「社会の「分断」を埋めるものは、いつの時代も音楽と人の絆」メイキング・オブ・モータウン h.h.atsuさんの映画レビュー(感想・評価)
社会の「分断」を埋めるものは、いつの時代も音楽と人の絆
今のDetroitは、あらたなTech企業が誕生しているものの、米国有数の犯罪地域でありRust Beltと呼ばれる退廃した都市だ。
Motownが設立された60年代は、米国経済がもっとも輝いていた時代であり、その牽引のひとつがDetroitを中心とした自動車産業だ(まさに文字通りのmotor town)。
トヨタの大野氏がスーパーマーケットの販売ラインから生産方式を生み出したように、Motown創業者のBerry Gordy, Jrは勤務していたFordの生産システムをヒントに組織運営を考えていたとは驚きの事実。
本作でも、人材発掘、A&R、育成、QCなどの各過程を工場の組み立てラインのように一貫したマネジメントをおこなってきた点をMotownの成功の要因のひとつにあげている。
たとえば人材開発やプロジェクトマネジメント、ブランディングについてはビジネスパーソンとして参考になるヒントが散りばめられている。
なかでも人種性別にとらわれない人材登用の姿勢は、人種差別がはげしい時代下で驚くべきdivercity の取り組み。だからこそ全米中、そして世界でも愛されるレーベルを作ることができたのだろう。
70年代に入り、米国のプレゼンスに陰りがみえはじめ、社会の変化とともにMotownも停滞感が漂うなかでうまれた、Marvin Gayeの「What’s Going On」の誕生エピソードが秀悦。
本作のなかで流れるヒット曲の数々。名曲のリズムに身を委ねつつ、分断の時代の今こそ音楽がもつ力を信じたいと思う。
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