「守ってくれる「宇宙」それは多分「家族」」宇宙でいちばんあかるい屋根 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
守ってくれる「宇宙」それは多分「家族」
2020年。監督:脚本は藤井道人。原作は野中ともそ。
14歳のつばめ(清原果耶)のひと夏の成長物語です。
つばめは父親(吉岡秀隆)と2度目の妻・麻子(坂井真紀)に大事に育てられている。
しかし父親と麻子に新しい命が誕生することになり、心が揺れ動いている。
ある夜。
通っている書道教室の屋上で風変わりな老女と出会う。
彼女はほしばあで本名は星野とよ(桃井かおり)。
“年を取ったらなんでも出来る”
が口癖で、つばめが密かに恋してる隣家の大学生亨(トオル=伊藤健太郎)に出した
恥ずかしいラブレターの回収をしてくれたり、
すっかり打ち解けて恋や家族の悩み・・・
そして学校の出来事をなんでも相談するようになる。
桃井かおりはつばめのお悩みを聞く代償に焼肉弁当や菓子などを要求する。
“見えるものには見える“なんていうから、もしかしたら幽霊なのかなあ?
と私は思ったりしたが、取り越し苦労だったみたい。
ちょっとファンタジーな味付けだった。
だってほしばあはバス賃も持っていない。
「バス、来ーーい!!」
と呼ぶだけで目的地行きのバスが来たりする。
やはり魔法使いだ!!
おまけに住所不定でホームレス風なのだ。
書道教室の先生(山中崇)がこの映画を牽引している。
つばめに水墨画を薦めて、
つばめの実母(山上ひばり=水野美紀)との出会いの橋渡しを
演出する。
(なんかこの辺り今泉力哉監督作の「かそけきサンカヨウ」によく似ている気がする)
サンカヨウも実の母親が画家で、絵画展で再会した母親には幼い子供がいて、
新しい家族との仲良しぶりを目撃して心を取り乱すところとか・・・
育ての母親麻子がとても優しい女性である点とかも似ているけれど、
まぁ良くある設定ではあるのだ。
起承転結の転と結。
ほしばあの孫探しに付き合うつばめとトオル。
赤い瓦の屋根・・・それだけの情報で町内をローリングするつばめなのだ。
そしてマコトと言う名のほしばあの生き別れの孫が、
つばめのクラスメートで元彼の笹川誠(醍醐虎太郎)なのだから、
《かなり偶然の度が強い》
普通そんなに簡単には見つからないですけれど・・・ホントは住所の枝番も
わかってたんだろうねー。
な訳ないか!!
(そう言う身も蓋もないことを感じるオバサンはこの映画を楽しむ資格なし)
魔法使いみたいだったほしばあが意外と普通人の転と結を迎える。
起承転結の起承はファンタジーで後半の転結はリアリズム。
桃井かおりさんはそんな不自然な設定を自らの演技でなんの違和感もない
説得力を見せます。
さすがと言うか、キャリアと実力です。
なんとも可愛らしい老女なのです。
伊藤健太郎くんは可もなし不可もなし。
主演の清原果耶さんは初主演とは思えない透明感と清潔感に抜群の演技力。
彼女の場合、若いのに貫禄すら感じます。
監督の藤井道人さん。
「新聞記者」2019年。
「宇宙でいちばんあかるい屋根」2020年。
「ヤクザと家族The Familly」2021年。
そして
「余命10年」2022年。
来年には、
「ヴィレッジ」が公開されるそうです。
横浜流星主演の藤井道人監督が新境地に挑む作品らしい。
どんなジャンルも死角はなし。
とても楽しみな監督です。
題名の【宇宙でいちばんあかるい屋根】の「屋根」とは、
いつも雨・風・台風・それを屋根は防いでくれる。
麻子さんが結婚を決めた一番の決め手は、可愛いつばめ、だったこと。
お父さんの告白で知るのですが、「屋根」は「家族=守ってくれる人たち」
でもあると、この映画は告げています。
本作、エルヴィスへの共感ありがとうございます。
私のレビューは作品特化型ですが、
琥珀糖さんのレビューは、作品関連情報満載で多彩ですね。
本作、藤井監督作品だったと鑑賞後に気付きました。
琥珀糖さんに列挙してもらった藤井監督作品、全部観てますが、
様々なジャンルの作品を熟せる監督なんですね。
古い作品ですが、私、青春の蹉跌以来、桃井かおりファンなのですが、
歳を重ねましたが、良い味を出していましたね。
桃井かおりらしさが健在でgoodでした。
清原伽耶との相性もピッタリでした。
人生の先輩としての桃井かおりのアドバイスがなるほどという感じでした。
では、また共感作で。
-以上-