「意外となかったオーストラリア視点のベトナム戦争映画」デンジャー・クロース 極限着弾 バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)
意外となかったオーストラリア視点のベトナム戦争映画
『プラトーン』『地獄の黙示録』『ワンス・アンド・フォーエバー』などベトナム戦争を扱った作品は多いが、特に大作レベルの作品はアメリカ映画、アメリカ目線のものが多く、オーストラリア資本、オーストラリア視点の作品は今まであまりなかった。(あくまで日本における戦争映画輸入事情として)
ベトナム戦争ではないが、沖縄戦を描いたメル・ギブソン監督作『ハクソー・リッジ』はオーストラリア資本の入った映画でオーストラリアの俳優を多く起用していたため、ルーク・ブレイシー、リチャード・ロクスバーグなど出演者が今回と被っている者も多い。
マーク・スティーヴン・ジョンソンのスティーブ・マックイーン愛が爆発した映画『バニシング ’72』 のトラヴィス・フィメルや『リトル・モンスターズ』のアレクサンダー・イングランドなどオーストラリアを代表する若手俳優も多数出演し、新旧オーストラリア俳優の博覧会的映画としても楽しめる作品である。
『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』では、ドローンを使った戦争という点で正確に銃撃することや、爆撃することの重要性が描かれていたが、今作では旧型となる無線を通じて、正確に情報を伝え、司令部が決断を下すというチーム戦(マイトシップ)が描かれており、いかに無線の存在が大事であったかということをしみじみと感じさせられる映画である。
少数対大軍との映画的なシチュエーションが現実の戦闘で起きたという絶望的な状況に加え、銃弾や物資がなくなってしまって、味方の遠方攻撃をしてもらうことだけが頼りという絶望的状況は手に汗握ること間違いなし。
「デンジャー・クロース」とは、味方も被害を受けかねない距離での着弾を意味しているのだが、命令や行動をする、それぞれの立場やプレッシャー、リスク、今後の責任問題の処理といった、戦争時における極限状態の緊迫感を見事に描き通したといってもいいだろう。
実話ベースで実際に亡くなった人物が映画でも、実話の通り死亡することもあって、遺族への配慮があったため、酷い描写を避けるためなのかもしれないが、アクション・シーンとしては、平坦なものが多く、バイオレンス描写も薄く、戦場の悲惨さという点では、物足りなさを感じてしまうため、娯楽性のある戦争アクションとして観ると失敗する作品である。