「語られない従姉妹の物語も気になって仕方がない」17歳の瞳に映る世界 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
語られない従姉妹の物語も気になって仕方がない
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田舎の17歳女子が、田舎の17歳という限界を抱えながら、突破口を求めて慣れない大都会NYへ行く。なんとも危なかったしいロードムービーで、自分が16歳の時に、深夜のマンハッタンをうろつき回る機会があり、とにかく不安を押し殺して歩いたことを思い出したりもした。
ただ、自分の体験と完全に異なっているのは、やはり主人公コンビが女性であることで、女性というだけで危険の質も変わるし、寄る辺のなさの深刻度も全然違う。それでもおぼつかないながら、堕胎というミッションのために邁進する主人公オータムから目が離せないのだが、ふと、サポート役に徹してくれる従姉妹のスカイラーのことが気にかかる。
オータムはただ17歳なりに未熟なのだが、一見ふんわりしたスカイラーは、最初から断固として従姉妹を支えようとし、バイト先のカネを盗み、重い荷物を持って、つねに伴奏してくれる。彼女の覚悟を支えているのは何なのか? おそらく、まだオータムが見ていないゴミみたいな女性差別を目の当たりにし、体験してきたからではないか。
表では描かれないスカイラーの物語が常に裏面として存在していることが、作品の奥行きであり、演じた2人の女優が完全に等価なW主演である証拠だと思う。
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