「忠告しておく。この世の病はただ一つ。貧乏だ。」薬の神じゃない! 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
忠告しておく。この世の病はただ一つ。貧乏だ。
2002年の上海。うらぶれた、街のインド秘薬店。
まさかこの冒頭をみた時、最後に軽い嗚咽を誘われることになるとは思ってもみなかった。
そもそもモチーフとなった実話のこともよく知らず、白血病患者を相手したペテン師のコメディなのかと思っていた。普段そうやって、あまり映画のスジを仕入れずに、予告を見た直感で観る映画を選ぶことも多いが、この映画は見事にそれを裏切られた。それもごく、期待以上に。
ただの、裏路地の、細々と、ちょっと胡散臭い、商売もイマイチで、家庭も上手くいっていない、媚薬を売る店主。導入はなめらかに。ドタバタ絡めて金儲けに精を出す。次第に知れていく、患者たちの現状。とばっちりを受ける前に逃げるものの、その後の展開はそうくるか。そうか、あなたの中にはそんな善人が住んでいたのか。自分では、単に罪滅ぼしのつもりでしょうが、他人が見れば立派な善行。それは、ラストの沿道のシーンが強く物語る。
人は、知らず知らずに他人を貶めることもある。逆に、知らず知らずに他人に善を施している時もある。それはその人の心の底にある性根が左右する。
「情けは人の為ならず」だなあ。店主は、自分のことなど構わずに、患者に情けをかけた。それが、最後に自分に返ってきた。そう、「情けは人の為ならず、巡り巡って己が為」。それを地でいく物語。
そうそう、もうちょっとましな邦題にしましょうよ。「!」はいらんでしょう。
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