劇場公開日 2023年12月22日

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「時代も距離も隔てて彼らとの繋がりを感じる」ファースト・カウ La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)

時代も距離も隔てて彼らとの繋がりを感じる

2024年10月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 それまで名前も知らなかったのに、2021年の特集上映で過去作をまとめて観て一遍にお気に入りになってしまったケリー・ライカート監督の最新作です。もう、これは楽しみでなりません。

 監督の『ミークス・カットオフ』(2010) 同様にアメリカの西部開拓時代のお話です。オレゴン州の山奥ではまだ貧しい暮らしを強いられていた頃、村で唯一匹の乳牛のミルクを夜中にこっそり搾り取ってドーナツ商売で一山当てようとする流れ者の男二人のお話です。

 いやぁ、この映画には参ったなぁ。これまでのライカート作品は、不要な説明や台詞を抑えながらも物語の奥に深い主張を忍ばせている様に感じさせたのですが、本作ではそんな明らかな主張は影を潜め、ただ淡々とお話が語られるだけなのです。でも、それに見入ってしまい目が離せません。腰くらいのやや低めの位置から中距離レンズの固定カメラで映し出される二人の暮らしぶりに癒されたり、ハラハラさせられたり、思わず目を瞑ったり、自然に魅入られたり。それでもやっぱりお話は静かに進みます。

 そしてラストシーン。えっ?ここで終わるの?と思わされながらも、それがオープニングシーンに見事に繋がって行く事に気付くと「うわぁ~! やられたぁ~」とゾクゾクしてしまいました。今の僕からは遥か遠くの土地、遥か昔の物語でありながら、こんな男達は確かに居たんだろうなぁと感じさせられ、彼らの踏みしめていた土地から今僕が居る場所と時代まで地続きで繋がっている様に感じられたのでした。 (2024/1/2 鑑賞)

La Strada