「彼だけは最期まで正しかったと思いたい」L.A.コールドケース つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
彼だけは最期まで正しかったと思いたい
実際の未解決事件をベースにしたサスペンスなので、この作品のラストももちろん未解決のまま終わる。
この手の実話系作品の場合、話を盛るにしても限度があり映画的娯楽度を確保しにくいケースが多いのだが、この作品に関しては、元々の事件が複雑なせいかドラマチックな仕上がりだ。
ジョニー・デップ演じる主人公プールが最初に言う「点」だと。
事件に関わりのある出来事の「点」が次々と明らかになっていく中で、それが繋がる「線」は薄っすらと見えてくるのだが、捜査の妨害によりその「線」は明らかにならない。
元の事件を知らずに観ると、わけわからんことが連続してしまっているのだが、全く分からないというわけではない絶妙な迷宮感が面白いとも言えるし、もし物語に全くついていけないのであればつまらない作品ということになってしまうだろう。
しかし作品の核は、事件に翻弄される主人公プールの顛末を見るもので、無理に事件を理解しようとしなくてもいいのではないかと思う。どうせ未解決だ。
味方だと思っていた人が中立へ、中立から敵へ、一人だけ執拗に事件を追おうとするプールは強い正義感故に孤立していくことになる。そして自らの人生も狂っていく。
プールの本当の想いは事件の解決などではないのだが、彼にはもう、それをするしか残されていなかった。
プールの過去の私生活は全く語られないが、現状から過去は容易に想像がつく。
ギリギリ最低限の救いでエンディングを迎えるが、プールという男の行動が過ちだったとは思いたくない。彼だけは最期まで正しかった。
少々複雑だが、中々見応えのある良きサスペンス。なんか点数が微妙だけど未解決事件の実話系の中では最上位クラスだと思う。