劇場公開日 2023年12月22日

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「"Nobody"」ファースト・カウ 万年 東一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0"Nobody"

2023年12月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

萌える

バレるかもしれない、捕まるかもしれない、そんなハラハラする感覚は微塵もなく、ほんの一瞬のチャンスで一攫千金を掴む為に乳を搾る、静けさが漂う星空きれいな真夜中で緊張感よりも仄々とした雰囲気の中で淡々と繰り返される作業が一頭の雌牛と共に和む一時。

本作の時代設定的に例えばイニャリトゥの『レヴゥナント:蘇りし者』で描かれる罠猟師たちが勇ましく先住民と争いディカプリオは瀕死の状態でサヴァイヴする物語を頭に浮かべながら、クッキーとキング・ルーが陥ってしまう顛末に自業自得と悲観的にはなれない、二人の友情を描くにしても深い関係性には到達せず一致団結から生まれた友情と、バッドエンドながらなぜか微笑ましく和める最後に感じられる。

リリー・グラッドストーンが『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』で演じたような背景の立ち位置で、彼女の良さが際立った『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』はケリー・ライカートの作品としても傑作、日常に於ける生活を細かい作業として描写する演出に『ミークス・カットオフ』を奇妙な男同士の友情を描いた『オールド・ジョイ』も想起させられる本作、もちろんジャームッシュの『デッドマン』が地味に登場するノーボディにテンションは上がりながら。

万年 東一