秘密への招待状 : 特集
招待された結婚式 そこで“別れた元恋人”と再会…
しかも、新婦は“自分と元恋人との娘”だった――
最近劇場公開された話題作を、月会費なしで自宅でいち早く鑑賞できるVODサービス「シネマ映画.com」。本日6月18日から「秘密への招待状」の独占先行配信がスタートしました。
2006年アカデミー外国語映画賞にノミネートされたデンマーク映画「アフター・ウェディング」をハリウッドリメイクし、ある秘密を抱えた女性2人をジュリアン・ムーアとミシェル・ウィリアムズという名優が好演したヒューマンドラマ。このほど、作品選定メンバーが見どころを語り合いました。
7月15日までの期間限定で、本作がVODで見られるのはシネマ映画.comだけ。せわしい日常の中で、ゆっくりと心に染み入るような良作を見たい方、ぜひアクセスしてみてください。
「秘密への招待状」(2019年/バート・フレインドリッチ監督/112分/アメリカ)
<あらすじ>インドで救護活動に人生を捧げるイザベルと、ニューヨークでメディア会社を経営するテレサ。イザベルはテレサに自身の孤児院を支援してもらうため、ニューヨークを訪れる。
そこでテレサから、“彼女の娘の結婚式”への招待を受けたイザベル。式場でイザベルが出会ったテレサの夫は、イザベルが過去に別れた恋人オスカーだった。さらに式の主役である新婦グレイスが、かつてオスカーとの間にできたイザベルの娘であることに気づく……。
座談会参加メンバー
駒井尚文(映画.com編集長)、和田隆、荒木理絵、今田カミーユ
和田隆 オリジナルはスサンネ・ビア監督「アフター・ウェディング」。主演は「007 カジノ・ロワイヤル」(06)などのマッツ・ミケルセンでした。オリジナル作品に惚れ込んだジュリアン・ムーアと、彼女の夫で監督のバート・フレインドリッチが製作に乗り出し、豪華リメイクを実現させたとのこと。オリジナル版では男性2人が主人公ですが、ハリウッド版では女性2人に変更されています。
荒木理絵 2人の名女優に加えて、ジュリアン・ムーアの夫役にビリー・クラダップと、キャスト名だけで見たくなる映画ですよね。主人公2人は理想に生きる女と現実を生きる女、という対照的なキャラクターでしたが、名優2人の力でグッとエモーショナルになっているなと思いました。男性2人のオリジナル版とはだいぶ印象が異なるのではないでしょうか。
駒井尚文編集長 ジュリアン・ムーアはエグゼクティブプロデューサーとしてもクレジットされていましたね。
●舞台はインドからNYへ オープニングショットが観客を自宅から“映画の世界”へ誘う
和田 ジュリアン演じるテレサとミシェル演じるイザベルのそれぞれの選択と決断が描かれます。彼女たちの決断をどう思いますか?
今田カミーユ 人生の困難が降りかかっても、彼女たちのように善意で生きられるようになりたい、と思いましたね。
荒木 母娘の関係性を含めた、理性で片づけられない問題に直面した時の決断ですもんね。そういう時にドラマって生まれるんだなぁと思いました…。
駒井編集長 イザベルが、インドに行くプロセスが気になりました。何でインド行ったのかは、語られてましたっけ?
和田 オリジナル版もインドのようですね。今回はインドの救護活動から始まって、舞台はニューヨークへ。設定も対照的な主人公たちを際立たせる形になっていたと思います。
今田 理由は語られてないですよね。私はやはりイザベルに罪の意識があって、インドの孤児院の仕事に就いたのかなと思いました。
駒井編集長 私はインド大好きなので、イザベルに感情移入しながら見てましたね。だから、余計にインド行きの理由が気になりました。そこにストーリーがあったらもっと良かったかな。私は毎朝瞑想をする習慣があるので、冒頭のイザベルの瞑想シーンがバーンと刺さりました。
今田 あのインドのオープニングショットは引き込まれましたね。
駒井編集長 「ニューヨーク 親切なロシア料理店」もそうでしたが、この映画もNYでほとんどロケしてないですよね。実際にNYで撮影したのは、1カットか2カットぐらいだと思います。
荒木 インドのオープニングからNYに景色が移るとなんだか現実感がすごくて、ぐっと疲れました。そりゃ逃げたくもなるよ、こんな現実からは……と思っちゃいました。
●ジュリアン・ムーアの“年齢を感じさせない美”と、逆に“年相応の美”がとても素敵!
駒井編集長 テレサについて述べるなら、ジュリアン・ムーアが60歳であの役やってるってのはビックリですね。ミシェル・ウィリアムズが40歳なんで、20歳の差があるという。
和田 驚きですね!
今田 ジュリアン・ムーア、いつまでも年齢を感じさせない美しさですが、劇中後半、いろんな肩書を脱いでノーメイクで映るシーンは年相応で。逆に素敵だなと思いました。
荒木 あのノーメイクのシーンは感動的でしたね。こういうことができるから名優と呼ばれるんだなぁと思いました。あのシーンの夫の弱々しい感じもよかったですよ。リアルで……。
駒井編集長 2人の女優と娘役に比べ、夫と新郎はやや影が薄い感じでしたね。
和田 テレサの夫、オスカーは終始言い訳や彼女たちの選択・決断を受け入れるしかない、芸術家でしたね。
●夫と、娘 脇役の人生から物語を読み解く“愉しみ”も
今田 オスカーの作品、審美眼を持つイザベルと付き合ってた頃は売れてなさそうだったのに、実業家のテレサと一緒になってから、人気アーティストのようになっているのが興味深かったです。
駒井編集長 ヒッピーみたいな作風から、モダンアートに転向して稼げるようになったのではないかと。それで、イザベルのインド行きもなんとなく説明がつきますね。テレサの友人に勧めるのであれば、モンドリアンやイサムノグチみたいな感じにならざるを得ないし。
今田 夫の作風の変化から、物語を読み解くのも面白いですね。そして、(アビー・クイン演じる)娘の存在感もとてもよかった。2人の母を持ち、それぞれ生き方を知るという。その後の成長が楽しみです。
駒井編集長 あの、娘役はオイシイ役でしたよね。母親がいきなり2人に分裂するというすごい経験。
和田 彼女は「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」にも出ていたようです。
荒木 母親2人がめちゃくちゃにこんがらがってる中、彼女はすごくピュアに喜んだり悲しんだりしてましたね。太眉が印象的でとてもキュートです。そして、基本この映画に出てくる男たちは右往左往して頼りない感じ。
●どんな人に“特におすすめ”?
今田 女性の強さを感じる映画でしたね。監督が、あの役を妻のジュリアン・ムーアに演じてほしかったという夫婦愛にも見えました。
駒井編集長 実質的な監督はジュリアン・ムーアですね。なんでこの内容で、女性監督じゃないんだろうって思ってたんですよ。監督が彼女の夫ということで、男が情けない演出も理解できました。
荒木 凝り固まった男らしさ女らしさの描写がないのも、この映画の魅力かもしれないですね。主演の女たちがめちゃ強いけどw
駒井編集長 働く女性たちに見て欲しい映画ですね。
荒木 「インドで朝の瞑想とかしちゃう素敵ナチュラリスト」と「NYでバリバリ働くカッコイイ女」と、だれもが憧れる芯の強い女たちの姿が名優たちの演技で見られるのは見どころだと思いますw。あんなお母さんだったら2人とも欲しいなあ……。
今田 インドの街並みとNYのテレサの住まい、どちらも素敵ですし、善意に溢れた物語なので、梅雨時に家で見て良い気分転換になりました。
駒井編集長 「娘がインドの施設を訪ねる」というシーンがいつ出るかと待ってたのに、そこがなかったのは残念。予算の問題かw
和田 テレサとイザベルの決断は男女でも賛否が分かれるかもしれないので、邦題の「秘密への招待状」というタイトルの意味を是非確かめて欲しいです。また、映画.comサイト内にもあるジュリアンとミシェルが並んだインタビュー映像も鑑賞後に見ておくと良いと思います。
https://eiga.com/movie/92641/video/3/