「僕もこんな旅をするのかなぁ」選ばなかったみち バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)
僕もこんな旅をするのかなぁ
なんとも興味深い認知症の描き方でした。昨年の「ファーザー」はサスペンステイストだった認知症本人には「このように見えている、感じている」という推測(であろうと思いますが)。それを本作ではロードムービーのような「旅・・・過去への旅」に昇華しています。序盤はその独特な展開にドギマギしますがリズムを掴むと一気に旅にお供できます。
人生を生きるとは「選択をし続ける」ということですよね。ですから、いい歳の僕も「あぁ、あの時それを選択していなければどうなっていただろうなぁ」なんてよく思います。それは後悔なのか?それともただの興味本位なのか?認知症になってもその思いは身体に刻み込まれているのかも知れませんね。特に身を切るような思いで選択した場合などは特に。
まさに人生は旅。認知症患者の断片的な記憶は心と共に時間や時空飛び越え過去の旅へ出かける・・・素晴らしいアプローチだと思います。心が飛び、彷徨っているその肉体を第三者達は「彼」と呼ぶ・・・なるほど・・・なぜならここにいないから、心が無い肉体だから・・・なるほど、なるほど。選ばなかった道への悔恨、選んだからこその喜び。そして忘れちゃいけないのは、「今」は過去の選択の結果であるということです。それをしっかりと描き、さらに大きく愛情で括るクライマックスは見事な旅の終着を表したのではないでしょうか。熱いラストです。
父親レオ役の俳優さんの演技が素晴らしいです。モリー役のエル・ファニングも!
レオとモリーとのクライマックスはとにかく素晴らしい、ぐぐぐぐっと込み上げます。良い作品でした。
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