ルース・エドガーのレビュー・感想・評価
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人種差別や格差社会に対する憤りがあった
主人公の高校生ルースはアフリカの北朝鮮とも言われる戦火のエリトリアに生まれ、幼い時にアメリカへ逃れ、医師夫婦の養子となった。
高校を代表する優等生となった彼の中に鬱積した教師や学校に対する思いが悪意ある計画を生んだ。教師や親との心理戦をドキドキしながら見守った。
ここに過ちを犯す二人の女性がいた。ルークを疑い対峙する教師(オクタビア・スペンサー)、迷いながらもルークを守ろうとする養母(ナオミ・ワッツ)。強く正しい女性像をも演じる名優たちだからこそ、このダメダメぶりも府に落ちたのだろう。
この作品にはブラックやイエローに対する差別や格差社会に対するどうしようもない憤りがあった。鈍い感触が残った。
しょせん「箱の中」。
箱の中に差し込む光は、仄暗くあたりを照らす。光が当たる者でさえ、箱の外に出られる訳ではなく。出たところで幸せな生活が待っている訳でもなく。光の当たる周囲にいるものは、いたたまれない。
箱の中で生きる者たちが、足を引っ張り合う姿。足掻く姿。箱の存在など理解できない者たちが「愛」を語るしかない現状への絶望。
「優等生か怪物か」なんてサスペンス要素以前に、アメリカ社会の人種問題の生々しさが、ここ数年の同題材作品の中では、一番でした。
ルースは、光の当たる場所で己の心に反する欺瞞的な生き方をし、仄暗い場所で、自分の気持ちに従っているだけに過ぎないのであって。白人社会の優しさに感謝するスピーチをする一方で、箱の中で生活するジレンマから逃れるかのように、町の中をひた走る。
無駄だよ。どんなに懸命になったところで、しょせんは、箱の中からは出られないし、出ても満足感などなく、後悔するのがオチ。しょせんは、この先も、今まで通りに「箱の中の人生だ」。
って言ってるみたい。
「光」を意味する”Luce”はイタリア語で、発音は「ルーチェ」。「ルース」は同単語の英語読みで、女の子の名前である「ルーシー」も語源は同じだったりします。ルースの出生地であるエリトリアは元イタリア植民地。英国保護領、エチオピア支配の時代を経て1991年に独立。以来、「民主正義人民戦線」書記長であるイサイアス・アフェウェルキ大統領による独裁体制が継続しており、「アフリカの北朝鮮」と揶揄される国。北部海岸まで陸路を旅し、イタリア・ギリシャを目指そうとするボートピープルを生み出す「危機的な問題を抱える国」の一つです。ちなみに、イサイアス・アフェウェルキ大統領は、中国に留学と言う名目で招かれた支配者候補生の一人で、彼の独裁手法の根底には毛沢東思想があります。ルースは幼少期に「戦場に駆り出された経験」すらあると言う設定。彼のガールフレンドであるキム・ステファニーは、おそらくベトナム戦争時代の難民。現実にアメリカの一般の人の身の回りに在り得る状況設定は、この物語が全く現実性の無いものではないと感じさせてくれます。
深い意味がありそうで‥
不思議な映画でした。
深い意味がありそうですが、結局見たままのストーリーということですか。色んな伏線があったり人物の裏の顔があるのかと思って見ていたのですが、そのままで終わります。
いやいや、何かあるでしょ?!と思いwebも見たのですがやはり何もないようです。
それにしてもあのアフリカンな音楽の使い方、先生の妹や、キムの配置もよくわからない。またルースの出自と教育に時間と手間がかかっていたはずなのに完璧な高校生に育っているのもちょっと繋がらない。先生の信念も何が基になっているかもよくわからなかった。何か設定と結末を決めて無理くり繋げた印象で残念。
オバマは何もしなかった、黒人は殺され続ける!
間接的な映画です。
黒人の地位向上を目指して黒人生徒の粗探しをして陥れる女教師。
オバマの再来と称賛される優等生。
激突するけど人種差別には何の意味もない。
映画以外でもオバマは差別撤廃の政策もしてませんし、そんな大統領は存在しない。
さらに危険な事でも無い限り、黒人は殺される、アメリカでは、ちなみに有色人種は殺され続ける、アメリカでは。
私も信じる
どっちなのか?
あからさまなのに揺らぐのは、エドガーが自信に満ち溢れてるだけじゃないだろう。
日本における外国人から感じるマイノリティの強さと考えるのは短絡的だろうか?
いずれにしても、エドガーの母親同様にあなたを信じるわ。そう思ってしまったのは確かだったりする。
濃い内容
ルース エドガーは、なかなか濃い映画でしたね。
表現的にはサスペンス的な部分が濃いのですが、真髄は人種差別の日常の現実をえぐり出してまして、どちらかというと、典型的な差別者と被差別者の間の差別ではなく、虐げられ続けた被差別者(この映画では黒人)の中で卑屈化してしまった被差別意識が、被差別者同士での差別を産んでいく構図が、なんともリアルでエグい感じでした。監督も黒人監督ですので、その辺りは非常にリアルでした。
ただ、最後までは重厚なサスペンスとドラマ、演技がよかったのですが、最後の最後がちょっとわかりにくすぎて、人によってはなんだこれ?ということになる人多そうです。
サスペンス調で描いてきてるので、きちんと事件の解明の落ちがないと納得いかないのではないかと。
ドラマを重点にしての描き方であれば、その終わりでもいいのかなとは思いますが。
まさに今、2020年の映画
「オバマ後」のアメリカ、現代の人種差別を描いた作品として非常に秀逸。一見平等に機会が与えられているようで、黒人が常に向けられる疑いの目。危険性があれば排除され、完璧でなければ「怪物」になってしまう…。「息ができない」というセリフはあまりにタイムリーですね。
作中、ルースの本心は殆どわからず、観客からすればまさに「聖人」か「怪物」か判断できず、「黒人」「優等生」「ティーンの男の子」という社会的役割に当てはめられない人間の多層性に翻弄されることになります。もちろん、1人の人間が「聖人」であることも「怪物」であることも本当はあり得ないんですが。
ルースに疑いの眼差しを向けこの物語の火種となる、黒人フェミニスト教師のハリエットも大変多面的で素晴らしいキャラクター。やっと、白人を助けたり、ひたすら性格が良かったり、かわいそうだったりする役割ではない、マイノリティの中の多様性が描かれるようになってきたということではないでしょうか。日本ではまだここまでマイノリティの多面性を描くことはできないように思います(文化と文化を単純に比べることは出来ませんが)。
終始ハラハラし、物語の展開が読めない人間サスペンスでとても面白かったです!監督を追ってみようかな。
アメリカにおける視点
映画の内容もなんですが、劇中流れる楽曲がこれから何か起こるんじゃないかと不安を煽ってきて効果絶大です。
おそらくルースはとても感受性が強く尚且つ自分の感情をあまり表に出さない子で、それが彼がアメリカで生きていくすべだったんだろうと思います。
最後にカメラに向かってくるシーンはそれらの感情全てが凝縮して今にも爆発しそうで鳥肌が立ちました。
設定がいいだけにもったいない
成績優秀、部活でも活躍する男子高校生。彼に危険思想があるのではないかと教師に指摘された両親が次第に息子に疑惑を持ち始めるという話。
息子の設定等なかなか面白いと思うが、あんまりドキドキしない。歴史上の人物の代弁をするというレポートで危険思想の持ち主を取り上げたり、ロッカーに危険な花火を有していたりという始まりがそもそもしっくりこない。
そして最後ももやもやが残った。結局ルースは危険なやつだったのか、嫌なやつだったのか、悪いことしてたのか、わからない。たぶんルースがやったんだろうなと思うのだが、そこらへんの裏の顔をはっきりさせてもらう方が面白いのに。もったない感じがする。
最終回手前で連載打切り…的な映画
「このオチは観る方にお任せします」
って映画はよくあるし私も好きですが
それは“オチを語らない美学”を
描いてるから“気持ちの良いモヤモヤ”を作るのに
これは、オチが無いと納得いかない構成なので
どのキャラにも気持ちを入れられず
エンドロールを迎えた。
もうちょっと後掃除をしてって欲しい。
何を描きたかったのか?
歯切れが悪い
17歳で学校の模範的で誰からも慕われるのルース・エドガーの知られざる内面を描いた。人間の内面を探るかのような見る人にとっては多角的でありどう捉えるかの観点で見解は分かれる作品。
観客の想像力にお任せするかのようなシーンが所々にあり、終始緊張感漂う雰囲気等でもう少し何かしら有るのかと思っていたけれど、アッサリ幕切れとなってしまったのは少し残念である。
自分的にはそこまで響くもの見えなかった。同じアフリカ系の女性教師ウィルソンと対立する部分も、社会的に今問題となっている部分とも重なるところあるものの、レポートでルースが危険な思想に染まっているのではというウィルソンの疑惑は、ルースの養父母にも疑念を生じさせドラマを盛り上げる材料ともなっているのだけれども、出来ればもう少し彼の生い立ちについて掘り下げていたらルースエドガーに感情移入はでき終始軽くは見えなかったのかもしれない。結果としては、頭のいい悪ガキが教師を陥れるだけという見方に自分としては見えなかった。
違った見方という点では、ルースの行動の一挙一動に意味がありそれを嘘か本当か見抜こうとするところに、この作品への真意があり。人間関係への個人への見解や関わり方を深く考察し、自分の身に置き換えるという事なのかと思えたが
個人的には見終わり後味がよろしくなく、そこまで深く考えさせるには至らなかった点ではもったい作品かと感じた。
モヤる心理戦、憎たらしいと思うのは単純すぎるのか?
最後までスッキリしない、数名の心理が分からない。そんなモヤモヤする作品でした。だからと言ってつまらないわけじゃないです。
私は単純にルースにイライラしたし、怖かったし、憎たらしいと思ってしまったけど、そんなシンプルな話ではないのでしょう。あまり読み取れなかったというのが正直な感想…。
とりあえず、校長もっとしっかりしてくれ!
アメリカで生きていくのは大変だ
皆の評価がそんなに高くなかったので、観に行こうかどうか迷ったけど、行って正解でした。面白かった。アメリカの富裕層の養子縁組って、今まで漠然と違和感感じていたけど、この映画を観て、深く考えさせられました。
他者の求める役割
誰かによって担わされる役割。優秀な有色人種としてその悲惨なルーツと共に聖人の如く求められるその人物像。女性は弱く被害者であるという告発の要求。どうしても今世界で巻き起こっている事を想起せざるを得ない。
有色人種であるがこの国では多数派である日本人として、この映画を観る。日本でも今世界で起こっているデモが行われたけど、わたしは日本で行われたその運動に違和感を感じていて。それはそのデモで訴えた事は、誰かが望んだ加害者と被害者という役割を誰かに都合よく担わされたものではないのか?と。
エリトリアからのアメリカ移民となって、名前を変えた美しく聡明なルースが、懸命に喘ぎながら顔を歪めて走るその姿。
音楽がとても奇妙だったんですが作曲家のベン・サリスベリーとポーティスヘッドのジェフ・バーロウだったんですね。なるほど。ひとつは完全に均衡の取れたバッハのようであり、ひとつは原始的な地からの声が響く。
駅前留学高校
昨日『ハリエット』を観たばかりだというのに、高校の教師の名前がハリエットだったことに驚いた。すでにこの名前自体が人種差別問題に一石を投じている気がしてならない。敢えてハリエット・ウィルソン(オクタビア・スペンサー)の目線で考えてみると、黒人の生徒にしろ、アジア系の女生徒にしろ、型にはめながらも彼らを無事に社会の中へと送り出したかっただけなのだと思う。
ところが、真面目に15年間続けてきた歴史教師なのですが、「箱の中の人間で光が当たるのはごく僅か」という考えを持っているため、優等生ルースを際立たせ、引き立て役には処罰を下してランク付けするという間違いを犯してしまった。その間違いが元で、ルースによって天才的な復讐をされる物語(だと思う(個人の感想であり、正解ではないかもしれない)。
ハリエットの妹が精神的難病を抱えていることや、突如学校に現れて暴れだす事件もあり、そこでの警察官の対応もドキっとさせられましたが、これもルースの企みの一つだったのでしょうか。彼が遅刻してきたことも引っ掛かります。とにかく、ルースがメールしていた相手の名前“D-runner”が誰なのかわからないのもサスペンスの魅力です(想像ではデショーン)。
レイシストも出てこないし、人種差別問題というよりも、偏見、固定観念、「愛と信頼」を訴えたいのだと感じました。黒人だから目立たないように、ランク付けし、この子はこういう性格だからと決めつける。内申書に書けばいいだけなのに、他の生徒の前でそれを言う教師。ステレオタイプを嫌う光のルースによって、人を出自や噂や事件だけで判断する教師に対して静かな復讐が行われたのだった。
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