「ベリーゴーディJr.がしゃべり倒す!モータウンの社歌に感動」メイキング・オブ・モータウン Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
ベリーゴーディJr.がしゃべり倒す!モータウンの社歌に感動
「メイキング・オブ・モータウン」(原題:Hitsville:The Making of Motown)。
音楽ファンなら、2020年必見のタイトル。
“モータウン”を解説した書籍・雑誌記事は数え切れず、あるいはラジオ番組では定番といってもいいほどのテーマジャンルでもあるが、この映画はそれらを凌駕する、かつてない“モータウン決定版”である。
モータウンの映画といえば、「永遠のモータウン」(2002年/原題:Standing in the Shadows of Motown)の“ファンク・ブラザース”のドキュメンタリーを思い出す。“ファンク・ブラザース”は、いわゆるスタジオミュージシャンとして活躍し、“ビートルズ、エルヴィス、ローリング・ストーンズ、ビーチ・ボーイズを合わせたよりも第1位獲得曲が多い”と、モータウンの黄金期を支えた彼らを描いた。
対して本作は、モータウンの創設者であり、楽曲制作もしていたベリーゴーディJr.元社長(90歳)ご本人と、ミラクルズのリードシンガーでやはり作詞作曲家のスモーキー・ロビンソン元副社長(80歳)の2人が出てきて、モータウンの事実をものすごい勢いでしゃべり倒すのだ! その暴露話は驚きの連続だ。とてもこの年齢の高齢者には見えない。
スティービー・ワンダー、マービン・ゲイ、ジャクソン5、スプリームスなどを輩出し、全米No.1ヒットを量産しつづけた黄金時代に何が起きていたか。この映画を観ればすべてが分かる。
日本の音楽ファンにとって、ベリーゴーディJr.のイメージはあまり宜しくない。入ってくる情報が少ないというのもある。
ミュージカル「ドリームガールズ」(2006)は、モータウンの“スプリームス”がモデルになっていた。ビヨンセが演じたディーナ・ジョーンズはダイアナ・ロス、またジェイミー・フォックス演じるマネージャーは、まさに嫌なワンマン社長で、それがベリーゴーディJr.のイメージにつながってしまう。
スティービー・ワンダーやダイアナ・ロス、あるいはジャクソンズ等のモータウンのスターとの確執といったマイナスな噂ばかりが耳に入ってくる。
しかし本作「メイキング・オブ・モータウン」では、すべてご本人が語り、当時映像や最近のインタビューで構成されている。そしてやはりモータウンは、ベリーゴーディJr.というクリエイター兼経営者がなくして生まれなかったことがわかる。
2019年にモータウンが創設60周年を迎えたということで企画されたものだが、会社はすでにかつてとは違う系列となっている。ベリー・ゴーディJr.も音楽界から引退宣言している。
エンドロールで、ベリーとスモーキーが歌う、モータウンの歌(会社の歌)が笑える。当時ほんとうにあった社歌である。感動ものだ。
ちなみに本作の字幕翻訳は映画本編では中沢志乃とクレジットされているが、ポスターやパンフレットには石田泰子となっている。どちらかが間違い。
(2020/9/19/角川シネマ有楽町/ビスタ/字幕:石田泰子じゃなくて中沢志乃/翻訳監修:林剛)