劇場公開日 2020年6月5日

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「【無理に箱に入れようとすると、綻びが出る・・・。”良きアメリカ人”として受け入れられたい人々の葛藤する姿を描き出した作品。】」ルース・エドガー NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【無理に箱に入れようとすると、綻びが出る・・・。”良きアメリカ人”として受け入れられたい人々の葛藤する姿を描き出した作品。】

2020年6月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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<アフリカ移民で、現在は白人夫婦エイミー(ナオミ・ワッツ)とピーター(ティム・ロス)の養子、ルース・エドガーは劇中、スピーチの得意な「オバマの再来」と呼ばれている笑顔の素敵な”好青年”として描かれる。>

 ー”オバマの再来”ねえ・・。大変だなあ、ルース・・。-

 ■印象的なシーン
 ・ルース・エドガー(ケルヴィン・ハリソン・Jr:初見)の流麗なスピーチを厳しい目つきで観る歴史教師ハリエット・ウィルソン(オクタヴィア・スペンサー)。
 彼女が出した課題に、ルース・エドガーが提出したレポートは、過激な民族解放を訴えていた黒人フランツ・ファノンの思想を肯定するものであった・・。

・”良きアメリカ人”になるべく、厳格に生きて来たハリエットが精神を病んだ身内の女性を見捨てずに世話をする姿と、その行為に伴う”良きアメリカ人”の振る舞いをするルース・エドガーに対する葛藤する姿。

 ・ルース・エドガーのロッカー(箱)に無造作に誰かに入れられた紙袋。それを切っ掛けに起こる一連の騒動。

 ・ルース・エドガー自身も”ある出来事”以降、母エイミーの事を「エイミー」と名前で呼ぶシーン。
 ルースを”良きアメリカ人”になるように育て、且つ”私は、不幸せなアフリカの子を育てて来た自負があった”エイミーの複雑で哀しそうな表情。

 ■秀逸なシーン
 ・一人、涙を流しながら誰もいないホールでスピーチをするルース・エドガーの姿。
 そして、満員の聴衆の前で笑顔を浮かべながらスピーチをするルース・エドガーの言葉。
 ”母は、私の名前が上手く発音できず、”Luce"と名付けてくれました。”光”という意味です。けれど私は”Loose”だと思い、戸惑いました・・。”と、にこやかにエイミーの顔を時折見つめながら話すシーン。

 ー私は、この”Loose”という単語をルースの思いを察し、敢えて、”ダブルミーニング”として、解釈しました。-

 彼は更に”アメリカに来て、本当に良かった・・”とスピーチを続ける。

<ルース・エドガーの本当の姿、思いとは・・。

 劇中、語られる様々な人種偏見問題も絡ませながら、謎が少しづつ深まり、誰もが疑心暗鬼になっていく過程が秀逸で、少しづつ物語に引きずり込まれていった”イヤミス風”作品。
 けれど、実は悩める人々の”ヒューマニティ溢れる”作品。

 ラスト、普段見せたことが無いような、厳しい表情で疾走するルース・エドガーの姿・・。

 ”誰でも、【類型的で、求められる型】に嵌められたくはないよな!”と思った作品。
 心地よい鑑賞感は得られないが、現代社会の抱える問題を鋭く抉った秀作ではないかなと思った作品でもある。>

NOBU