ジョーンの秘密のレビュー・感想・評価
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独りよがりの正義感の行く末
公式ホームページに主人公のモデルとなったメリタ・ノーウッドのプロフィールが書いてあるが、主人公の政治的スタンスに関しては作中ではかなりフィクションなので、このプロフィールを読んでから鑑賞すると少し肩透かしを食らうかも知れない。
第二次世界大戦中、ケンブリッジ大学で物理学を学んだ才媛ジョーンは原爆開発の機密任務に携わる一方、学生時代からの知人である共産主義者の友人や恋人との政治絡みの人間関係に翻弄される。2000年に逮捕された年老いたジョーンが取り調べを受けつつ回想する形式で当時の出来事が描かれる。
ジョーンは専門知識に関しては頭の回転がよいのだが、恋愛と機密任務に携わる者としての使命感と個人的正義の優先順位があやふやで、最後まで感情移入出来なかった。彼女は共産主義には賛同しないが、広島・長崎への原爆投下の映像を見て心が揺らぐ。周辺の男性との関係も彼女の心をおおいに揺らす。
公式ページに書いてあることだが、現実のジョーン、すなわちメリタは親の代からの筋金入りの共産主義者である。ソ連からの勲章も喜んで受け取っている。この事実をそのまま生かして、イギリス人のKGBやり手女諜報員がひたすら使命感のもとに暗躍するスパイ映画として作れば、ジョーンのポリシーが一貫したものになってエンターテイメントとして違う面白さがあったかも知れない。
とはいえ、ジュディ・デンチの説得力ある演技は見応えがある。ジュディの演じる現代パートは要所要所に挟まれるものの、トータルの出演時間はそんなに長くない。それでも、ジュディの静かな演技の中に、若き日の秘密と独りよがりの正義を胸に秘めたままジョーンが過ごした50年以上の月日が透けて見える気がした。また、若き日のジョーン役ソフィー・クックソンも好演で、クラシックで控えめな美しさがあって見入ってしまった。
トレヴァー・ナン監督はインタビューで、この映画が問いかけるものは「ジョーンのとった行動は正しかったのか」ということで、観客にこの問題を熟考してほしいと語っている。折しも日本では広島・長崎の原爆の日を迎える季節だ。毎年テレビで放送される原爆のドキュメンタリーなどとはかなり切り口の違う本作だが、被爆国の視点からジョーンが主張した正義を考察するのもまた意義深いことだと思う。
「事実」を参考にした「フィクション」
これは私の率直な印象、感想なのですが、主人公のジョーン・スタンリーに対しては、ポリコレ連中に抱くのと同様の腹立たしさを覚えました。独善的で、欲望を正義という偽りで塗りたくって誤魔化して、開き直るという、人間のクズかよという思いで観終わりました。
その点、ジョーンを演じた老境のジュディ・デンチには年寄りに有りがちな頑迷さも加わり、青年期を演じたソフィー・クックソンには偽善が加わり、両者とも素晴らしい演技でした。いや、なかなかに良かった。
しかし、両主役の素晴らしさと裏腹にストーリーが淡々と流れていくわりに、「余計な」心情描写もふんだんにあって、多少、混乱を来すと同時に、特に山場もなくスッと終わってしまったのが残念です。また、本当に彼女はそういう偽善的な動機でスパイ行為に関わったのか、が、弱い流れ、流れに巻き込まれて行為を正当化していく話の進め方だったのももう一つかなあと。
余談ですが、当時の男尊女卑がありのままに表現されています。
大女優作鑑賞その1
何を見たらいいか迷うときは、ひとまず出演俳優で決める。
GW初日はイギリスの大女優たちでいくことに。
1作目はジュディ・デンチ。
最初は彼女が冷戦時代にわたってずっとスパイをしていたのかと思ったけど、そうではなかった。
そして、ジョーンが言うように、ある時代の空気感というのは、そこに生きた人にしかわからないのだろう。
なぜナチスがあれほど力を得たのか。
今となってはいろいろな研究も出ていて、その経緯はなんとなくわかるし、狂気の沙汰だと感じるけれど、もし自分があの時代に生きていたら、どこまで冷静に考えられていたのかは大いに疑問だ。
(そもそも、何が起きているのかすら把握するのが大変だっただろうし)
同じように、何十年も経ってからジョーンに「なんであんなことをしたんだ」と詰め寄るのは、少しナンセンスなのかもしれない。
しかも、彼女には理由があった。
機密情報を敵国に渡したことについてはもちろん反逆罪だけど、その理由は、彼女があの時代にあって考え抜いた答えだったのだと思う。
ジョディ・ディンチ!
ジョディ・ディンチの007での年齢を感じさせない凛とした女性から、疲れた感じ漂う老女まで演じる幅の広さにまず感心。
自分の行動(=スパイ活動)で、世界の均衡が保たれた、という彼女の意見は、実際にこの数十年間核戦争が起きていないにしても、独りよがりでとても危険なもののような気もするし、でもどこかの大統領や首相が決めたらいいのかと言えばそれも最終的には人ひとりが決めた決断に皆が従ったに過ぎないのかも…などと色んなことを考えさせてくれた良い作品でした。
主義主張、システムの為に人を騙したり、利用するをよしとする、組織、...
主義主張、システムの為に人を騙したり、利用するをよしとする、組織、集団は、右であれ、左であれ、中道であれ、勘弁してほしい。
人の良心をもて遊び、利用する人には辟易。
義に生きようとすると、我利我利の私利の輩ばかり集まってくる、今日この頃。
スパイに至る経緯の描き方
1930年代のイギリスを舞台に、スパイに勧誘された女性の物語。
スパイサスペンスと言うよりは、ラブロマンスの様相が強い作品に感じました。
ストーリーは現代と過去の2本柱。
現代では、いきなり逮捕された老女の悔恨と信念。そして息子との関係に苦慮する女性を、ジュディ・デンチが熱演しています。
でも、時間配分で言えば、メインは過去。所謂「ノンポリ」だった彼女が、友人との関係で共産主義者と係りを持ち始め、恋愛も絡めながらスパイの勧誘を受けていきます。
舞台セットもしっかりとして、時代と戦争と恋愛に翻弄されている彼女は見応えがありました。
この映画の私的評価は、厳しめ。理由は、登場人物に共感を持てなかったこと。愛情を食い物にするレオは勿論、それを分かっていながらレオから離れられない主人公に、どうしても共感を持つことが出来ません。
また、彼女がスパイを行う動機に納得感がないのも、共感出来ない理由です。言いたい事は分かりますが、とても短絡的に感じます。「彼女の行為が平和をもたらした」というロジックも理解出来なくはありませんが、賛否両論あるとても大きな問題のはずです。それを、結論付けしているような結末には不満が大きく残ります。
彼女がスパイに至る心理描写をもう少ししっかりと描いていれば、動機の面での納得感は生まれたとは思います。例えば、日本に投下された原爆に悩み苦しむ姿とか・・・均衡がもたらすメリットとデメリットを教授と激論するとか・・・そこらへんの描写が不十分だったことが、映画に対する低評価につながったように思います。
私的評価は2.5にしました。
美人
結構ハラハラしてみました。何でそんなに軽率なのよ!とイライラしちゃいました。いくら何でもそんな事でスパイの道に走っちゃーならんよ。周りの皆さんに迷惑掛けまくりじゃん。そこの所は主人公に共感出来なかったなぁ。息子もそんな母の暴露話聞くのは辛いよね。
基本二人逃げられて良かったね、だったけどやっぱり悪いことは出来ないね。でした。
祖国を裏切っても…
平和を願うために敵国に機密情報を送る。彼女の平和への思いは並々ならぬもの。映画の元ネタ、メリタ・ノーウッドは元々共産主義者であり、少し映画と異なるようだが、ソ連からの報酬は受け取っていないという。映画は恋人から利用されるようにスパイ活動に誘われたり、不倫の末、夫になる科学者が彼女の身代わりで逮捕されたり、息子に弁護を頼んだりと脚色があったが、もう少しドラマチックにした方が面白かったと思う。しかし、原爆の情報をソ連に渡したからこそ、米ソの力関係が均衡し、結果原爆を使った戦争は起きていないというのはなるほどと思ってしまった。ソフィー・クックソンは横山めぐみに似てるとも思った。
過去との向き合いかた
五十年近く前の罪を告発する国。
日本では過去は過去として、なんとなくうやむやにすることが当たり前のように扱われる印象。それは、善きにつけ悪きにつけで、すべてが忘却の彼方へ。一方、ヨーロッパは、特にナチス問題や、コミュニズムのことは、今も当たり前のように議論されるし、領土問題も過去から現在まで繋がっているから当たり前と言えばそうなんだけど、やはり、石の文化と紙と木、式年遷宮の違いが、過去との向き合いかたに表れてくるのかな。
本作は、過去と現在の切り替わりが分かりやすくて、個人の問題、国家間の問題、そしてその時代感というのが鮮明に描かれていて、分かりやすくてすごく面白い。ジョーンのいうように、あの頃のことは今の人にはなかなかわからないのだろうな。
出番は少なめでも、ジュディの演技圧巻。
一言「そんなことが、あったんだね」。実話物です。
ジュディはストーリーの1/4ぐらいしか出てません。
残りは若い頃の話の回顧。
今と過去の話が、行ったり来たりするけど。
二つの時間軸共通に出てくるのは、彼女演じる「ジョーン」だけなので。
わかりやすかったです。
ケンブリッジ大学で原子物理学を学んだジョーン。
就職した先で「知り得た情報を他言してはならない」ことにサイン。
大学時代の恋人であっても、仕事の中身は話せない。
でももし恋人が、ジョーンの情報が欲しくて困っていたら?。
私だったら、ぽろっと言っちゃうな。
その中身が「原子力爆弾」を作る技術の話。
日本に投下された2回の悲劇を、ニュースで知ったジョーン。
彼女は「どの国も同じ情報を持っていたら、戦争にはならない」。
なるほどね。その行動力、結果的に「情報漏洩」=反逆者と見做される。
それが80歳すぎてから捕まるって、どうなん?。
その時間の長さの説明が、なかったんだよね。残念。
終盤はジュディ圧巻の演技とラストに、どこか背筋が伸びた気も。
彼女の行動がなかったら。エンドロールを眺めながら考えました。
⭐️今日のマーカーワード⭐️
「歴史を振り返れば、私が正しかったことがわかる」
堂々たるジュディ・デンチ主演映画
主人公ジョーンがスパイ活動をした理由が独りよがりだとか、その行動が核戦争の抑止力となったのかどうか、とか、本作の主題としては中心にはない領域に言及するレビューが散見され、残念である。
本作のラストシーンを思い出されたい。
老いたジョーンの横に息子が立ち、彼女は息子の手をそっと握る。そして、アップになるジョーンの控えめだが幸せそうな笑顔。
そもそも、本作の早い段階で、ジョーンが息子に対して「自分の弁護を引き受けて欲しい」と頼むシーンが出てきている。
本作の縦糸は、母と子の関係にあるのだ。
では、このモチーフは何につながるのか?
ジョーンは原子爆弾の技術をソ連に渡したわけだが、その行為が許されるかどうかといったことは、どうでもいいことだ。
作中、ジョーン自身も言っている通り、それは歴史が判断することである。
本作のテーマは「そこ」ではなく、ジョーンの愛である。
ただ男と女が愛し合う、それだけでも大変な時代だった。
対比されるのはソ連のスパイだったレオとソニアである。子どもまでいたのに、最後、妻は夫を殺す(または自殺幇助か?)ことにまでなった。時代の悲劇である(レオの死はソニアの嫉妬が原因である、という解釈も成立し得る。そう考えると、本作の本質が、スパイよりもジョーンの愛に置かれているということがより鮮明に見えてくる)。
そのような時代を背景に、ジョーンは夫を愛し、愛され、そして危険を冒しながらも賭けに出て未来をつかみ取った。
だから、亡き夫が遺した息子が、彼女の味方であることが、売国奴と呼ばれることなんかよりもジョーンにとって決定的に大事なのである。
ゆえに本作は、あのラストシーンで幕を下ろすのだ。
もちろん、劇中では過去のシーンに多くの時間を割いている。
しかし、ただ、あの時代のスパイ行為を描く映画であるなら、早々に息子が登場する意味はない。
第二次世界大戦直後の、大国同士の核兵器開発レースというスケールの大きな話を見せながら、実は1人の女性が選んだ愛を巡る話と、愛した夫が残した息子との関係性という、もう1つのテーマを徐々に描いて、ラストに、後者のテーマが前面に現れてくるという鮮やかさには拍手を送りたい。
そして、ここでアップで映し出される年老いた母親としてのジョーンの笑顔。
そう、確かにこれは見事な、そして堂々たるジュディ・デンチの「主演映画」なのである。
いきなり逮捕のシーンから始まるスタート。過去の回想シークエンスも、窓からソニアが入ってくるシーンから始まり、緩急が効いていて飽きさせない。
何より、男性とのあいだで揺れ動く若きジョーン演じるソフィー・クックソンが収穫。ソニアの家に忍び込んだり、海外視察でも活躍する活動的で聡明な女性を魅力的に演じている。
完成度の高い佳作である。
なお、原題はRED JOAN。
ラスト近くでジョーンを囲むマスコミが「RED JOAN !」と叫ぶシーンがあるが、このREDは、もちろん「社会主義者」という意味。しかし、実はREDには「大英帝国」という意味もあるのが面白い。また、「怒れるジョーン」とも解釈可能で奥行きのあるタイトルである。
普通のおばあちゃんが。
典型的な英国の庭付きお家に住んでいるおばあちゃん。まさかの展開に途中からぐいぐい引き込まれました。内容もなるほどなんですが、若き日のジョーンが着ているお洋服が可愛い。帽子も手袋も素敵。特にソニア宅を悩みながら訪れる時のコートがとってもシックでちょっとハラハラのシーンなのに(あのコート欲しい)って。ディビットデンチの演技は流石ですねぇ。
大国の均衡・・・その危うさ
構成が巧くラスト迄引き込まれました。
若い頃のジョーンを演じたソフィ・クックソンがとても魅力的で、その恋人レオ役のトム・ヒューズを始め、皆さん演技が巧く、イギリスの映画界のレベルの高さに魅せられました。
当時より何もかもが進んでいる今現在、大国の均衡の危うさについて、改めて考えさせられる作品でした。
映像も美しく、余韻の残る作品。
映画館での鑑賞
周りの友人にはご注意
007のM役で知られているジュディ・デンチがスパイ役をするの?ということで、観に行きました。
ジュディ・デンチは歳に合った演技をしていましたが、個人的には若い頃の役を演じたソフィー・クックソンの演技の方が良かったです。
(登場するシーンが多かったから、そう感じたのかもしれませんが)
ストーリーは、過去と現在とを織り交ぜながら、次第にジョーンのスパイ活動が解き明かされるのですが、スパイ活動と言うより、彼女をスパイ活動に誘導して行く、周りの人々が怖くなりました。
怪しい宗教の勧誘も、こんな感じなのでしょうか。
それから、ジョーン自身も、周りに流される性格みたいですね。
自身は自分の信念を持っているようですが、周りから見れば、スパイ活動に変わりありません。
時代のせいでなく、彼女自身が招いた結果だと思いました。
抑止力。相互確証破壊。
もしも。
あの時日本が、即時報復が可能な、核弾頭付きICBMを持っていたら、アメリカは広島に原爆を投下したか?
あれ?Wikiの相互確証破壊の記述が、一時期ほぼ全削除に近い状態だったのに、少し復活してる。もっと中国の事を詳細に書き込むと、飛んじゃうんですよねぇ。なんでだろう。南シナ海で、米中が衝突しなければならない理由が知れ渡るとまずい?w
いずれにしても、アメリカが核兵器を独占する世界なんて、悪夢っすよ。力の均衡は必須。
また、彼女が重要な機密をソビエトに渡していたにしても、最大の問題は「起爆装置」。
映画の中でも説明が足りてませんが、大量のウランやプルトニウムが、「一気に核分裂反応」を起こさなければ、爆弾になりません。原爆の起爆装置製造には、高い製造技術が必要ですし、「爆弾」としての開発は、「起爆装置」の開発、と言っても過言ではありません。理論物理の研究室では、その開発は出来ない。ソビエトに渡った情報では、数年の開発期間を短縮する程度の効果しかないのではないかと思われます。
KGBに消されずに済んだのは、レーニン体制崩壊まで海外にいたからなんですかね?
ちなみに。レーニンが核兵器を持つのは悪夢ですか?
中国が持ってますけどね。この先、10倍にするって公言しましたけどね。
彼らの何が怖いって、自国民に対して使いかねないとこです。
あくまでも結果論ですが、彼女のしたことは、3発目の核爆弾が使用されることを防いだ。と言えるのではないかと思います。映画としては、「一人の女としての想い」と対立する「科学者のしての立場と使命」の対比が解かりやすくて良かった。なんと言っても、ソフィー・クックソンが美人さんで良いです。
平和への想い
映画の話ではないが、私は被爆者の孫。
原爆のことは学校の平和学習などで、ほかの都道府県よりも知っているつもりだった。
核兵器が出来るまでのストーリー。
平和を止めたい。原爆を止めたい。
想いは多くの人にあるが、何か行動を取れる人は多くはいない。
止めたいと言う想いの行動が、
反逆者として扱われるかもしれないと分かっていても、
自分は反逆者ではないと言う信念。
平和への想い。
感謝をすべきことであっても、批判される行動ではない。
私は最後にジーンと泣けてきた。
被爆者がこれ以上出ませんように。
その理由は大局を見ているのだが…
ジュディ・デンチ演じるスパイ容疑で逮捕された80代の老女・ジョーン。戦時中は核開発に関わり、広島・長崎での原爆投下を経てロシアに機密情報を流した。
今作のポイントはその理由。
彼女が語った大義名分は戦後間もない頃では考え難い。実話をもとにした小説を脚色したというが美化し過ぎたのかも。
モヤモヤしながらソフィー・クックソン演じる若き日のジョーンの行動を追った。
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