劇場公開日 2020年6月5日

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「胸が悪くなる秀作…」ルース・エドガー shokotenさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0胸が悪くなる秀作…

2020年6月7日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

難しい

ルースが何者なのかという事ではなく、
この映画には今社会が抱える問題が
詰め込まれていると思いました。

人種差別、偏見、紛争、教育、家族の在り方、
子育ての難しさ等…それぞれの立場に絡ませ、
全てを炙り出していると感じました。

個人的な話になりますが、私には
3人の息子がいます。
何とか笑警察にお世話になることなく
育ちましたが、彼等を見て来て
いつ加害者になるか、いつ被害者に
なるかわからないなという危うさを
彼等から感じ、それを
認識しながら見守って来ました。
子育てに悩んだ時、ある人に、
手をかけるのと目をかけるのとは
全く違うと諭された事があります。
なるほどと眼から鱗だった
ことを思い出しました。
良かれと思っていた事が、
子供にとって息苦しさだけだった
かもしれないと、猛反省をした
苦い思い出が蘇りました。
母がルースに守ってあげたいと
話しますが、当時の自分と重なるようで
切なくなりました。その言葉は単に
親の自己満足だけなのよ、と。

ラストシーン、凄い形相で
何かを振り切るよな勢いで
走るルース。あれが本当の
ルースの気持ちの現れのよに思えて、
胸が痛くなりました。

話は変わりますが、昨今痴漢を
する人は、高学歴、高収入、既婚者で
側からも幸せを絵に描いたよな家庭で、
見た目も決して悪くない人が加害者に
多いと、ある被害者の講演会で
精神科医の先生がおっしゃっていた事も
思い出されました。
ひと昔前は、悪そうな人は
振舞いや外見で想像がついたし、
あるいは爆音を轟かせながら走っていた
若者達に迷惑だわと思っていましたが、
そっちの方がある意味
健全だったかもしれないと思ったり。
今はどこに悪が潜んでいるか
全くわからない世の中になったと思いました。

日本の田舎で暮らしている私が、
きっと思うことも考えることも
無かっただろうなと言う事に
気付かせてもらえる、こういう映画
との出会いに感謝します。

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shokoten