素晴らしいキャスト。
そして、息子・規士という難役に挑んだ新星・岡田健史さんに拍手を送りたい。彼が俳優として30歳、40歳になった演技が楽しみで仕方ありません。
明らかになる息子の本当の姿に、父親と一緒に涙せずにはいられませんでした。
エンドロールで流れる森山直太朗さんの主題歌「落日」が胸いっぱいに広がって、なかなか立ち上がれなかった。
家族それぞれの「望み」と、やがてたどり着く真実が胸に刺さる映画。
追記
初日舞台挨拶に行って来た。
試写会でみた以上に、2回目は泣けて泣けて仕方なかった。
結末や家族それぞれの想いを知った上で観ると、苦しくて悲しくてたまらない。
家族それぞれの「望み」はともかく、それを全て昇華してしまうくらいに気高い息子の望みに号泣でした。
犯人を責める描写が一つもないというのも素晴らしい。反社会的な行為に対する怒りの方へ観客を導かずに、家族の想いに焦点を当てる作りがいい。
そして、それがラストの今まで以上に輝きを増す自宅のシーンへ繋がるのです。
1回目は全国TOHO試写会で
2回目は初日舞台挨拶付きで鑑賞。
リアル岡田健史さんを拝見する!という目標達成👏