劇場公開日 2020年12月4日

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「論理や倫理でジャッジできない猛烈なパワー」恋するけだもの 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5論理や倫理でジャッジできない猛烈なパワー

2020年12月31日
PCから投稿

白石晃士監督は「道を踏み外してしまった人」に強い愛着や共感、もしくは憧れを持っている映画作家だと思っているが、本作はまさに「道を踏み外してしまった人」すなわち“外道”しか出てこない快作だ。

どいつもこいつもやることなすことが基本的にクソなので、不快に感じる人がいてもなんの不思議もない。しかし、だ。どれだけ間違ったことをしていようが、彼らにはそれぞれの美意識や価値観や信念があって、だからこそほとばしる感情があって、感情のほとばしりに優劣なんてあるでしょうか??と、なんだかムチャクチャ高いテンションで問い詰められているような、そんな映画なのである。

残念ながら本作のもとになった短編『恋のクレイジーロード』は未見なので比較できないのだが、宇野祥平演じる女装の男が、マジで怖いし、マジで哀しいし、マジで可笑しい。観ている方も恐れと戸惑いと笑いが渾然となり、一体自分がどういう感情を感じているのかしっちゃかめっちゃかで脳内は酩酊状態なのになんでか楽しい。こんな映画白石監督にしか撮れないよ!と、いま思い出しても興奮が蘇って冷めやらない。

村山章